表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/20

たちばたさん再び

 家に帰ると、歩き疲れたのかケーキを食べる間もなく娘は寝てしまった。


 妻から息子の手紙と話を聞いた。

 うちの子供たちは魔力があるのか。

 亡くなって尚、家族の心配をする息子は立派すぎる。

 この子達の親として俺は釣り合っているのだろうか。


 あ!これか!妻が落ちいたのは。

 例え釣り合いがとれなくたって、子供をしっかり愛そう。

 大事にしよう。


 しかし、いきなり「あーちゃん」と呼んだら驚かないだろうか?



 ところが、起きた娘は「にぃには『カエデにぃに』、アオイは『あーちゃん』だよ」と言った。

 どうなってるのだ?と不思議に思っていると、「にぃに、あ、カエデにぃに、言ってた!」と、カエデから聞いていたと教えてくれた。


 既に話を通して了承しておくなんて、本当に良くできた子供たちだ。


 それからしばらくは平和に過ごした。

 妻にはたまにカエデからのメモ手紙があるらしい。



 退院してきた鈴木夫妻がケーキを10個も持ってきたときは流石に驚いた。

 我が家の小さな冷蔵庫にケーキはそんなに入らないのでそのまま無理矢理上がって貰い、まず1人1個ずつで5こ消費した。

 翌日に3個、翌々日に2個。3日間ケーキを食べた娘は上機嫌だった。





 最初の赤い車の件から約1ヶ月後、再び父の友人が訪ねてきた。

 海外に行っていたらしく、真っ黒に日焼けし、外国語の書かれたお菓子を持参していた。

 父と外で遊んでいたら声をかけられた。


「こんにちはアオイちゃん」

「あ!あくしゅのお兄さん!」

「握手のお兄さんか。そうだ自己紹介してなかったんだね。僕は橘幸男(たちばなゆきお)といいます」

「たちばたゆちお?」

「あー言い難いか。たちばな でも、ゆきお でも、好きなように呼んで良いよ」

「たちばたさん!」


「花守さん、お久しぶりです。これ、お土産です」

「ひさしぶり!どこ行ってたの?」


 橘さんと父は話し込んでいるので、貰ったお土産を母に見せに行った。


「まぁま!おみやげもらった!」

「まあ、チョコレートね。何かナッツが入っているみたいね。外国語は読めないけど」


 それは平たい箱に入ったマカダミアナッツチョコレートだった。


「誰か来たの?」

「たちばたさん!」

「たちばなさん?」

「そだよー」

「あーちゃん、カエデにチョコレート見せてくると良いわよ」

「わかったー」


 母は橘さんにこれ以上会わせたくなかったらしい。


 兄の部屋へ行ってチョコレートを見せてすぐ帰ろうとしたら兄に引き留められた。

 今まで、戻るように言われることはあっても、引き留められたことはなかったので少し驚いた。


 ◇◇◇◇◇


「こんにちは橘さん」


 妻の真子がお茶をもって顔を出した。


「こんにちは、お邪魔してます。あれ?お嬢さんは?」

「何か疲れたのか眠ってしまいました」

「そうなんですか。残念だなぁ」


 恐らく妻は娘をあまり会わせたくないのだろう。なので、追求されないように話を戻してみた。


「この前の、電車よりバスの結果を、今、聞いていたんだよ」

「そうなんですよ!おかげで、飛行機にギリギリ間に合って、最初の予定の電車は故障で止まったそうなんです!」

「そうなんですか。間に合ってよかったですね」


 妻はお茶をおくとあっさり下がっていった。


「何かありました?」

「あ、いや、その」

「アオイちゃんですか?」

「んー。娘な、又倒れたんだ」

「あーあの予知能力……」

「まあ、そういうことだ。すまんな」

「いえいえ、調子に乗ってしまってすみませんでした」

「ちょっと妻は今神経質になってるんで、まあ……」

「わかりました。お嬢さんに会っても左手は触りません」

「ありがとう」

「こちらこそ、助けて貰ったがわです。恩人に無理は言いません」


 これならば橘君は大丈夫だろうと思った。


 確かに、しばらくは大丈夫だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