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海辺の町  作者: 八朔
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俺の通っている中学校は海のすぐ側にある


新校舎と旧校舎があるが

海側の旧校舎からは歩いて1分程で海に行けた



毎日、海から吹く潮風を浴びて

それが当たり前だと感じていたけど

青春を送る材料として最高の環境だった







     【海辺の町】







これは俺の最後の6年間の話になる




なぜ最後の6年間かと言うと


6年後に地球に隕石が落下し人類は滅亡すると言われている






観測されている隕石は秒速15kmでこちらに向かってきていて、計算によると6年後に確実に地球にぶつかるらしい



初めて観測された隕石は地球の半分ほどの大きさだったが

時折、小さな星にぶつかって塵になった星は合体し

さらに大きくなっている


ぶつかったら最後、爆発は避けられない。







6年のカウントダウンが始まっているというのに

この世界は何1つ変わらない。








俺の名前は、利輝りき



海も山も川もある、自然たっぷりの

この町で生まれ育った



この町は、海沿いが

ちょっとした観光地になっているので

旅館街があり、周りはお土産屋通りになっていて

そこはいつも知らない人が歩いている




俺の母親はその旅館街で働いていて

家族は、俺とばーちゃんと弟の4人で暮らしている

この春、中学一年生になったばかりだ




俺の幼馴染の名前は、きち


一人っ子で

優しくて、穏やかなやつだ

小さい頃から心臓に疾患があり

昔は何度か入院をしていたが

今は毎日薬を飲む事で保っているらしい


詳しくはよく知らない







【中1】




「なぁ、吉

地球が終わる日まで何する?」


「えー、遊ぶしかなくない」


「そよなー、それしか無いよなー」




学校帰り、いつもの公園

ブランコに乗りながら

俺と吉は日が暮れるまで

いつもくだらない事を喋っている




「なぁ、吉

キッチン用品でエロイ言葉って何やろう」


「何?キッチン?笑笑」


「そう、俺は、おたま やと思うんやけど」


「おたま、かーー、

弱くね??」


「ほんなら、吉は何やと思うん?」



「んーーー、俺は、すりこぎ棒」



「ワロ!!!!」





◆◇◆◇◆◇




「なー、吉バイトしやん?」


「バイト???

バイトなんて中1の俺らに出来る訳ないやん」


「それが出来るんよなー!」


俺の母親は旅館で働いているので

お手伝いという形でお小遣いをくれる事にしてくれた


それを、吉に説明すると


「まじで!?するする!!」


と、いう事で休みの日に旅館で働く事になった


内容は、掃除、部屋のメイキング、配膳の用意など

完全に裏方役だ


もし、客に指摘されても

孫です!と言って誤魔化したりしていた




夕方、2人で宿泊客の配膳の用意をしている時の話




「まだ四時かよ」


1番早いお客さんでも夕食は5時の予約だ


給仕室で暇を持て余しながら、ダラダラしていたら

大きな炊飯器が、ピーと米が炊けた事を知らせる音が鳴った


炊けたら混ぜて蒸らす、これ基本



吉はしゃもじを持って、炊飯器の蓋を開けたが

混ぜようとした吉の手を、俺は止めた



「待て、じゃんけんで負けた方が素手で混ぜようぜ」


「え、素手?!?!」


大きな声を出してしまい、吉はハッと口を押さえる


「やばいやん、手死ぬやん」


「そう、オナニー出来なくなります」


「やっば!ww」



2人は両手を組んで、神様にお願いしてから

じゃんけんのポーズをとった


「最初はグー!じゃんけん、ほい!!」





結果は

言い出した、利輝が負けた



「利輝、右手でやれよww」



勝った吉は、周りにバレないように

笑いを抑えた声で言う





俺は覚悟を決めた。





「アッ……!!!」



第一関節でリタイアした






◇◆◇◆◇



「なぁ、今日ヤンが家来いって」




ヤンとは、旅館街で円谷商店というお土産屋さんをやっている

そこの三兄弟の末っ子、通称「ヤン」だ



小学生から一緒で良く遊んでいる



「俺今日塾やで」


「ほなら、吉が塾終わったら迎えに行くわ

ヤン家、塾から近いし丁度いいやん」



吉は中学生になってから塾に通い出した

数学と英語を習っているらしい


俺も何かしないとなー、と思いながら

何にもしてない






18時、吉の塾が終わる時間


俺は、自転車に跨りながら

吉の通っている塾の前で待つ


長引かず終わったみたいで

お待たせー、と吉はこちらに走ってきた



2人並んで自転車を漕ぎ

ヤンの家に向かう




「ヤーーーン!!」


2階のヤンの部屋に向かって大きな声で呼ぶと

ガラガラと窓が開いた


「おー!玄関開いとるで入って入って!」



いつもこんな感じで

出迎えもないまま、お邪魔しまーすとだけ言って

家の中に入っていく


ヤンはアイドルオタクで

部屋には女性アイドルやアニメなど色んなポスターが

貼ってある



「丁度良い時間に来たな!」



何かよくわからないが

ヤンのテンションは上がっている


ほら、とヤンは

俺と吉にと双眼鏡を手渡してきた



「なんなん?」


「俺ん家の向かいに、新しくリゾートホテルが出来たんやけど」



それは知っている


ヤンの家の周りは旅館街になっていて

そこで俺らはバイトしていたから



「丁度、俺の部屋からお風呂場が見えんのよ!!」


「まじで!?!?!?」



早速、3人は窓から向かいのホテルを見上げ

双眼鏡で覗いてみる



「おい、姿勢低くしろ、バレるぞ」



ヤンは匍匐前進並みに

姿勢を低くして、首だけ上に上げ

亀みたいな格好をして双眼鏡を覗いている



ホテルの風呂は海が一望出来るようになっており

窓は海側に広く開けているのだが


ヤンの部屋の窓からは

そのギリギリ横の方が見えるくらいだった



「なんこれ!全然見えんやん!」


ガッカリした俺は双眼鏡を放り投げた


「バッカ!あのギリギリ見えるスポットに来るんやって!たまに!」



諦めずにヤンは

辛そうな体勢で双眼鏡を覗いている



吉も姿勢を低くしゃがみこんで

黙って覗いている



必死の2人を見て、冷めた俺は

ヤンの部屋の漫画を読んでいると



「きた!!!!」


ヤンが叫んだ


「まじ?!」


急いで俺は双眼鏡で覗いてみる



確かに、あの端のスポットに人影が見える



「だから言うたやろ?!ハァハァ!」


ヤンの息は荒く

まるでアイドルのライブを見ているようだ



吹き出しそうになったが

なんとか堪えて

双眼鏡の先の姿に集中する


「え?あれって…」




窓にもたれかかって座っている

豊満な身体は

よく見ると太った男の人だ


でっかいおっぱいに見えるが

だらしなく体についた脂肪だ



俺と吉は唖然とした。



「ヤン…あれ男じゃね?」


おそるおそるヤンに問う



「ああ!でも女湯やと思って見てみ!

あのおっぱい!本物やぞ!」


ヤンはお風呂を覗いている、という状況に満足しているようで

見えるものは何でも興奮出来るようだ





俺は吉の手を取り、そっとヤンの部屋を出た




「ほっといていいの?ヤンやばない?」


「帰ろう。俺たちには分からん世界もある」


「そっか…」




俺たちは振り返らずに

ヤンの家を後にした

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