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特捜騎士リボリアム  作者: 鈴木りゅう
二章:アバンジナ南部編
58/59

第九話「聖女の導き!海底に沈む神秘」5


================


「よぉし、いくぞ、モグログ!」


 カイナの『セット魔術マジック』、《プレートアーマー》《サークルシールド》の石板カードで武装したリボリアムが構える。


「ヒャォォ~……また”魔術もどき”か。だが、見たところ特別どうという品ではないな?ただの鎧や盾を手軽に持ち運んでいたという、ただそれだけのものだ。そんな平凡な装備で……クヒャォォ~~、我々と戦おうとはな!」

「ふっ!」

「グッ……!?」


 リボリアムはセテンバの横薙ぎに振るった腕を素早く屈んで躱し、倒れる勢いを乗せて斬撃を放つ。その皮膚を斬れはしなかったが、しかしノーダメージではないようだ。1撃では終わらず、2度3度と剣を振るい、防ごうとするセテンバの防御を潜ってその鱗に剣を滑らせる。

 相変わらずその鱗に傷はつけられないが、しかしそれは結果論である。リボリアムは追撃の際、目や耳、口内など、セテンバの”急所”と見られる部分を狙っていた。それを防御させることで、リボリアムは()()()()()ことができるのだ。


「クヒュゥ~~!?クワッ…!クワゥゥ~~……!」

「セテンバ!……キシァア~~!!!」

「……!」


 セテンバを上手く攻めていたリボリアムだが、当然もう1人の敵が大人しく見ているわけはない。

 ”投げるもの”カタクトリがタックルで割り込んできた。リボリアムは跳び退き、両者の距離が空いた。カタクトリはすかさずその両目を輝かせ、キメラ魔人得意の《爆破ボルムス》を放った!


 ───ドガガガン!


「ぐぬぅっ!」


 リボリアムは盾を斜めに構え、直撃を回避する。受け流したとはいえ爆発の衝撃は相当のものだ。たたらを踏み、さらに距離が空く。ちらりとカイナを見る。彼は……片手に一枚の石板カードを、もう片手には束になった10枚弱の石板を、カチリカチリと合わせている。枚数を見るに、まだ時間がかかるだろう。


「クキィー!」

「!?」


 カタクトリが腕を振る。ただそれだけだったが、リボリアムは直感的に盾で頭部と胴体を覆った。


 ───ズゴン!!


「うおわっ!?」


 《爆破》程ではないが、さらに後退させられる程の衝撃が盾全体に響く。視界の悪い全身鎧プレートアーマーの兜から見ると、鱗鎧スケイルアーマーに使うような小さい板金ばんきんがいくつも刺さっているようだった。即座に”投げるもの”カタクトリが、自身を覆う鱗を飛ばしたのだと理解した。そして、貫通力で言えば《爆破》以上に効果的なものだという事も。

 小さく貫通力のある物を多数飛ばすことで、「面」での制圧力と破壊力を両立する……通常は魔法・魔術でやる芸当だが、リボリアムの知識で言えば、古の超文明における『散弾銃』という武器に用法が似ていた。これ以上距離が空くのはまずい……だが!


「キシ!キシ!キイィィ~~!!」


 ───ガキュン!ギャリン!ズギャン!


 カタクトリは立て続けに鱗を飛ばし、リボリアムを追い詰める。最初の1発以降はリボリアムも直撃を避け、弾くように凌いでいるが……どうにも効果は薄い。不穏な金属音とともに丸盾がどんどん傷つき、削り取られているようだ。気づけば崖際に追い詰められ、ガラリと足元の石が海に落ちていった。


「く……!うおおっ!」

「キシュゥ……!」


 これ以上相手のペースに飲まれまいと、盾で鱗を受けつつも前に出る。カタクトリも負けじと腕を振り続け、鱗を飛ばす。


「……!」


 リボリアムの丸盾が大きく破損する。失うのは惜しいが、惜しんで勝てる相手でもない。

 カタクトリに肉薄する寸前、横からセテンバが《爆破》で強襲する!これをもろに受け、リボリアムが爆発に包まれる……が!


「ぜぇぇあっ!」

「何!?」


 リボリアムは盾と兜を失いつつも、突っ込む勢いを殺さず斬りかかった!

