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魔女と呼ばれるまで  作者: 葉山麻代
本編

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2/21

たちばたさん

 ある日、家に誰かが訪ねてきた。

 背の高いその人は帰るとき、父と握手をしていた。


「なにしてるの?」

「あーこれは握手と言って、仲良よしの挨拶なんだよ」


 父が説明すると、その人は私とも握手をしようと手を差し出してきた。

 右手を出され、その手に近い方の手を出した。


「握手はね、右の手でするんだよ」

「どうして?」

「絶対ではないけど、左手で握手できない人も居るんだよ」

「できないの?」


 少し困ったようなその人は、笑うと名案を思い付いたように言った。


「じゃあ、両方やってみよう」


 右手どうしの握手のあと、左手を握った瞬間


 私は倒れた。


 早回しのフィルムのような情景が頭の中に飛び込んできて目を回したようだ。

 情報量に処理が追い付かなかったらしい。


 左手を握ったままのその人は慌てて、ぐったりした私を抱き起こした。


「君、どうしたんだ、大丈夫か?」

「すみません、大人の真似が嬉しくて興奮したんだと思います」


 そばで見ていた両親がその人に謝る。


「そうですか?何か病気だったら大変なので、このまま病院に行きませんか?」

「少し寝かせれば大丈夫だと思います」


 動けない向こうで、両親とその人の会話が聞こえていた。

 私はとりあえず居間に寝かされた。


 今見えたものは何?

 この人が事故に遭うの?

 少し動けるようになったので、その人のそばに駆け寄った。


「もし何かあれば連絡してください。病院に連れていきます」

「あかいくるまにきをつけてね」


「起きて大丈夫なのかい?」

「アオイ、もう平気なのか?」

「アオイ無理せず寝てなさい」


「うん。だいじょうぶ。あかいくるまにきをつけてね」

「赤い車に気を付けるのか?わかったありがとう」


 そう言ってその人は帰っていった。


「アオイ、本当に大丈夫なのか?」

「うん!もう平気」

「さっき言っていた赤い車って、何のことだ?」

「さっきこうした時」


 私は握手の真似をして見せた。


「あー、握手か?」

「うん」

「それで?」

「あの人、赤い車にぶつかって血がいっぱいでた」


 娘は何を言ってるんだ?

 それに、こんなにはっきり喋れただろうか?

 父は不思議に思った。


「それだけか?」

「うん!」

「そうか」

「遊んで良い?」

「家の中に居るんだぞ」

「はーい」


 忙しい両親を居間に残し、2階の兄の部屋に遊びに行った。




 そして3日後、その人は再び現れた。

 左手に包帯を巻いて。

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