バイト開始
夜。私の部屋に来た麗華に事情を話す。
「って事なんだけど麗華どうする?」
「…やる」
「やるんだ。即答するのは少し以外」
「友達だし」
「え?」
「私のクラス知らないの?」
そう言われて気がつく。麗華のクラスは確かに隣だった。
「あーそうなんだ。確かにクラス同じなら仲いい人もいるか」
「普通は数人はいるけど。ここ数日学校に来ていないとは思っていたけどそんな事になっていたなんて」
「詩織についていたのによくわかるね」
「廊下とかで全然見かけなかったし」
「へーそっか。じゃあ明日の20時学校に集合で」
「学校なの?」
「うん。そこに連れて行くんだって。いざという時の為に田原さん達と清水先生がスタンバイしてるから流れに任せて好きにやってだってさ」
「清水先生がいるなら任せられないの?プロの方が確実でしょ」
「それ私も聞いた。清水先生は生徒には手を出さない主義なんだって。だからいざってときは私と氷冷姫さんを守るのに専念するんだって」
「そうなんだ。本当にいざってときは田原さん達が何とかしてくれるのよね」
「そういう話」
「わかった、なら出来る事はやろう」
「うん。それで報酬はどうする?」
「借りでお願い。多分詩織返してもらう事になるけど」
「そう言うと思った」
そして迎えた翌日20時の学校。夜中の学校は気味が悪いのかと思ったけれど、普通に電気がついているし暖房をまでついている。先生までいるから外の方が不気味だったくらい。
「本当にノープランだけど何とかなるの?」
「なるんじゃない?除霊のお札はあるんでしょ。それなら私が足と手を凍らせてあげるからそれで貼ればお終いでしょ」
「…それ凍傷になるよね?」
「なるね。でも死ぬよりましじゃない?」
「できれば傷付けないで何とかしたいんだけど」
と控えめに訴える麗華に対してらなは首を振る。
「それはむずくない。威力低くしたら拘束できないし。てか今話す事?」
「本当だよね。全部こっちにお任せで打ち合わせすらしてないし」
「お話し中の所申し訳ありません。来ます」
え?もう?殆ど何も決まっていないけど?そんな私たちの困惑を他所に教室のドアが開き刀を持った人が入って来た。普通に入って来るんだ。なんか窓を割るとかドアを切り裂いて入って来るのかと思ってた。
制服を着ている彼女は確かに私達と同じくらいの年齢で見覚えがある気がする。けど…。
「…やつれてる」
麗華が呟いた通り、雀さんは目には隈があり頬は少しこけていた。長い髪はぼさぼさで広がりきっているし、肌は乾燥している。そのくせ目だけはギラギラしている。
「…ここに来れば刀場屋の当主を切れると言われたのだが騙されたという事か?」
知りません。という事で、田原さんの方を見るとこちらの意図を汲んだように話し始めた。
「少し違いますね。当主に合わせるとお伝えしたはずですが」
そのくらい先に教えてよ。てか来ているの?
「こちらにとっては同じことだ。それで?何処にいる?」
「現当主は此処にはいません。無理矢理眠らせているので」
何してんのさ。
「そうか、約束を守る気はないと。では無差別に切り殺す」
「それでは後はお任せします」
え?この状況で振るの?刀抜いてこっちに向けて来てるんだけど?
「君たちは何者だ?子供がこんな時間に出歩くな。切られたくなければすぐ去れ」
無差別に切り殺すって言ってたのに違うんだ。取り合えず話してみよう。
「えっと初めまして。私達はあなたを成仏させるために来ました」
「…こんな子供に危険な事をさせるとは信じられん。しかも時間を考えろ。まださほど遅くはないがこの時間から除霊などさせればいつ終わるかわからん。悪い事は言わん。今すぐやめなさい。お金に困っているとしてももっとまともな場があるはずだ」
どうしよう。凄いまともだ。理性的な妖刀って何それと思っていたけど納得してしまった。
「雀は友達なんです。解放してもらえないでしょうか」
「この子は幽霊を見る事は出来ないはずだが」
「生前の友達です。いい子なんです。解放してください」
「こちらとしても、罪のない子供を傷つけたくはない。だが!恨みはどうでもいいと言うのか!妻を殺され名誉を奪われた恨みを!せめて無関係な人間は巻き込まず、刀場屋の血筋であっても当主一人で済ませようと言っている!最後だ当主を連れてこい。そうでなければここにいる全員を殺す。一応言っておくが妖刀だ、霊であっても斬れるぞ」
何か引っかかる。母は本当にこんな危険な任務にらなを巻き込んだのか。




