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大切なおじいちゃん (リメイク版)

作者: 照屋 啓二郎

これは、大切なおじいちゃんという以前書いた作品のリメイク版です。大きく改変再構築したところはありますがかつて描きたかった世界になっていると思います。

 私は、今家族6人で生活している。生まれた時から続いている当たり前の日常だ。

私の家族は、祖父と祖母、父と母そして、二つ上の姉だ。


しかし、私と姉以外のほかの家族は、5人で生活しているという。


なぜこんな生活が始まったのか、その発端はすごく不思議なものだった。


そう、あれは、5か月ほど前の今年4月のことだった。


ガチャ

(鍵が開いている。誰か家にいるのだろうか)

「ただいま~誰かいるの~?」

祖母かあるいは、姉が先に家に帰ってきているのだと思いそう問いかける。

しかし返事はなかった。

私は、緩い運動部に所属していて17時には帰宅していた。中三の春。夏には部活動引退だ。残り短い学校生活に寂しさを覚えつつ、新しくなったクラスと高校への不安を紛らわすようにシャワーを浴びた。


部活動で汗をかくので、帰宅後すぐにシャワーを浴びるのが日課だ。


シャワーを浴び終わり、自室で、スマホでSNSを見ながらゲームをしようとPCを起動した。すると、どこからともなく睨まれている感覚を感じた。

直感的に、遊んでることを、勉強を先にするよう促しているように感じさせられた。

誰もいない家で視線を感じるということはよくある話だと思うが何気なく、宿題を先にすることにした。

宿題にひと段落が付き机の後ろにあるテーブルの上を見ると、懐かしいお菓子があった。それは、三年ほど前すごくはまってよく食べていたが最近は、食べることがほとんどなかったお菓子だった。

(自分で出したのを忘れたのだろうか?)

(いや、そもそも最近これを買っただろうか?)

そんなことも考えたが家にわざわざお菓子を置いて何かをしようとする人もいないだろうという考えと、現在と将来へのちょっとした不安で疲れていた私は、何も気にせずそのお菓子を頬張った。ふとその時、懐かしいことを考えた。

(そう言えば三年前には、おじいちゃんは、生きていたんだったな。まさかあんなに元気だったおじいちゃんが、数か月後には、病状が悪化して、なくなってしまうなんて、当時は思いもしなかったよなぁ)

そんなことを考えながらお菓子を食べていると、


「えっ?うわあああああ!?!?!?ガチ?」


という、絶叫と驚きの声が一回から響いてきた。姉が帰ってきたようだ。

(にしても、帰ってきて突然絶叫するとは…にしても内容的にいいことのようだ。)

「どうしたの?」

そう姉に尋ねながら階段を下った。

どうやら姉は、居間にいるようだ。居間から冷静さを取り戻したが、感極まって泣いてしまったような涙声で返事が返ってくる。

「居間に入ってきて」

私はその言葉に従って、今の扉を開けた。目の前には、高校から帰ってきたばかりであろう制服姿の姉が涙を浮かべながら座り込んでいた。

「うわっ、びっくりした~なんなんだyぉ…」


姉に言葉を投げかけながら目線を姉からゆっくりと上にあげた。夜か休日を除いては、

三年前のあの日から ―そう、祖父が入院したあの日からほとんど人がいない。


しかし、そこには、絶対にいるはずがない、不安からくる幻覚だと思わせる人がいたのだ。

なんとそこには――

「おじいちゃん..?」

そう、三年前に亡くなったはずの祖父が確かにいたのだ。

二時間くらいたったのだろうか、父が帰ってきた。時計を見ると19時を回っている。祖父に会えたことに喜び二人でそれをかみしめている間に一時間ほどたってしまったようだ。


この喜びは、父にも共有したい。そんな気持ちで父を居間で待っていた。しかし、父によってこの幸せは、瞬く間に破壊された。

「ただいま。二人とも居間にいるなんて珍しいな」

「えっ?」

私と姉は同時に同じ言葉を発する。

「おじいちゃんがいるでしょ?」

その言葉に、父は、怪訝そうな顔をした。

「二人とも新学年で心配事でもあるのか?」

これは…

姉と祖父に急いで自室へ来てもらった。


「おじいちゃん。どういうことかわかる?」

少し震えるような声で尋ねる。不安がこみあげてきて、祖父の手を握った。


―― あたたかい

そこには、確かに生きてると感じさせるだけの力強さとぬくもりがあった。


「おそらくは、」

祖父が私の問いに答え始めた。

「お父さんが言うことは、ほとんど正解なんだ。」


「どういうこと?」

姉が更に問いかける。


「こっちに来る時に言われたんだ。おそらくほとんどの人―― いや、かかわりがあったほとんどの人には認知されないと、」

祖父が言うには、心が弱っていて、人に頼りたいと思っている人か今回でいえば祖父が生きていると疑ってない人、祖父の市がまだ受け止めきれてない人そう装っている人にしか認識ができないという。

「あのお菓子、あのお菓子は、おじいちゃんが買ってきたんだよね?どうして買えたの?」

そんな質問に、祖父は、簡単な話だよと答え始めた。

「いっただろう。かかわりのあった人と、もっと言えば私の死を知っている人だ。店員は知らない。客もだ。」


そんな出来事から五か月がたち、結局あの後、家族の中では、私たち二人二しか認識できていないことが分かった。

寂しさはあったが生活は、変化した。祖父は、『自分の死を認識している人』が自分のことを認識するような干渉はできないそうだ。

それを知ってからは、いざこざが起こることがないと自信が持てたため祖父とやり残した沢山のことをすることにした。私たち三人は、いろいろな場所に出かけた。祖父が元気だったのは、亡くなる3年ほど前だ。興味を持った歴史のある建物のことを聞いてみたい。この景色を一緒に見たい。そんな場所がいくつもあった。

そんな場所を回って歩いた。時には、自転車やバス、列車を使った。


しかししばらくするとそんな生活も落ち着いた。もっと日常になじんだ。

姉は、読書の好きな祖父におすすめの本を聞いたり、逆に、最近の小説を紹介したりしていた。

私はというと、将棋部ではないが将棋の大会に出させてもらっていたが、周りよりは強いが市内では、中位といったところだった。そこで祖父から将棋を教えてもらっていた。大会の3か月前から祖父と練習をするようになったのだが試合の一週間前には、祖父と正々堂々と対局して難なく勝てるようになっていたのだった。

大会では、私は今まで以上に多くの人を破り、3番手にまでなった。


私は、帰ってきた祖父との生活の中で、かつての貴重だったのにそれに気が付かなかった祖父との生活を反省し、このいつまで続くかわからないこの生活が私の大切なおじいちゃんとの生活の時間が末永く続くことを祈るのだった。

今回は、未来へ向けてで終わり、読者の想像に任せる形になりましたが機会があればこの話の後日談の一つをいくつか書いていこうと思います。

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