 何かしらの横槍が入ることは織り込み済みであり、それに対応できるよう勢いをつけていたのだ。斬撃も下から上に……カタクトリの鱗を逆撫でするように。全て狙い通りであった。剣は果たしてカタクトリの鱗の隙間を縫い、「ざくり」と確かな手応えを持って異形の体に食い込んだ。


「グアアッ!?」

「うぬぬぅぅ……でぇい!」

「アアッ!!」


 さすがにただの剣ではキメラ魔人を両断する程の事はできないが。食い込んだ剣で引き斬る事で、明確な負傷を与える事は出来た。まさかのダメージにカタクトリは一歩下がる。最もこの程度の負傷はすぐに治ってしまうだろう。今までの傾向からそれはわかっている。しかし、確かに出来た。生身による剣でも、上級キメラ魔人に一矢報いたのだ。大きな一歩である。


 それが気の緩みだったのか。


「クヒャオーッッ!」

「ぐっ!?」


 再び横から割り込んできたセテンバの尻尾攻撃で、リボリアムの足が止まった。素早く振り向くセテンバとカタクトリ。両者の視線とリボリアムの視線が交差する。一瞬の事だ。


「「《爆破ボルムス》!!」」


 ───ドカカカァン!!


 一瞬で、リボリアムは面積の半分以上を失った丸盾を構え、後ろに飛び退いた。土壇場で走馬灯のように思考が加速したのか、反射に近い行動だったのか、それはわからない。だが、命は拾った。そう思った。


「ヒャォォォ!!」

「!?」


 バキッ!


「ぐが……ッ!」


 爆炎を突き破って突っ込んできたセテンバの追撃により、リボリアムは横に吹っ飛ばされた!その先は───



「うわぁぁーーーーーっ!!」

「リボリアムさぁーーん!!!」


 崖……そして夜の海だった。リボリアムは、闇がうねる海に消えていった。カイナが叫ぶが、それ以上の事はできない……。と、背後で「ぐおん」と唸るような音が上がり、ベルカナードMk-Ⅱがカイナの隣に来た。


「あ、べ、ベルカナード……さん?」

PPP(ピピピ)……C(コー)PPP(プププ)

「……!」


 ───グォン!!ヒィィーーーーーン……!!


 ベルカナードはモグログに向かって、まるで威嚇するかのように音を立てた。身構えるモグログ達に向かい、鉄の馬の眼が瞬いた!


 ドドドカァン!!


「ヒャオ……!《爆破ボルムス》か!?」「キシキシ……」

「…………!」


 ベルカナードの放った《爆破》は、互いの視線を分断させる。アイネグライブは油断なく爆炎を見ている。その爆炎がほんの少し不自然に揺らいだ時、素早く前に出て盾を突き出した。

 爆炎の先から細かな赤い光弾がばら撒かれ、そこかしこに火花を散らす。ベルカナードの『機魔術レプリ・マジ』により作成された、牽制に最適なオリジナル魔術だ。

 モグログはアイネグライブが構えた盾により無傷だったが、次いで飛び出してきたベルカナードの体当たりを防ぎきることはできなかった。


「む!」「キシャアッ!?」


 その体当たりをアイネグライブは盾で逸らしたが、その先にいたカタクトリをね、反対側に走り抜けた。


「主人の後を追うがいい!」


 反転して再び突進を仕掛けようとするベルカナード。対するアイネグライブは剣を輝かせ十字を描く!輝く剣は、振るわれた勢いで斬撃を飛ばし、鋼鉄の馬体を切り裂いた。


 ズバァァァァン!!


 その威力は凄まじく、重い馬体が激しく火花を散らしながら吹き飛び、鋼鉄の騎馬は崖下に落ちていった。

 アイネグライブはそれを見届けることも無く、残った子供の方を振り返る。その姿は既に無く、鋼鉄の騎馬が闘っている隙に逃げたのだと察せられた。


「くく……はっはっはっは!」


 アイネグライブは高く笑うと改めて崖に歩み寄り、暗い海を見る。


「我らモグログにとり、一番厄介な者が今消えた!」

闘神官ウォリアモンク殿!」

「うむ。あの後に及んで変化へんげせぬという事は、やはり鎧を着るだけの魔力が残っていなかったのだろう……あの”鉄の馬”も殊勝しゅしょうな事よ。人が鎧を着て沈めば、どうなるかは明白。しかして残ったあの馬がいくら不死身だとて、もはやリボリアム程の障害にはならぬ!」

「クヒャォォ~……ついに……ついに同志達の仇が取れた……!!」

「聖女は、如何いかがなさいますか。」

「今は捨て置くのだ。指輪とその持ち主さえ手に入れれば、残る聖女を捕えるのも簡単な事……。」


 そうして、再び笑い声を上げながら、モグログは夜の闇に溶けていった。



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