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特捜騎士リボリアム  作者: 鈴木りゅう
二章:アバンジナ南部編
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第九話「聖女の導き!海底に沈む神秘」3


 リボリアムが護衛する。大まかには、ボリアミュートまでロクシンを逃がす。あの街まで行けば護衛も申し分なく、モグログのキーアイテムであろう指輪を研究することもできるだろう。

 それにあたりまず指輪を預かろうと思ったのだが、ここで問題が発生した。ロクシンが指輪を外そうとしたところ、外れなかったのだ。


「呪われてる……?」


 カイナがボソリと言った。


「じょじょ冗談じゃない……!」


 ロクシンはわめいたが、喚いたところで取れることは無い。


「お、俺にもちょっと……!」

「あ、ああ……いで、痛でででで!ちょっと待ってやめて!」

「ああごめんなさい……まるで張り付いてるみたいだ。サイズが合ってないとかじゃないぞこれは……。」

「わたしがやってみます。……むくに生きるせいじゅうの友。じひをふりまく、いだいなおとめよ…… …………?」


 リボリアムの怪力でも取れず、聖女シプレが呪文を唱え始める。だが、やがて怪訝な顔をしながら、途中でやめてしまった。この場で唯一聖女の呪文の力を知るリボリアムが「……聖女様?」と問いかけると、シプレはロクシンを見つめて言った。


「おじさん、ほんとうはこれをとりたくないんですね?」

「……!? そ、そんなことねえ!い、いや、ありません、です……。もう、うんざりなんだ、疲れちまったんだ、こんな生活!取れるもんなら取りてぇですよ……!」

「うーん、そうですかぁ……。ごめんなさい。わたしでもこれは取れません。」


 顎に指を当て、シプレは困ったように言った。辺りに落胆の空気が満ちる。聖女で取れないとなれば相当厄介な呪いであろう。

 が、リボリアムはあっけらかんと言った。


「まぁ、取れないんじゃ仕方ない。結局護衛するのは変わらないんだ。」

「ほ、本当に大丈夫なん…でしょうか……?」

「大丈夫大丈夫……ロクシンさん、あなたには一緒にボリアミュートに来てもらいます。ヴァルマ領の。」

「ヴァルマ……?あの、魔獣がいっぱいの……?」

「そんな魔境じゃないです……。あそこにはとびっきり凄腕の、魔術のエキスパートがいましてね。その人に見てもらえれば、きっと取れますよ。」

「……。」


 ロクシンからの返事は、不安げに頷くだけだった。



 ………………



「頼れるメンバーを紹介してくぜ!」


 ものすごく人口密度が高くなった室内にて、聖女シプレの護衛の一人、無精髭のセザムが宣言した。


「戦士ドリス!特製のハイロングソードを機敏に振り回せるパワーファイターだ。」


 女戦士がクールに視線を飛ばす。


「神官フルール!シャロット教の武闘派神官、回復と防御はお手の物!」


 女神官が柔らかく微笑む。


「戦士オーベン!槍使いのベテランで、特に野生の勘が鋭い!」


 頭部の眩しい男が腕を組む。


「そしてこの俺、戦士セザム。同じく槍使いで、今回の指揮を担当する。あと薬草から薬の調合もちょっとできる!以上だ!」


 無精髭の男が胸を叩いた。


「ぶふぅっ」


 しばしの沈黙の後、聖女シプレが噴き出した。ちょっと聖女がしちゃいけない感じの顔だったが、必死に我慢した結果であるので、誰も彼女を責めることはできない。まあ、そもそも何故ここで噴いたのかわからなくて「?」となっているため、責めるどころではなかったが。そんな空気にめげず、手を一つ叩いてオーベンがまとめに入る。


「では、行動は……夜。」



 ………………



 怪しげで不敵なBGMが流れていそうな雰囲気で、各人が闇夜を駆ける。

 舟を治すという昼の”奇跡”の後、ロクシンがトイレから戻らないことで、既に昼間から騒ぎになっていた。暗くなって捜索は一段落しているが、所々で松明たいまつの明かりが見え、諦めきれない人々が彼を探しているのをうかがわせる。

 そんな暗闇の町の中で、無精髭の槍使いセザムは的確に人の気配の薄い方を選び、先導している。

 基本は入り組んだ路地裏を、時には広い通りを横切り、あるいは松明のともる道の一本隣を進む。


「よし、もうちょっとってとこだな……。」

「な、なぁ……町からどうやって出るんだ……?」


 枯れ井戸の周囲に集まり一息ついた一行に、ロクシンがきいた。セザムが答える。


「そこだがね。海へ出るんだと。ね、聖女様」

「はい。」


 あっけらかんと言う聖女シプレに、一同はぽかんとする。していないのは答えたセザムだけだ。

夜の海に舟で出ると言うのは、それだけで極めて危険な行為だ。満月ならまだマシだが……。何人乗りの舟で出るのかは知らないが、貿易船のような大きく安心感のあるものでは決してあるまい。

 怪しげな一味にさらわれるのと、素人達だけで海に出る危険性。どちらもろくな未来が見えず、ロクシンはガタガタ震え出した。


「う、う、海に出るったって……!?」


 その声が予想以上に大きかったのか。


「……!まて、誰かいる!」


 野生の勘が鋭い、闇夜にあって月の光を反射する戦士オーベンが、素早く周囲を見回した。警告を聞いた他の護衛達もそれぞれ、ロクシンを背に囲む。

 オーベンが察知した存在の主は、建物の影から、ぬっと姿を出した。隠れる気も無く、なんともあっさり現れたいかにも怪しい男。その姿に、リボリアムは目を見開いた。

 全身を漆黒の鎧で固めた偉丈夫。帝国の敵、光の結社モグログの首魁、”闘神官ウォリアモンク”の肩書を持つ者。


「お前は……アイネグライブ!」

「……久しぶりだなリボリアム。貴様もその男に目をつけていたか。それに……そちらのお嬢さんが”聖女”か。」


 アイネグライブの目がギラリとシプレをめ付ける。その迫力にたじろぐシプレを、彼女の護衛達が庇う。そしてリボリアムは───


「ぜぇぇぇああッッ!!!」

「……!」


 ───ガキィン!


