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特捜騎士リボリアム  作者: 鈴木りゅう
一章:特捜騎士誕生編
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第二話「モグログの魔手」1



第二話です。全3~4回程度を見ております。

よろしくお願いします。





 平和な帝国辺境に、突如現れた光の結社モグログ。


 街を襲った魔獣の群れと、キメラ魔獣ネガコルポスを撃破した鎧の戦士リボリアム。しかし領主サルトラ、そして嫡男マサキの身代わりとしてトマックが連れ去られてしまった。


 モグログの目的は、古来より封印されし魔族の復活。その手始めとして、この辺境伯領及び帝国への宣戦布告をするべく、領主サルトラとトマックの公開処刑を計画する。



 友を守るため、人々の平和を取り戻すため、リボリアムの戦いが始まった!



    *



第二話「モグログの魔手」



    *



 街は、落ち着きを取り戻しつつあった。まだ兵達はあちこちで戦っているが、少なくとも大通りには魔獣の気配はない。リボリアムは、広場に倒れ伏す一頭の馬に駆け寄った。やはりベルカナードであった。


「!……ベルカナード!」


 彼は襲撃の際、トマックを助けるため立ち向かったが、モグログ幹部の謎の魔法により倒されてしまった。リボリアムはしゃがんで状態を見る。ひどい怪我であった。頑丈な軍馬であったから一命はあるものの、いつ死んでもおかしくない深手だ。


「まっていろ。今治す。」

 リボリアムはそう言うと、自身の左手を見るようにして集中した。その鎧の隙間からほのかな光が走り、胴の装飾らしき部分が、そして頭部の各所が明滅し出した。「よし」と一声確認すると、倒れたベルカナードに左手をかざす。


 ほのかな光がベルカナードを包む。


「…………!」

 痛みが引いていくことに気がついたベルカナードは、首を少し上げてリボリアム、鎧の戦士を確認する。


「ベルカナード、まだ動くな。……お前も坊ちゃんを守るために戦ったんだな……少し休めば、傷も治るはずだ。じっとしてるんだぞ。」


 リボリアムは立ち上がると、領主邸を見た。


「………坊ちゃん。」


 ヘルム内に映る領主邸には、ほのかに緑色に光る部分があった。温度を色で表現する機能、サーモセンサーが、邸内の人間を捉えたのだ。合計三人……二人立っていて、一人は倒れている。その一人が誰なのか、リボリアムの心がざわめく。


 そこに部隊長が来て、領主邸を見つめるリボリアムに声を掛けた。


「助かった。見事な一太刀だった。……だが、サルトラ様とトマック様が、既にさらわれてしまっている。私達はこれから、マサキ様かアンザイ師範に指示を仰ぐつもりだ。あんたはどうする?」

「……トマック様まで!?」

「トマック様は、ご自分が嫡男だと嘘を。囮になったのだ。賊は、お二人を処刑すると言っていた。急がねば!」


「!……そうか、では館にまだ、マサキ様とケイリア様がいます。ですが、1人倒れてる人がいる……俺が行きます。」

 そうして領主邸内を指さすリボリアム。


「本当か!よし、私も行く。……おまえ達、2人ついてこい!あとの者は残りの魔獣を掃討しろ!」

 部隊長が部下達に指示し、リボリアム達は屋敷に入った。



「ぅ……うう……」


 リボリアムはまず、執務室へ向かった。倒れていたのはアンザイ師範だった。師範の実力はこの街の兵士の誰もが知っているだけに、打ちのめされた姿を見て、全員が一瞬息を飲んだ。部隊長と二人の兵が駆け寄る。

「師範!しっかり……!」

「ぐぅぅ……わ、わしのことは、いい……マサキを……」


 リボリアムもアンザイ師範に駆け寄り、先ほどベルカナードにかけたのと同じ魔術を使った。アンザイ師範の身体がほのかな光に包まれる。


「これで大丈夫。すぐ動けるようになります。」

その様子を見て、部隊長が問うた。

「さっきといい、あんた何者だ?」

「……それはまだ。領主様やマサキ様達の知人とだけ。信じてもらえないかもしれないけど、どうか信用してほしい。」


「……わかった。あんたの働きは見せてもらったからな。マサキ様をたのんだぞ。」

「……ありがとう!」

 アンザイ師範を部隊長達に任せ、リボリアムは部屋を出た。


 目当ての場所はそう離れていなかった。


「マサキ様、ケイリア様!リボリアムです。もう魔獣はいません、お出でになってください。」


 リボリアムがそう声をかけると、壁に見えていたところが開き、領主の嫡男マサキとヴァルマ夫人ケイリアが出てきた。壁が隠し戸になっていたのだ。出てきた二人はリボリアムの容姿にぎょっとしたが、マサキはすぐ冷静になり、話しかけた。


