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特捜騎士リボリアム  作者: 鈴木りゅう
一章:特捜騎士誕生編
14/53

第三話「疾走する鋼鉄の騎馬!」1




お待たせしました。

第三話スタートです。

なんとか全3回くらいでまとめたい。




 悪の秘密結社「モグログ」の出現。


 そしてその野望の一歩を粉砕したリボリアム。


 平和を得た帝国に再び、大きな戦端が開かれようとしていた。



 無事に帰った領主サルトラは、トマック、アンザイ、嫡男ちゃくなんマサキと妻ケイリア、執事、リボリアムを交え、話し合いの場を設けた。


「まずは、おめでとうと言っておこう。リボリー。」

「はっ」


「父上、マザーと知り合いだったんですね……。」

 トマックが感心するような声色で言う。


「ああ。だがリボリアムがマザーの子だったというのは、私も初めて知ったことだ。マザーとは昔、アンザイと二人で知り合い、様々な事を教わったが、領主を次ぐことを意識してからは、あえて離れていた。マザーに頼り切りにならないようにな。」

「そうだったのですね……」


 軽く言葉を交わしたところで、嫡男マサキが話に入ってくる。

「父上、僕は今回の顛末が、まるでわかりません。マザーとは?」


「うん……そうだな、おとぎ話にあるような知恵の木の賢者と思ってくれ。広い知識を持つが、自分では動けない。

 この大地には、そのマザーと同類の者が、全部で5人いるらしいが、私もその場所は知らん。」


 マサキは責めるような揶揄からかうような目で、トマックに笑いかける。

「……ずるいぞトマック、この頃どこかに消えていくと思っていたら。」


 トマックは申し訳なさげに笑って返す。

「兄上、身体弱いから……マザーのとこに行くの、結構長いぜ?」

「でもなぁ、そんな面白そうな事を、僕だけ知らなかったなんて。」


 軽く笑いながらサルトラが言う。

「まぁ、マサキにはいずれ対面させようと思っていたんだ。それよりも、今後のことだ。

 リボリー、奴ら……モグログという連中について、何か知っているか?」

「いいえ、俺も初めて知りました。魔獣をあんなたくさん、自由に操れるなんて。

 1つ言えることは、あのアイネグライブという男やサズーラは、俺のBRアーマーでも容易には勝てないだろう強敵ということだけです。」


 アンザイが唸る。

「ううむ、これはえらいことだぞ。ワシでも刃が立たんほどの連中がごまんといて、帝国中を狙っているのだとすれば!帝都の近衛銃士ピストリアを頼るにしても、帝国全体は補いきれん……」


「うむ……。

 連中の目的は、神の復活と言っていた。すなわち、我々にとっての悪魔……マザーの言い方をてれば、『魔族』ということだ。リボリーは魔族についてどれほど知っている?」


「はい、サルトラ様。魔族は、この世界の裏側の世界……魔界と呼ばれる世界にいる種族です。魔界はそのすべてが魔力によって出来ていて、普段は魔族も、意志のある魔力の塊……魔力が命として動いているもの……と言われます。」


その言葉に、皆が呆気にとられる。トマックが代表するように、わけがわからないと声を上げた。

「意志のある、魔力!?」


「魔族がなぜこの世界にこだわるのか、確かな原因はわかりません。魔界からこの世界に来るには、主としてこちらから呼び寄せる必要があり、多くのエネルギーを使う必要があります。人の……命を使うこともあるようです。」


 リボリアムの言うことに、思い当たることもある……といった顔をする面々。つまり「命を使う」とは、生贄の儀式ということだろう。いかにも悪魔のためにしそうなことであった。


 気を取り直してサルトラが言う。

「モグログ……やつらが何故、魔族を復活させようとしているのかはこの際横に置く。問題は奴らをどう殲滅するかだ。受け身になっては被害が増える。かといって、連中の根城を叩くには捜索の時間が必要だ。どうするか……」


「父上。よろしいですか?」

 問題提起に手を上げたのは、嫡男マサキだ。


「マサキ……何かあるか?」


「今回、ボリアミュートを襲った魔獣、そして鉱山街ボミロスに集結した魔獣とキメラ魔人という怪物、どちらも大量と聞きます。そして同時に、その多くを失ったはずです。

 つまり敵は、戦力低下が著しいはず。」


「……即座に大規模な動きはないということか?」


「おそらく。そしてモグログの根城ですが、帝国でも反骨心の強い領の貴族が提供していると見ます。」


「ああ。それは私も思っていた。帝国領は、この大地のかなりの部分を開拓している。完全に手つかずなのは海と、そして我が領土の森くらいと言ってもいいだろう。細かに分からぬ場所はあるかも知れないが、大規模な集団が秘密裏に潜む場所などそうそうあるまい。となれば、人員は帝国内で確保・運用されている……と見るべきだ。」


「はい。当面は治安維持や復旧に勤め、モグログに関しては大規模に捜索するのでなく、領内なら不自然な事件、話題を中心に少数で探っていくのが、効率的かと。」


「うむ。……リボリー、お前はどう見る?」

「特に、異論ありません。今回の戦いで、俺のBRアーマーも改修しています。まだ数日は戦えませんが……、そういうことでしたら、俺が奴らを探します。」


 リボリアムの答えに、当面の方針は決まった。


「わかった、いいだろう。しばらくは領としては何も支援はできんが、近々(きんきん)に通せる手を考えている。それまでは、すまんが自費でたのむ。」


「…………え?自費、ですか…………!?」

 思いもよらない一言に、リボリアムはほうけた顔をした。



    *



第三話「疾走する鋼鉄の騎馬!」



    *



「…………え?自費、ですか…………!?」

 リボリアムの「信じられない」という一言に、領主サルトラはぐっと眉根を寄せた。


「んん……何せこことボミロスとで被害が多くてな。領にダメージを与えるという意味では、奴らの目論見もくろみは正しく成功している。連中は無論、帝国法的に極刑ものだが、個人的にも決して許さん。いつか全員ブ……ぶ……帝国の名の下に裁きを下す。」


