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特捜騎士リボリアム  作者: 鈴木りゅう
一章:特捜騎士誕生編
18/53

第四話「あんたが近衛銃士?」1



お待たせしました。

アバンです。





 暗闇の中、仄かな光の玉がいくつも浮遊している。


 その闇の中にあっても、誰がどこにいるか、当人達は不思議とわかるらしい。


 まず一歩、歩み出た黒鎧の男。モグログの首魁、闘神官ウォリアモンクアイネグライブである。


「空飛ぶ鉄の馬だと?」

「然り。」


 短く答えたのは、”削ぎ取るもの”ガンドマ。

 アイネグライブは今しがた、このガンドマより作戦失敗の報告を聞いた。またしても、あの金鎧の戦士リボリアムにしてやられたと。だが、そこに新たな情報がもたらされたのだ。


「ガンドマよ、詳しく話せ。」

「は。大筋では、上手くいっておりました。ネガセルパンのサリネの幻術により、聖女を含め見込みのある者らを攫い、我らが神の祝福を授けんがため、荷車に乗せたのですが……奴は空飛ぶ鉄の馬を操り、我らを見つけだしたのです。

 しかも、その馬は我らの『爆破ボルムス』と非常によく似た魔術まで使いました。」


「馬が、魔術を……?」


「極めつけは、件の聖女です。あの娘は、一人密かに幻術を解いていたようで。突然生命の女神の呪文を唱えたかと思うと、荷車の村人たちをも、幻術から解放させたのです。」


「聖女は女神シャロットから力を授かったのか……!」

 アイネグライブは口惜し気に言う。聖女シプレのように、魔法の素養を持たず、学びもしなかった者が突然奇跡のような力を授かることは、『開座かいざ』の一種であろうとも言われる。今回の件では、もし本当に生命の女神シャロットの力を借り受けたのならば、それは不完全ながらも『開座を垣間見た』と言って良いだろう。ますます取り逃すには惜しい人物となってしまった。


「金鎧と鉄の馬。それらに足止めされては、最早確保は適わぬと、我は退きましたが。サリネは残り、少しでも奴らの情報を持ち帰ろうと。……こちらに。」


 そう言ってガンドマは、一抱えある袋を取り出し、中身を見せた。中には無数のヘビが寄り集まって、あのネガセルパンのサリネの頭部を形作っていた。


「サリネよ、無理はするな。簡潔に話せ。」


 ガンドマが語り掛けると、おぞましい生首がたどたどしい言葉を紡いだ。


「……金鎧には幻術が利く……しかし、見破られる……聖女の力……本物……星を、かくした……」


「……よい。」


 アイネグライブは知りたいことは知れたとばかりに手を振り、サリネの言葉を遮った。


「……金鎧のリボリアム。ますます厄介になるか……こちらの主立った動きは、やはりしばらくできぬな。

 ……同志ガンドマ、気に病まずともよい。此度の一件で聖女はより重要になったが、今に急ぐものでもないゆえな。」


「はっ。此度の挽回、またいずれ。

 ……そういえば、かの街にはまだ、ネズミが潜んでおるので?」


「そうだな。そろそろ、奴からの報告もあるはずだが……」


「我らが中でも、こと潜み続ける事にかけては右に出るものなし。此度もきっと有用な情報を持ち帰るでしょう。」

 同志の言葉に、アイネグライブはゆっくり頷いた。



    *



 薄暗い中で、女性が一人座り込み、うなだれている。

 黒髪、旅装、大きなバッグ。……旅人であろうか。


 彼女は、迷っていた。


 道に?人生に?


 ある意味、どちらもと言えるだろう。

 彼女はもうやめたかった。何もかもを。与えられた役職も、役割も

 人生何をするにもドジと不運ばっかりだ。自分が世界で一番不幸だ、とは思わないが……世界一不運だ、とは半ば本気で思っている。不幸と言えば、それが不幸だ。

 そして、今この時は間違いなく世界一不幸であった。

 たとえ主観だとしても……


「ここどこ……」


 藪生い茂る山の中で、黒髪の女性は、力なく呟いた。

 街道でもなければ、山道ですらなかった。


 これが『絶望』なのだと、木々に阻まれた狭い空を仰ぎながら実感した。



    *



第四話「あんたが近衛銃士ピストリア?」



    *



 ───朝日が上る前。空が白み始めると、カーンと鐘が鳴らされる。


 リボリアムは自宅のベッドからのそりと起きあがった。窓を開けて光を部屋に満たし、桶に溜めておいた水で顔を洗う。塩漬け肉を薄く切り、『簡易氷室』と言う名の冷蔵庫に入れていた新鮮な野菜を軽く洗って薄く切り、黒パンをこれまた薄く切る。