「状況はどうなっている?」


リボリアムはすぐさま答える。

「敵は大勢の魔獣を率いて操り、攻撃を仕掛けてきました。サルトラ様と、トマック様が連れ去られました。トマック様は、自分が嫡男だと嘘をついたようです。」


「トマック……無茶な、そんな嘘、すぐにばれる!」


「……坊ちゃんは、きっと俺を待っているんです!すぐに行けば、きっと間に合います。行かせてください!」


 さらわれたトマックは、リボリアムの鎧、BRアーマーのことは知らない。だが、魔族と戦う手段として何かしていたのは知っている。それを期待してか、あるいは貴族の役割を全うするための判断か。


 少なくとも、敵は領主サルトラと「嫡子トマック」の処刑を、民衆に知らしめるため大々的に宣伝しているようだ。猶予はあるはずだった。


 マサキはしばし考え、そして口を開いた。

「……リボリー、君は、父上とトマックを助けられるのか?大勢の敵を殲滅できるのか?」

「できます。」

 リボリアムは迷わず答えた。希望的観測である。敵勢力のすべてを知らない。だが、それ以外の答えはなかった。


 リボリアムは、圧倒的力を持つ魔族と戦うために生まれ、無敵の超兵器を着込んだ。計算上、この国の最高戦力『近衛銃士(ピストリア)』を含めた軍隊相手でも圧倒しうる。魔族でもない者達に、負けることなどありえない。ありえてはいけないのだ。


 その覚悟を読みとるように、マサキはリボリアムを見つめ、頷いた。


「わかった。ならば領主代行として命ずる。二人を助け、敵勢力をたたけ!」


「承知!」

リボリアムは、守備隊式の敬礼で応えた。



 再び広場に出たリボリアムは、未だ横になっている馬のところに行き、声を掛けた。


「ベルカナード……俺が坊ちゃんを助けに行く。……きっと連れて帰る。安心して待っててくれ。」


 リボリアムが声をかけると、かの馬は自分の状態を確認するようにゆっくりと、地を踏みしめ立ち上がった。


「も、もう立てるのか?確かに傷は治ってるけど、体力まで戻ることは……」


 ベルカナードは、主人のさらわれた方向をじっと見つめた。そしてリボリアムに顔を向けると、促すように(いなな)き、体を寄せた。それが意図する事……。


 彼にはわかっているのだろう。目の前の奇妙なニンゲンが知り合いだと。以前も助けてもらったことを。主人を救いうる事ができるのだろうと。


 そして言っているのだ。「乗れ」と。その目からは、つい今し方まで瀕死だったとは思えない、闘志が満ちていた。彼は、人間の勇士にも劣らぬ、誇り高き戦士なのだ。


「ベルカナード………………わかった。行こう!」


 その背に鞍はない。敵の放った爆発魔法によって吹き飛んだのだ。だが(くつわ)と手綱は残っている。それだけあれば、今のリボリアムにとって戦馬であろうと問題なかった。


 リボリアムはベルカナードに飛び乗り、手綱を取った。脚でがっちりベルカナードの胴を押さえる。

 共通の主人を救うため、二人は今相棒となった。リボリアムが先の道を見据える。


「……ここから出たという事は、奴らは鉱山街に行ったのか。よし……ハァッ!」

リボリアムが手綱を弾き、ベルカナードが駆けだした!

 と、門の脇に掛けてあった赤い旗をベルカナードがむしり取り、リボリアムに手渡すようにはためかせた。


「これは……街の紋章、そうか!」


 リボリアムはその旗を、前掛けのように自分の体に括り付けた。これで街、つまりヴァルマ家の紋章が体の前面に見えるので、一目で領民達への証明となる。簡易なサーコートの役割である。


「助かるよ、ベルカナード。」


 出がけにこれに気づいたベルカナードはさすが軍馬の経験者と言うべきか。……それを踏まえても頭が良すぎる気がするとリボリアムは一瞬思ったが、今の状況で気にする事でもないと思い直した。


(連中の移動手段は徒歩だろうか?いや、話によれば敵は少数で坊ちゃんをさらい、去っていったという。最初からサルトラ様達を攫うつもりだったなら、乗り物くらい用意してたはずだ。)


 馬に相当するものが敵にあれば、鉱山街までは半日……()()()ほどだ。連れて行かれた時間を考えると、鉱山街に着く頃にはすっかり夜になるだろう。途中に宿場町が一つあるので、そこで情報があるかもしれない。まさか呑気にトマック達を連れてお泊まりしているわけはあるまいが。


(もし鉱山街で処刑を行うなら、深夜にやることはないだろう。見せしめにやるなら多くの人に見せなきゃ意味がない。衆目を集める時間を思えば、タイムリミットは……)


 ───明日の朝。最短の場合だが……いや、相手が何をしてくるかわからない以上、最短「しかない」と思って行動するべきである。


(途中の町で聞き込みをしたら、すぐ出発だな。ベルカナードには負担をかけてしまうけど……)

 そんなリボリアムの心配をよそに、ベルカナードは全力で駆けるのだった。



    *



第二話2は明日10:00ごろ更新です!

Xアカウント作りました【https://x.com/vajutaigar】。リンクはユーザープロフィールからどうぞ。

主に特撮とか漫画の話をしています。


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