 1も2もなく、アイネグライブに斬りかかった!彼はこの場の誰よりも具体的な”最悪”を想像していた。それはこの黒衣の戦士が現れる事。そして、対する行動も考えていた。それが”これ”だ。考えるよりも先に動いたのだ。

 アイネグライブはリボリアムの渾身の一撃を盾で難なく受け、怯むことなく反撃の剣を振るう。

 リボリアムも盾で受けられた次には、一歩退き姿勢を低く、反撃の剣を躱す。さらに屈んだ勢いで身を捻り、1回転しながらさらに2撃目を放つ!

 

「!」


 その2撃目にアイネグライブは素早く剣を戻し、受ける。

 リボリアムがカチ合った自分の剣を逆手に持ち、鍔で相手の剣を根元から押さえこみ、右足で膝蹴りを仕掛ける。それを察知したアイネグライブが盾を突き出し、シールドバッシュで迎え撃った!


 ガィン!!


 膝と盾がぶつかり合い、鈍い音を立てながら2人は互いに距離を取った。


「ふっふっふっふ……多少は腕を上げたようだな。」

「!……。」


 余裕のあるアイネグライブに対して、リボリアムの顔色は優れない。

 リボリアムにとって、今の3合ほどの攻防は会心と言える動きだった。スムーズに攻撃が出来、そのどれもが当たれば勝負の流れを掴めるという自信があった。だがやはりというべきか、生身のままでは目の前の黒衣の戦士には届かないらしい。……もっとも彼の師匠がここに居たなら「たった3手で何が出来るものか」と呆れられただろうが。───そう、生身。今のリボリアムは、非常にまずい状況にある。


「どうしたリボリアム。『煌結こうけつ』とやらはしないのか?」

「……!」


 そのものズバリであった。リボリアムの相棒……ベルカナードMk-Ⅱのマナ・エネルギーはまだ十分な量を溜め切れていない。『煌結』によってBRアーマーを着装する事は出来ても、戦闘できるほどのエネルギーは無いのだ。

 図星だったからと言って狼狽えることは無い。どうせ打ち合っていれば悟られることだからだ。問題はどうやってここを切り抜けるかだ。……ただリボリアムには、どうにも気になる事があった。なぜアイネグライブは、1人でここにいるのか?

 ここでオーベンが気づいた。


「気をつけろ、挟まれてる!」

「「「!」」」


 その瞬間、リボリアム以外がシプレの四方に立ち、戦闘態勢を取った。ほぼ同時に、アイネグライブと逆方向、建物の物陰から、1人の男が姿を見せる。見覚えのあるローブを着用するその姿を見たリボリアムは苦い顔をした。


「上級キメラ魔人……!」


 灰色の肌に、ぎょろりとした黄色の瞳。シルエットこそ人間ヒュームだが、見た目はリザードマンに近いようだ。


「特捜騎士、リボリアム……おれの名は”張り付くもの”セテンバ。覚えておいてもらおう……!」

「その者は貴様に対し、骨髄こつずいにまで恨みが染みておる。今宵は逃げきれぬと思え。」


 それを見たセザムの判断は早かった。


「嬢ちゃん達は右、聖女様はこっちへ!オーベンの旦那、行ってくれ!」

「おう!」


 頭部を煌かせ、オーベンはロクシンの手を引き弾けるように走り出す。ロクシンもつんのめりながらそれに追走する。現れた()()()キメラ魔人の横を通り抜けるつもりだ。それを見逃すキメラ魔人ではなかったが、一歩踏み出そうとしたところで見えない壁のようなものにぶつかり、思わず後ずさった。その隙に、逃げる2人は建物の間に消えていった。


「……聖女か!」


 キメラ魔人達が振り向くと、指摘通り聖女シプレは手をかざし、何やら魔法を使っていた。彼らは自分の周囲を手を振って確認し、どうやら()()()()には壁が無いとわかると、そちらに狙いを定めた。ここに、上級キメラ魔人VS冒険者達の構図が成った。


「ふん、これで足止めしたつもりか。……『一極旋風ソートネィド』!!」

「!……『対魔法壁シールド』!」

「『聖結界ヴァリオル』!」

「ひゃああ~~~!!?」「聖女様、危ない!ぐわぁぁっ!?」

「「聖女様ーっ!!」」


 だが、それを嘲笑ったのはアイネグライブ。盾と剣を合わせ呪文を唱えると、渦巻く突風が吹き荒れ、羽虫の大群のごとき魔力弾が放たれる。リボリアムは魔法のシールドを、女神官フルールも神聖魔法の結界を即座に張るが、聖女シプレは反応が遅れ、セザムに抱えられながら飛ばされ転がって行ってしまう。女冒険者コンビがシプレの身を案じて叫ぶが、気を緩めれば結界も破られる。どうにもできなかった。


「男を追え!」


 その隙にアイネグライブが指示を飛ばすと、キメラ魔人達は再びロクシン達を追う。


「ま、まずい……!」


 その瞬間、リボリアムはアイネグライブから目を離した。


「リボリアム、行きたければ連れて行ってやろう!むぅぅん!!」

「う、うわぁぁぁぁぁぁっ!?」


 アイネグライブはさらに魔力を込め、リボリアムの魔法の壁を破壊し、彼だけを遥か空へと吹き飛ばした!


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