約束
チャレンジに成功した後、お昼は外でる事になりカフェに行った。そこで別れて家に帰る。何故か麗華 (れいか)が着いてくる。部屋に入るなり若干にやけた顔で話し掛けてきた。
「で?今日のご感想は?」
「それ聞く為に憑いてきたの?」
「そうよ」
「暇人」
「その通りですけど。あ、違うかもう人じゃないな。で?どうだったの?」
「何が」
「わかっているくせに。胸に近づいていた時、デレデレしていたよ」
「嘘だ。そこまで顔に出ている訳ない」
「まあね。で?どうだった?」
「麗華は今日やる事知っていたの?」
「まあね。詩織が練習しているの見ていたし。だから、気を利かして最初は出て行ってあげたの。でも途中でそこまでする義理ないかなって。まあ、一度様子を見て見ようと戻ったらあのざまだったから手助けしてあげたの」
「ありがとう」
「ついで教えてあげると、あのチャレンジ一時的に流行ったけれどとっくに廃れている。更に言うと乗せるとこまでで終わり」
「マジか」
あのチャレンジ本当に流行っているか謎だったけれど、やっぱり殆ど流行って無かったみたいだ。
「真名瀬さんあたりに適当な事吹き込まれたんでしょ」
真名瀬さんって誰だと数秒考えて気が付く。瑠奈の事だ。
「成程ね。瑠奈ならからかい半分で言うかも」
「あなたクラスメイトの苗字憶えてないでしょ」
「そんな事無いよ」
3分の2くらいはちゃんと憶えている。残りも聞けばわかるはず。多分。そもそも他のクラスの人の苗字を知っている事が凄い。私は元クラスメイト以外は数人しかわからない。
「数秒考えていたみたいだけど?」
「キノセイダヨ」
「まあそれはいいや。で?誤魔化されないわよ」
「瑠奈の事苗字呼びなの?」
「生前名前で呼ぶほど親しくなかったし」
律儀というか真面目と言うかその辺は流石だ。
「そろそろこっちの質問にも答えなさい。どうだった?」
「チッ」
「言うまで憑いて回るわよ」
「詩織はいいの?」
「まあ、最近は安定してきているし」
「そういえば麗華がこの前作ったカクテル・ミュージックの曲だけど」
「話変えない。どうせ大したことじゃないでしょ。カクテル・ミュージック全然興味ないくせに」
駄目か。
「いやまあ、いい匂いがしたよ」
「変態」
「違うから。積極的に嗅いだ訳じゃないから」
「本当?最初に匂いが出てくるあたり怪しいけど」
「本当。そもそもなんでそんな事聞きたい訳?」
「嫌がらせ」
さっさと祓ってもらわなきゃ。この悪霊。
「楽しかった?」
「う~ん。どっちかと言うと何やっているんだろうって困惑と謎の緊張が強かった」
「ドキドキした?」
「まあそれはね」
「なら良かった」
「良かったの?」
「良くはないけど、まあ良かった」
「どういう事?」
「そう言う事」
まともに答える気はないようだ。こいつめ。
「そういえば、私の部屋から持ってきてもらった栞だけど捨てていいから」
「え?なんで?大事なんでしょ」
「私にとってはね。でも紗月には関係ない物だから。邪魔になるでしょ」
「捨てないよ。場所取る物でもないし。他人の大切な物捨てるつもりはないよ。ましてや麗華の大切な物なら」
「そう。ありがとう。…邪魔になったらいつでも捨てていいから」
「わかった。そうさせてもらう」
「うん」
「今度さ、星花さんのお墓参りに行こうと思っているの」
「え?なんで?」
「お世話になったからお墓参りに行こうかと」
「まあいいんじゃない。ひいばあちゃんも喜ぶんじゃない」
「麗華は場所知っている?」
「知っているよ」
「なら一緒に行かない」
「いいけど。いつ行くの?」
「まだ全く決めていない」
「そう。いつでもいいでしょ」
「そうだね。近いうちに行くよ」
誰かと何処かに行く約束をする事なんてあまりなかった。そう考えると私の環境も変わってきている。少し不思議な気分だ。




