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特捜騎士リボリアム  作者: 鈴木りゅう
一章:特捜騎士誕生編
12/53

第二話「モグログの魔手」4



4で終わらんかった……

0時投稿もできんかった……


───すまぬ



    *



 処刑場から響いた声を聴き、リボリアムは覚悟を決めた。


 一声「ふんっっ」と気合を入れ、思い切りジャンプした。


 彼のいた位置から処刑場まではほぼ断崖絶壁、高さにして30mほど。BRアーマーの性能なら問題ない筈なのだが……何せ怖い。

 夜に高所から飛び降りるなど、リボリアムでも躊躇した。親友のためとはいえ、一声気合を入れなければダメだった。


 その臆病を鎧の中に留め、端目には迷わず飛び降りたように見えた。


「む!?なんと!」

「飛び降りた!?」


 その様子に、黒鎧のアイネグライブ、忍び寄るものサズーラも含め、その場の誰もが驚愕した。

 

 しかしアイネグライブはいち早く立ち直り、素早く指示を飛ばした。


「皆の者、『爆破ボルムス』だ、撃てッッ!!」


 号令に素早く反応したその場の10人あまりの者達が一斉にリボリアムを注視し、次々に目が輝く!ちょうど着地するところであったリボリアムが、その周囲が次々爆発し、破裂し、多数による魔法の相乗効果で大きな爆炎を上げる!


 ドカドカドカドカァァン!!!ズワァーーーーーン!!!


「リボリアムー!!」

 それを見ていることしかできなかったトマックは思わず叫んだ。



 センサーヘルムの奥で、マーカーが動体反応を捉えた。



 爆炎が収まるのを待っているモグログ達。その中の一人、アイネグライブに『闇の目』と呼ばれていた者が、鈍い音と共に突然吹き飛んだ!

「ぐげぇっ!!」

「「「「!?」」」」


 モグログの一同は何事かと息を飲んだ。さらに一人、そしてもう一人。


 ドガッッ

「ごわっ!?」

「む!?」

 ガキン!!


 何かを察知し、素早く盾を構えてその『何らかの攻撃』を弾いたのは、闘神官(ウォリアモンク)アイネグライブだった。彼はギロリと炎の先を見つめる。

 爆炎と煙が晴れるとそこには、折れた弓のようなものを構える、無傷の鎧戦士の姿があった。


 リボリアムがさらに一発、トライラム・スリングから弾を放つ。

 モグログの一味がまた一人、うめき声を上げて吹っ飛んだ。

 トマックは、友人の無事を確信した。

「リボリアム!」

 


「マノ・ターバイン!」


 BRアーマー、その腰横の風車が高い唸り声を上げ、リボリアムは地を蹴った!


 モグログの一味は、リボリアムが地を蹴ったのを見た。

 見たが、それが信じられない速さでこちらに向かい、あっという間に自分達の間合いに入り、攻撃を繰り出していくのまでは捉えきれなかった。


「うお!?」「ぐあっ!」「ぎゃっ!!」「げぶっっ」


 その場にいた10人余りのうち、3人は『正体不明の飛び道具』で、5人が超スピードの攻撃で地に伏した。その場にいた誰もが信じられない事態であった。


「ぬぅぅ、怯むな!動きを止めろ!」

 再びアイネグライブの指示で、3人のモグログ一味が飛び掛かる!

「終結せよ、モグログのともがらたちよ!!」


 次いでアイネグライブは叫び、空に赤い雷を放った。


「闘神官様のご指示だ、向かえー!」「ギッギギ……!」「コカカカー!」

 すぐさま鉱山街のあちこちから、モグログの構成員が、彼らに使役される魔獣達が集まってくる。


「ぐ……うおおおおおーーーーー!!!」

 取り押さえられたリボリアムだったが、組み付かれたまま振り回し、引きずり、引きはがした!


「キキャァー……なるほど、あなたがリボリアム……帝国最強の戦士に匹敵するというのも、あながち言い過ぎではなさそうだ。」

「お前は!?」


「モグログがキメラ魔人、忍び寄るものサズーラ。……あなたが先程吹き飛ばした8人。お見事でしたが残念、そちらのアイネグライブ様を含めたここにいる12人は、我らが神の寵愛を受けし上級キメラ魔人なのです……。」

 その言葉に応えるかのように、リボリアムが倒した筈の面々がゆっくり起き上がり、リボリアムの周囲に立ちはだかった。

 リボリアムのいずれの攻撃も、ただの人間であったなら即死している威力のはずだった。事実、宿場町で相手をした二人のキメラ魔人は、リボリアムの一撃で致命傷を負っていた。

 周囲の12人がいずれもあれと同類というのなら、キメラ魔人としての本性を現していないにも関わらず、その強度は宿場町の二人とは雲泥の差。……もっと言えば、キメラ魔獣ネガコルポスに相当するか、それ以上ということになる。


