らなさん?どういう事です?
らなさん?つい数時間前の感動的な別れは何だったの?それとも午前中だけ学校に来たの?そんな事を考えながら声を掛けようとしたけれど、既に別の子と話していた。転校してきたばかりのらなは当然まだまだ人気で簡単に話し掛ける事なんて出来なかった。
お昼もクラスのグループの一つに誘われて一緒に食べていたと聞いた。先に誘われてしまったと理奈が愚痴っていた。私は眠気にあらがえず、お昼は食べずに保健室で寝させてもらっていた。勿論、本当に具合の悪い人が来た時には起こすようにお願いした上で。
麗華によるとらなは昨日の事なんて何もなかったかのように普通に振舞っていたとの事だ。強いなあ。私なら詩織に振られたらひと月は凹む。勿論らなも傷ついているのだろけれど、それを表に出していない。それが凄い。私ならきっとそれは無理だ。
詩織も昨日らなを振った事なんて無かったかのように普通に振舞っている。ただ偶にらなの方を見ている。やっぱり気になるみたい。まあ当たり前だよね。
結局眠気と戦いながらの一日になった。
「ねえ、らなが今日話したい事があるって」
放課後麗華が話し掛けてくる。隙を見てらなから伝言を頼まれたみたい。まあ、幽霊なら誰も見れないしね。
「わかった。いつでもいいって伝えて」
頷くと去っていく麗華を見ながら考える。やっぱり帰るって言っていたのにまだいる事だよね。何かトラブルでもあったのかもしれない。私に何か力になれる事があればいいけど。
「昨日、どうだった?」
詩織との帰り道。少し迷いながら話を振る。私がらなと引き合わせたのだから聞かないと変な気がする。昨日あった事は聞いているけれど詩織は知らないと思っているだろうし。
「えっとね、私らなとは知り合いなの」
「そうなの?」
「うん、小学校に入る前くらいだったはず。公園でいつも遊んでいたの」
「よく覚えていたね」
「凄い綺麗な目をしていたから。それにらな急に居なくなっちゃったからね」
「引っ越しって事?」
「昨日聞いたらそう言ってた。当時は明日からもう遊べないってだけ言って大人の人に連れて行かれちゃったから」
「そうなんだ」
「だからもう一度会えて嬉しかった。昨日はあの後遊びに行ったの」
「そっか良かったね。楽しかった?」
「うん」
「なら良かった」
いつも通り詩織と帰ったけれど、余りは話は弾まなかった。らなの事がどうしてもちらついてしまうし、失恋したという思いもあるから。
麗華も話を聞くみたいでいつもとは違い私の方についてきた。リビングで待っていると17時過ぎにチャイムが鳴る。勿論らなだった。昨日と同じように招き入れる。
「らな今日眠くなかった?私は眠くて眠くて。もう何回眠りそうになっちゃったか」
「あーうん、私も眠かった。気合で乗り切った。…それで話があるんだけど」
「うん。何?」
「私も聞いていい話?」
「勿論。むしろ聞いて欲しい。ごめん、麗華の事も誘ったつもりだった」
「それでどんな話?」
「えーとね?うん。あーそうその」
言い淀んでいる。言いにくい事みたい。何だろう。少し待つと決意を固めたようにこっちを見てきた。
「駄目って言われた!」
「え?」
「おばあさまに帰るって言ったら駄目だって。ふざけるなって言われた!」
「…どういう事?」
「あ、おばあさまはね私のおばあちゃんの事じゃなくて里の長の事ね」
「成程」
「でね?おばあさまに帰るって電話したらね、ガチギレされた」
それは聞いたけど。
「他にも候補がいた中で私が勝ち取ったのにそれを放棄するのかって。それもお母さんの分も頑張るって言っていたのは嘘だったのかって?」
「お母さん?」
「私のお母さんね、昔里の掟を破って駆け落ちしたの。行きついた先がこの町で私が生まれたの。それで詩織とも会ったんだけど、里に見つかって連れ戻されちゃったの」
なるほど。それで急にお別れを告げていなくなったと。
「お母さんが里に迷惑を掛けた分、私が頑張るから交流生になりたいってアピールしてきたのは何だったんだって」
「あーうん。それはね」
「それにこの交流には色んな人たちの協力で実現してるんだって。それで本当に帰るなら納得できる理由を説明してみろって」
「なんて説明したの?」
「出来ないよ。説明なんて。だって交流先がこの町なら詩織にまた会えるかもって思って希望したら本当に会えて勢い余って告白しちゃって振られたから帰るなんて言えない」
それはそう。本当にそう。そんな説明したらどんな反応されるのか。
「えっとそれでどうするの?」
「帰るのはやめる。一年間交流生として頑張る」
「そうなんだ」
詩織とは気まずくなりそうだけど。仕方ないけど可哀そう。出来るサポートはしよう。
「それさ、もし断った場合はどうなるの?連れ戻されるの?」
「うん、連れ戻される。それだけじゃなくて氷漬けにされちゃう。100年間」
「100年!?それ生きているの?」
「それは大丈夫。それよりもやばいのは意識があるまま凍らせられるって事」
「意識があるまま?それって大丈夫なの?」
「全然大丈夫じゃない。この罰を受けたら間違いなく発狂する」
「まあそうだよね」
「おばあさまは里で最強なの。誰も逆らえない」
「そうなんだ。大変だね」
「まあ、普段は優しいから。私の熱意買って交流生に選んでくれたし」
「一年間こっちにいるならさ、前向きにとらえて友達作ったりして学校楽しみなよ。私も出来る事はするから」
「友達殆どいないのにサポートなんて出来るのー?」
「無理。人間関係構築に関しては麗華に聞いて」
「潔いね」
「無理な物は無理だから。他の事なら出来る事はするから」
「ありがとう。そうする。そうだよね!せっかくの機会だもんね。色々楽しまなきゃ。まずは詩織ね」
「え?」
「折角再開したんだから前よりも仲良くならないと。それに1年いるならまだチャンスあるかも!」
すごい。振られたのに気まずいとか何もなさそう。その上まだ狙っているの?このバイタリティ見習いたい。
「取り合えず友達もっと作って色んなとこ遊びに行きたい!」
「うん、いいと思う。麗華協力してあげて」
「あんたも協力しなさいよ」
「友達の作り方わかんない」
「…よく今までハブられずいたわね」
「まあよくわかんないけど、取り合えずナ組の皆と話してみるわ」
「それがいいよ。皆優しいから」
らなが一年間残ると聞いた時は大丈夫かなって思ったけれどこの様子なら大丈夫そう。というか私よりも沢山友達出来そうだし。
紗月が人間関係を放棄しているのは苦無白関係なく本人の問題です。
1日空いてしまいましたがここからまた隔日更新になります。次の投稿は16日を予定しています。