 机上に山積みになった書類を指で叩くサルトラの苦々しい顔を見て、リボリアムも何も言えなくなった。「ブ……」のあたりで息子達の顔をチラチラ見て言葉を改めるくらいの理性は残っていたようだが。

 リボリアムは何とも言えない気持ちで頷いた。


 皆が紅茶を一口舐めたところで、サルトラがまとめに入る。

「差し当たって、注目すべき件などあるか?」


 ここで、それまで黙っていたトマックが「あっ」と声を上げた。


「行商人さんが話してたんだ。中央山地の村に、奇跡の聖女様がいるんだってさ!」


 ボミオスから帰って2日、街は復興が始まり出している。トマックは帰って早々街中を見回り、人々の様子を見てきていた。その最中、そんな噂話を聞いたのだ。


「……聖女?シャロット教か?」

 聞き慣れない話に、サルトラはとりあえず広く知られている宗派を挙げた。


「たぶん、違うんじゃ?シャロット教だったら、神殿の人が知ってるはずだし……。」

「ふむ、確かにな。……トマック、いい情報だが、言葉遣いは改めろ。」

「あっといけね、じゃない……失礼しました、父上。」


「うむ。ではリボリー、詳しい話はトマックから聞いて、資料をまとめて提出してくれ。その後、調査を命ずる。」


「はっ!」

 リボリアムは守備隊式の敬礼をし、その場は解散となった。



    *



 暗闇に小さな光が舞う空間で、一人たたずむ黒衣の男の姿があった。


 モグログの首魁、闘神官アイネグライブである。


 じっと動かないその姿の横から、しわがれた老婆の声がかかる。

「……闘神官(とうしんかん)殿。」


「……巫女モラド。わかっております。サズーラは、散るべくして散ったのです。……しかし、開座(スローン)のその先を共に見るという願いが、叶わなくなった。」


「もとより我らの道程は、楽なものではありません。近衛銃士ピストリアにも匹敵するはずの上級キメラ魔人が、よもや力の全てを持ってしても届かぬ敵となれば、かの御仁こそまさしく……。」

「巫女モラドの予見した障害。いかにもです。取るべきあらゆる手を尽くさねば。」


 二人の話す空間に、もう一人。重い靴音を響かせ、誰かがやってきた。

「であれば闘神官殿、巫女殿。我より一つ、お話が。」


「む……?」

 アイネグライブが振り返る。

 そこに来たのは、白い衣を大柄な身体にまとった者。鉱山街での戦いで、脚に剣のような棘をいくつも生やし、リボリアムに襲いかかった上級キメラ魔人の一人である。


 …………


「───予言者の聖女?」

 暗がりで足下を仄かに照らされながら、アイネグライブは聞き返した。


「は。ヴァルマ領の山中、癒しの奇蹟とやらで噂になっております。が、凶事を予言することもあるのだとか。

 ……巫女殿は、御後継をお探しと伺っております。」


「なるほど……授かりし者か。であれば、いかがか?巫女モラドよ。」


 振られた巫女モラドは、大柄な男の目を見て問うた。

「その者、歳の方はおいくつか。」


「は?はぁ、ガンドマと申します、巫女殿。正確に数えてはおりませんが、50は超えておりますかと。なにぶんキメラ魔人となってからは、歳月があまり意味を為しませんゆえ……。」


 その言葉に、巫女モラドは無反応だったが、アイネグライブは首を傾げた。


「……ガンドマよ。今、巫女殿は……()()()()()歳を聞いたのではないか?」


 それを聞いて、慌ててガンドマは言い直した。


「は……はぁ!?こ、これは失礼を……!

 直接見てはいませんが、少女という噂以外はありませぬ。悪評もないため、確実かと……!」


 巫女モラドは、慌てるガンドマを前にしてただ静かに、その情報を聞いて、一言。


「大変よろしいでしょう。」

 そして無数の皺が刻まれた老婆は、鷹揚に頷いた。


 巫女モラドの返答を聞き、改めてアイネグライブが指示を出した。

「では命じる。削ぎ取る者ガンドマよ。その村に赴き、聖女をさらえ。しかしそう手勢はつけられぬぞ。」


「承知。問題ありません……此度、適任の者が、下位キメラ魔人に一人。」

 アイネグライブが頷く、それを確認したガンドマは、来た時と同じように重い足音をさせて去っていった。


…………………………


 暗闇に二人きりとなり、アイネグライブは巫女モラドに向き直った。


「……同志が失礼を。いささか至らぬ点はあれど、奴自身もその自覚あるからこそ、肝心な事柄には思慮を重ねてから臨みますゆえ、ご心配はいりませぬ。」


「……気にはしておりません、可愛らしいものです。ただ、懸念は一つ。例の……」


「金鎧の戦士……リボリアム。まさか、奴が絡むことはないかと思いますが。念のため、ガンドマには言い含めておきましょう。」



    *





次回更新は今週中、水木あたりでいきたいですね。


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