告白します
声と共に部屋の空気が暖かくなった。
この声は聞き覚えがある。というか殆ど毎日聞いている。この声清水先生だよね?そう考えながら振り返るとそこには本当に清水先生がいた。
「氷冷秘さん。落ち着こうね」
氷冷秘さんはハッとした顔をして私から少し距離を取った。
「すみません。もう大丈夫です。紗月さんも本当にごめんなさい」
「気にしないで。わざとじゃないんだし」
それよりも清水先生がこの場にいる事が気になる。氷冷秘さんに冷気を抑えるように言っていたという事は知っているって事だよね?色んな事を。
「あの先生。どうしてここに」
「実は私も裏稼業をやっているの」
嘘でしょ。こんな身近にいる事あるの?私はこれどういう気持ちで受け入れればいいの?優しい清水先生が裏稼業しているの?私達に向ける笑顔は嘘なの?
ていうかお母さん教えてよ。
「あ、お母さんは責めないでね。サプライズって事で内緒にしてねって言っておいたの」
そうなんですか。確かにびっくりしたけど。でも氷冷秘さんの事だけで私のキャパはオーバーしかけてます。
「そうなんですか」
「そうなの。隠している訳じゃないし見せてあげるよ私の力」
そういうと清水先生は笑顔でペットボトルを取り出した。そして蓋を開けると水が飛び出した。飛び散ったのではなく、塊のまま空を浮いている。そして先生の周りを回り始めた。
「これが私の家の力。水分を操るの。超能力の一種よ。清水さん家は死水使いってね」
「はぁ」「えっと」
それなら佐藤さんは砂糖使いで伊藤さんは糸使い何だろうか。林さんや森さんは木を生やせるって事にならないかなあ。そもそも全ての清水さんが死水使いなんてことは無いだろうし。後、今清水さんとか小清水さんはどうなるの。
「反応薄くて先生恥ずかしいんだけど」
「あ、ごめんなさい」「すみません」
「謝らないでよ。余計悲しくなるわ。まあそれは良いとして二人は何で揉めていたの?」
どうしよう。素直に話していいのかわからない。そう思っていたら氷冷秘さんが素直に名はし始めた。
「その私が詩織の事で紗月さんを問い詰めてしまって。そんなつもりはなかったんですが」
「詩織さん?氷冷秘さんは詩織さんと知り合いなの?」
「小学校に入る前位の時に公園で会っていました」
それかなり昔じゃん。よく覚えていたね。そしてすぐ気づいたね。凄いよ氷冷秘さん。私なんて小学校のクラスメイトの半分は名前も顔も思い出せない。それより前なら尚更だ。
「あー結構昔の話ね」
「そうですか?私はよく覚えています。詩織は初恋の相手なので」
「え?」「まあ」
初恋?そんな幼い頃に?というか詩織モテすぎでしょ。
「それで、久しぶりに詩織を見て、仲良さそうな苦無白さんにどういう関係なのかと。その、付き合っているように見えたので」
「そうなの。紗月さんは詩織さんと付き合っているの?」
「違います。ただの友達です」
残念ながら。
「そう。じゃあ氷冷秘さん告白すれば」
「え?」「はい?」
「だってずっと憶えているくらい好きなんでしょ。それに紗月さんとの関係が気になるくらいだし」
「そうですね。確かに」
え?いやえ?私にとって困る展開になってない?まあ確かに詩織はいつかは誰かと付き合うとは思うよ。でもさ、それは高校卒業してからで、それまでは私と友達として時間を一緒に過ごしていきたいと思っていた。勝手に思っていただけで、詩織も氷冷秘さんも縛る事は出来ないし、詩織にとっては心を許せる恋人がいた方がいいかもしれないけど。
「そうよ。まずは再開を祝って、交友を深めて、仲良く」
「放課後告白します」
「え?」「うん?」
「ありがとうございます。そうですよね。好きなら告白すればいいですよね」
衝撃の言葉に間抜けな声が二つ。早い。早すぎる。氷冷秘さんの行動力はどうなっているの?え?詩織があなたの事を憶えているのかもわからないのに?
「ちょっと待って。まずは詩織さんが氷冷秘さんの事を憶えているか確認してから」
先生もあせって止めようとしているけど氷冷秘さん聞いてない。思い込むと一直線に進むタイプっぽい。
結局昼休みは終わりそうだし、解散する事になってしまった。
え?詩織放課後告白されるの?
暫くの間少し短めになるかもしれません。すみません。




