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2、父と母の出会い

秀康とお駒が出会ったのは4年前の京都二条の遊郭だった。お駒の父は阿波の国の豪族の三谷氏だったが、徳川家と敵対関係で豊臣方に着いたのだが、関ケ原で西軍が破れ、徳川軍によって四国が責められた時に、父だけが妻子を残して国を逃げだし、娘のお駒も国を離れ京へ出て、生活のために遊女になっていた。

 結城秀康は、慶長2(1597)年より参議として朝廷での仕事のため、京の伏見城に住んでいた。京は人質として羽柴家に預けられていた時、秀吉の館に住んでいた子供のころ以来だった。懐かしさもあり、わずかな家来を連れて街に繰り出した時に、鴨川沿いの二条付近で遊郭を覗いた。すでに鶴姫と結婚し、長男も生まれていた。しかし、勇猛果敢な武士で、体つきも筋骨隆々とした秀康は、その道も達者であった。

 遊郭の店を覗いているうちに、目に留まった女がいた。背筋が伸び、顔にも知性が感じられ、気品があり他の遊女とは一線を隔していた。

 秀康は店に入り、同行してきた家来に

「表の木戸の中にいる紫の着物の女を連れてくるように伝えろ。」と小さな声で耳打ちした。その家来はその店の主人にその旨を伝えると。主人は女中を使って奥の薄暗い部屋に秀康を案内させた。

その小さな部屋は床の間が着いているが、さらにその奥の部屋には夜具が敷かれている。床の間を背に脇差をはずして座ると、別の女中がお膳に載せられた僅かなつまみと酒の入ったお銚子を1本持ってきた。秀康がその酒を自分で注いで飲もうとしていると、先ほど指名した女が入ってきた。

「失礼いたします。」と言って障子を開けると中に入り、座って障子を閉めると秀康に向かって正座し、両手をついて頭を下げると

「お駒と申します。ご指名を頂きありがとうございます。」と言って秀康の前まで進むと秀康にお酒を注いだ。注がれた秀康は一気に飲み干すと盃をお駒に渡して一口飲むことを勧め、

「お駒と申すか。いくつになる。」と聞いた。お駒は恥ずかしそうに

「22でございます。」と答えた。お駒も杯を返すと

「お武家様はどちらの御家中ですか。」と聞いた。秀康が注がれた酒を一気に煽ると

「徳川家じゃ。お主はどこの出だ。どうも町家の娘ではないな。どこやらの武家ではないか?」と聞いた。すると女は笑いながら

「わかってしまいますか。仕草が町家の娘とは違いますかね。偉そうな女はお嫌いでしょ」とあっけらかんとしている。秀康が続けて

「わしは武芸がすべての武闘派だ。女はかわいいだけでは満足しない。夢を持った女が良いと思う。」と述べた。女は目を輝かせて

「お武家さん、どこのお方か分からないけど、素晴らしいね。私は阿波の国の三谷家の娘でお駒と申します。でも徳川家に攻め落とされ、一家は離散。私は京に出て来て仕方なく遊女になったんですが、金を稼いで父と母を探して、三谷家を再興したいと思っています。貴方様の徳川家は仇ですが、今は德川様に背くこともできません。私を御贔屓にしていただいて、この暮らしを抜け出す力になってください。」とお願いした。


 それから秀康は毎週のようにこの二条の遊郭に通い、お駒を指名した。半年ほどして秀康はようやく自分の立場を明かした。

 その日も酒を酌み交わしながら話し込んでいたが突然

「わしはお前を身請けしようと思う。私は德川家康の次男、結城秀康である。今は参議となって京都におるが、近いうちに任地に出向くことになるだろう。お前もついてまいれ。」と話すとお駒は

「あなたが徳川様の御子息とはわかりませんでした。親の仇ではありますが、どうか身請けをお願いいたします。」と言って廓を出る覚悟をした。

 その日のうちに秀康はお駒を城に連れて帰った。伏見城で暮らし始めるとお駒は子を宿した。翌年、生まれたのが喜佐姫だった。お駒は秀康の側室となって暮らし始めたが、遊女だったことから城では身分の低い女として差別された。娘の喜佐姫も差別を受けて育った。



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