「………………」


 リボリアムは、センサーヘルムの表示を見る。アクティブタイム……BRアーマーがその機能を維持し続けられるのは残り11時間。出力は現在20%、ネガコルポスと戦っていた時と同じである。出力を上げれば、目の前の上級キメラ魔人とやら達とも有利にやりあえる筈だ。だが出力を上げたり、マノ・ターバインなど各種機能を使用するとその分残り時間の減りは増してしまう。

 

「…………」


 だが、リボリアムは残り時間が減ることに躊躇しているわけではない。最適な戦略を考えているのだ。

 そして、方針は決まった。


「モグログ。お前たちがどれほど強力だろうと、この俺の相手じゃないな!」

「な、何!?」

 周囲がざわめく。モグログの一味にとっては、侮辱そのものの言葉である。


「相手になってやる……来い!」


 その一言を皮切りに、全員がリボリアムに殺到した!

 

「ふぅぅん!!」

 サズーラが腕をしならせ、打ち込んでくる!


 センサーヘルム内の出力表示、その数値がどんどんと上がっていく。


 迫るサズーラの腕鞭……その他にも、腕ほども伸びた鋭い爪の女が、細剣レイピアのごとき棘がいくつも生えた脚の男が、紫色の毒汁滴る牙を剥く女が、大口の中から飛び出す太い舌の男が。


 金色の鎧に迫る!


 「てぁぁぁぁぁーーーッッ!!!!」


 リボリアムはその全てを右腕で、左腕で、強固なBRアーマーの装甲で防ぎきる!


 噛みついた毒牙の女を右手で掴み、剝がし、舌を絡みつかせてきた男に投げ飛ばす。

 棘脚の男は左腕で殴りつけ、突き刺さる事の無かった爪女の爪を叩き折り、未だこちらを打ち続ける腕鞭は自分の腕を絡ませ、引き寄せ、その鼻頭に頭突きをかます!


「ぐはっ! ……つ、強い!」


 思わずサズーラが呻く。5人も相手取ってなお圧倒してくる姿に、モグログの一味は初めて緊張を覚えた。


「こちらから行くぞ、トライラム・キャリバー!」

 センサーヘルムの出力表示は、60%。さらにリボリアムは左腕の多機能兵装『ヴァリアブル・トライラム』を変形させ、サズーラに迫る!


 そこへ、闘神官アイネグライブが盾を突き出し割り込んできた。

「ぬぅぅんッッ!」

 カァンと高い音を立てて、トライラム・キャリバーが防がれる。

「む!?」

「ヌゥゥ~~、大した力だ。だが、貴様のいいようにはさせん……!」


 互いに一歩引き体勢を整えると、今度は剣同士で打ち合った。


 ガキィン!


 そのまま2度3度と剣を打ち合う。命の取り合いであるが、アイネグライブは不敵に笑っていた。

「剣の腕そのものは並だな!ただ振り回すだけでも強かろう、修練も真面目に積んでいよう。だが、それだけではッッ!!」


 バシィン!


「ぐ!?」


 アイネグライブの振るう禍々しくも美しい剣が、BRアーマーを切り裂く!

 リボリアムにダメージは無かったが、受けた剣の衝撃に後ずさった。目立った傷こそついていないが、剣の通った痕跡が筋のようについていた。


「……!」


 闘神官(ウォリアモンク)アイネグライブ。恐ろしい実力であった。リボリアムに一太刀浴びせた彼は、さらに言葉を紡いだ。


「そして最大の弱点が、貴様は一人であるということだ!」


 その言葉に辺りを見回すと、街中に散らばっていたモグログの構成員、そして魔獣達が集結していた。

「リボリアムとやら。貴様の力は凄まじいが、その動きいつまでできるかな?……『一極旋風(ソートネィド)』!!」


 アイデグライブが剣を突き出すと、羽虫のようなエネルギーが渦巻き、猛烈な竜巻となってリボリアムを襲った!


「うぉあっっ!?」


 リボリアムはもがくが、風で体が持ちあげられてしまっては成す術がない。羽虫のようなエネルギーはBRアーマーの各所で炸裂し、火花が上がる。

 竜巻に押し飛ばされ、処刑場から遠ざけられてしまった。そして周囲から滝のように、魔獣とキメラ魔人が襲い来る!


「く、……このままでは、まずい……プラズマモード!」


 出力を強化していた影響で、アクティブタイムはどんどん短くなってきている。アーマー出力を20%まで落とし、代わりに左腕のトライラム・キャリバーをプラズマモードにして、敵の群れを迎撃する。

 次々襲い来る魔獣、魔人。左腕を振るうたびに、一体また一体と両断されていく。だが……



 アクティブタイム、残り8時間。

 体感では周囲の魔獣達が減ったように思えない。視界が敵で埋まっていて、周辺の景色が見えない。

 


 残り5時間。密度はかなり減ったように思える。しかしまだ敵は多い。多すぎる。



 残り2時間。プラズマモードはこれ以上使えない。出力をほんの少し上げて両腕を、全身を使って敵に立ち向かう。




 そして───






次の第二話5で今度こそ終了です。

本日中投稿予定です。



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