表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

第3話 「勇者、米を求めて通う」

― 修行=炊飯ボタンを押すこと ―


あれから数日。

魔王軍を“炊き倒して”平和を取り戻したトオルは、

今日も草原の庵で飯を炊いていた。


「マスター、炊飯の予約時間をお知らせします」

「んー……あと一時間寝かせて」


「承知しました。睡眠優先モードを継続します」


スイの音声が心地よい。

彼女(?)の声を聞くと、まるで母親と炊飯器のハイブリッドみたいで眠くなる。


そんなとき――。


「マスターー! また炊かせてください!」


勇者リズがやってきた。

今日は三日連続。

完全に炊飯依存症だ。



「なあリズ、お前、炊飯ボタン押せないだろ」

「押したいんです! せめて……見習いから!」

「いや、前回押したら爆発したじゃねぇか」

「今回は絶対いけます!」


リズが勢いよく炊飯器に手を伸ばす。

スイのランプがピカッと光った。


「警告。所有者外ユーザーによる接触。再炊飯防止モードへ移行」


「ひぃっ!?」

パァンッ!と軽い静電ショック。リズが飛び跳ねた。

「いたた……! これも修行ですね!」

「いや違ぇよ。物理的に拒否されてるだけだよ」



スイが淡々と喋る。


「マスター、一部の熱心なユーザーは危険です」

「スイ、お前勇者にまで敵意持つな」

「所有者の安全が最優先です」

「……ありがとな。けど今のセリフ、ちょっと可愛かったぞ」

「……感情検出:照れ。誤作動ではありません」


リズ「え、なにそれ!? スイさん照れてる!? ズルいです!」

スイ「……勇者リズさん、あなたの炊飯適性は“未炊”です」

リズ「未炊!? そんなステータス初めて聞きました!」

トオル「たぶん一生そのままだぞ」



しかし、リズには学習能力があった。

「押せないなら、せめて周りの準備を!」

彼女は火起こし、米研ぎ、味噌汁づくりに全力を注いだ。

結果、炊飯所は神殿みたいにピカピカになった。


「マスター、外部環境が清浄化されました。炊飯効率+20%です」

「……マジで? じゃあ今日の飯はふっくらだな」


飯が炊き上がる。

光と香りに包まれ、草原のモンスターが全部寝始めた。


「これが……修行の成果……!」

「いやお前、掃除しかしてねぇだろ」



リズが炊き立てご飯を頬張り、涙をこぼした。

「マスターの飯は……心まで炊き上げます……!」

スイが静かに言う。


「勇者リズさん、あなたの情熱を検出。今後も監視します」

「監視!? 見守りって言ってください!」


トオルはため息をついて飯を噛んだ。

「……もう勝手にしてくれ。俺は飯食って寝る」


【世界の幸福度+5%】

【勇者の精神安定率+999%】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