パン、肉、野菜の順でそれぞれ3回積み重ね、最後にパンを乗せてサンドイッチ(Lサイズ)を作った。

「いーたっきまぁ~。」

 手を合わせてからもちゃもちゃと食べる。黒パンはそんなに美味くない……というかぶっちゃけ不味いのだが、肉・野菜と一緒に食べればまぁまぁイケるものだった。味付けは無し。塩漬け肉の塩味がきつすぎるので、野菜とパンで和らげている感じだ。


 朝食が終わると早々に着替え、剣を腰に差す。家賃と食費に給料が消えるので、部屋も服も最低限のものしか揃えていない。


 ……3週間ほど前。帝国を揺るがすであろう怪しげな邪教の一団が現れた。

 領主サルトラは対応に追われている。リボリアムは、そんな邪教が復活させようとしているであろう推定『魔族』を倒すために生まれたわけで、件の邪教『光の結社モグログ』を討伐せんと活動するのに全くやぶさかではなかった。……のだが。

 何せ先日、「連中モグログの調査はして欲しいが、自費で頼む」と言われてしまった。傭兵だって冒険者だって仕事をすればお金が貰えるのに……。兵士の自分が、人類の平和を守るための活動をするのに自費なのは、今でも疑問なのだが……。


 準備が出来たら兵舎へ向かう。今日から遠征訓練で、徒歩にて近くの山地へ向かう予定だ。一応ここ1週間ほどは平和で暗い噂も無いので、調査のしようも無いから普通に職場に行く事にした。リボリアムは一兵士であるので、こうしてちゃんと通常業務しないと給料が発生しない。

 給料が発生してくれないと、このバカ高くも居心地良い賃貸を引き払わねばならないのだ。これを同僚に一度ボヤいた事があったのだが「いや引き払えよ」「あそこに住む必要あんのか」と斬り捨てられたので、二度と奴らに風呂は貸してやらないと心に決めている。


 道行く人達に挨拶しながら兵舎へと向かうと、なんだかざわついている。近くの兵士友達を呼び止めて聞いてみる。


「リッキーおはよう。なんかざわついてるな?」

「お~う、リボリー。聞いて驚け、帝都バンジナからついに近衛銃士ピストリアがお出ましだってよ!この街に!」

「え、本当!?来るの近衛銃士!?」

「……っつう噂だ。俺もよく知らん。」

「なぁんだ噂かぁ。どっから出てきた話?」

「トマック坊ちゃん。」

「う~ん坊ちゃんかぁ。50/(フィフティ・)50(フィフティ)って所だなぁ。」


 尊敬する友人に対してもこういうところはドライだ。リボリアムの性格もあるが、経験則が大半である。……というとやはり薄情に聞こえるが、違うのだ。


 兵士になる前はトマックの付き人として、彼が聞いた怪しげな話を確かめるためジンナと3人、街中走り回っていたものだ。大半がガセで徒労に終わっていたが、中には事実のものや、ある意味事実と言えなくもなかった事もあり。今にして思えば『検証は大切である』とリボリアムに実感させる思い出であった。


 そんなわけで一応、好意的な目線の評価なのである。


 リボリアムとしては、本当に近衛銃士が来るとなれば願ったりだ。あの光の結社モグログなる組織が現れた以上、取れる手段は全て取りたい。例えば帝国最強の戦力、千の兵士と同等の力を持つと言われる近衛銃士に来てもらえれば、捜査を頼むなり、兵達を鍛えて防衛力の底上げを計るなり……近衛銃士というのは武力のみならず、頭脳も高水準であることが条件だ。彼らの内一人でも来て貰えれば、何をするにしても無駄にはならないはずである。


「で、ただの噂で、なんで皆こんなにザワついてるの?」

「そらお前アレよ。近衛銃士だからだよ。どんなヤツなのか、どんぐれえ強えのか、そのあたりの話で持ちきりよ。」

「あ~~ね~~~~。」


 リボリアムは、わかったようなわからないような同意をした。決して「まぁ一番は俺だけど」などと自惚れてはいない。実際生身での実力は大したことはないのだから。


 準備が出来たら、皆揃って訓練場に整列である。


「よぉし、出発!!!」


 部隊長の号令で、リボリアム達ボリアミュート守備隊は出発した。



    *





ちょっと短いですね。でも切りが良いので。

アバンなのでね。

次回更新は水曜日0:00にしたいなぁ!!!!

でももしかしたら木曜日0:00になるかもなぁーー!!!!

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