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魔女と呼ばれるまで  作者: 葉山麻代
本編

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13/21

マスコミの罠

「お母さん、幼稚園で作ったー」


 アオイが持ち帰ったのは、桜の塩漬けののった蒸しパンだった。


「作ったの?」

「うん!」

「凄いわね」

「えーとね、みんなで水と卵と小麦粉を混ぜてね、先生が蒸してくれたの。みんなでお花を飾ったんだよ」


 一緒に渡された手紙を読んでみると、園の名前は、入り口に有る大きな八重桜からとったらしく、その八重桜の品種が、「関山」というそうだ。その花を塩漬けにして、毎年年長さんが蒸しパンを作っているようだ。


「食べれるお花すごいね」

「そうね。食べられるお花って、桜と菊くらいしか知らないわね」


 アオイと楽しく話していると、電話が掛かってきた。母親が出てみると、なんとテレビ局からで、超能力少女として番組に出てみないか?という出演依頼だった。


 どこからそんな話を聞いたのか質問すると、どうやら、橘幸夫の知り合いからの推薦らしい。

 その時たまたま当たっただけで、まぐれだったと説明し、この電話では諦めたようだった。


 世の中では、スプーンを曲げるマジックを超能力と言い張るのが流行っていて、テレビ局は、いっそ本物を探そうと考えたらしい。


 しばらくして、幼稚園に突撃取材が来た。

 園長はアオイを守ってくれたが、職員の1人がポロっと喋ってしまったらしい。


「スプーン曲げなんかより凄いじゃないか!」

「未来を見定める奇跡の少女降臨てか?」

「どの子なんですか?」


 園庭から、教室に乗り込んでくる勢いだった。


「お前たち、何をしているんだ! 立ち入りの許可は出していないぞ!!」


 カメラやマイクを持ったテレビ局のスタッフを、園長は追い出した。


「超能力少女を隠すのか!」

「そんな子供は居ない!!」

「そちらの職員から聞きましたよ。未来を言い当て、人を救ったって。美談じゃないですか。なんで隠すんですか」

「偶然が重なって、勘違いした者がいたのだろう。そんな事実はない。帰ってくれ! 子供たちが怖がっている」


 とりあえずは、幼稚園の敷地からは出ていってくれたが、門の外に待機しているようだった。


 園長は花守家に電話をかけ、状況を説明し、自宅でも注意して欲しいと告げた。 


 電話が終わったと同時に、アオイが園長室を訪ねてきた。


「園長先生、私のせいでごめんなさい」


 職員室と繋がる開けっぱなしの入り口から、アオイは頭を下げた。


「アオイちゃん、アオイちゃんはなんで謝るのかな? 何か悪いことをしたの?」

「してないと思う」

「だったら、謝る必要はないんだよ。でも、怖かったね。幼稚園にいるときは、先生たちみんなで守るから安心してね」

「園長先生、ありがとございます」


 泣きそうだったアオイが笑顔になった。


「必ず、知っている大人と一緒にいるようにするんだよ?」

「はい」


 アオイは教室に帰り、平和に過ごした。そして事件は、帰りのバスに乗り込むときに起きた。


「あおいちゃん!」


 誰かからの声かけに、ほぼ全員が振り向いたが、いち早く、アオイが振り向いてしまったのだ。


「あの子だ!」


 パシャパシャと写真を撮られ、週刊誌に友達ごと載ってしまった。


 ━━━━━━━━━━━━━━

 奇跡の少女!

 知人の危機を予言!

 ○○市に住む花守 葵(はなもりあおい)ちゃん6歳は、父親の友人の危機を見事言い当て、死亡事故を防いだ。列車事故を予言し知人を助けたこともあり、現在通う幼稚園でも、職員の家族の危機を察知し、死亡事故を未然に防いだ。

 ━━━━━━━━━━━━━━


 有ること無いことを書かれ、一躍有名人になってしまい、見知らぬ人々がやってくるようになった。

 とにかく断り、だんまりを決め込み、徹底的に無視した。それでもマスコミの取材は後を絶えない。そのうち雑誌を見た一般人もやってくる。そういった輩は徹底的に追い返した。

 両親は幼稚園を休ませ、アオイに家から出ないように言い、暫くは安全に過ごせていたが、父が断れない仕事上の付き合いの相手から頼まれ、その相手を家に招いた。


「アオイ、この人は、父さんの仕事を応援してくれる人なんだ。手を繋いでみてくれないか?」

「うん。わかったー」


 事前に母と相談し、色々試した結果、アオイは左手のひらで触る。相手も左手のひらだと、色々見えて、左手の甲だと少ししか見えないとわかり、右手を下に、左手を上にして机の上で重ねてもらい、その上からアオイも手を組んで触る形にした。


「手を机にのせて重ねてね」

「おおぅ。こうか?」

「うん。触るよー」


 アオイが、相手の左手の甲の上に左手を重ねた。

 割りと平和な日常が見える。感情を大きく揺らすようなものは見えない。


「おじさんのお家って、大きな犬が2匹いて、髪の毛の長い女の人がいる? その人に綺麗なお花とケーキを渡すと、凄く喜ぶと思う」

「ん? うちの家内の事か?」

「かないってなあに?」

「えーと、妻の事だよ」


 アオイに通じなくて、父が口を挟んだ。


「アオイ、アオイのお母さんは、父さんから見たら、妻なんだよ」

「わかったー」


「ん、ちょっと待てよ? あー! 今日、家内の誕生日だ!」

「これで良い?」

「アオイちゃん、どうもありがとう! 助かったよ」


 父の仕事先の偉い人は、上機嫌で帰っていった。

 こうして、新しい仕事を始めたばかりの父は、断りきれない相手をたまに連れてくるようになった。

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