変わりたいの
「紗月は将来何になりたい?」
学校からの帰り道。突然聞かれた事に驚いて立ち止まってしまった。最近詩織の会話内容が急で驚く。将来か。それなら決まっている。最近決めた事もある。
「会社継ぐつもり」
「そっか。そうだよね」
「詩織は?」
「まだ色々迷っている」
「そっか」
少なくとも将来の事を考えられるのはいい事だと思う。少しは前を向こうと思えたという事だよね。
「詩織ならやりたいこと何でも出来るし何にでもなれるでしょ」
「そんな事ないよ。私最近これからの事、色々考えているの」
「いい事じゃん。将来なんてまだ決める事じゃないと思うし。ゆっくり考えればいい事だと思うよ。私はまだ行く大学とか全然決めてないし」
「ありがとう。私も大学まだ決めてないな。そろそろ考えないと。私ね、変わろうと思っているの」
「変わるってどういう事」
「決めていない」
正直、反応に困る答え。変わるとは精神的な話なのか見た目の話なのか。まあ見た目の事ならそんなに悩むことは無いと思うし、精神的な話だと思うけれど。
「ごめんね。曖昧で」
「そんな事ないって。変わろうとすることはいい事じゃん」
「間違った方に行っても?」
「詩織なら大丈夫でしょ」
詩織なら間違った方には行かないだろうし、仮に行ったとしても何だかんだ上手くやっていける気がする。だから二重の意味で大丈夫だと思う。
「ありがとう。今はちゃんとした事言えないけれど、私は変わりたい。今の自分より新しい自分になりたいの」
「よくわからないけど、応援するよ」
「ありがとう。私は紗月に変わる私を見ていて欲しい。どんな風に変わっていけるかわからないけど」
「勿論、見ているよ」
「ありがとう。約束だよ」
そう言って詩織は笑った。
「話変わるんだけどさ。やってみたいことがあるの」
「何?やればいいじゃん。難しい事なの?」
「秘密」
「えー。知りたい」
「2人でしたい事なんだけど」
「いいよ」
「何するかわからないのに?」
「確かに。教えて」
「…内緒にしたい」
「じゃあいいよ」
「本当に?」
「まあ知りたいけれど、無理強いはしない」
「ありがとう。次の土曜は空いている?」
「何もないよ」
「じゃあ私の家来られる?」
「いいよ」
「じゃあその日まで秘密でいい?」
「やってみたいこと?」
「そう」
「いいよ」
「ありがとう。汚れてもいい服で来て」
「わかった」
何する気だろう?家で汚れる事って何だろう?
「後、着替えも」
「わかった」
本当に何をする気だろう?
「紗月、紅茶飲めないよね?」
「飲めなくはないけど、好きじゃない」
「わかった」
「紅茶がどうかしたの?」
「秘密」
詩織が何をしたいのか全く分からない。紅茶が関係あるのだろうか?
子供の頃から紅茶の独特の風味が苦手で好き好んで飲むことはない。何とかティーもだいたい苦手だ。好きなドラマの主人公はよく紅茶を飲んでいるから真似した事もあったけど結局飲めずに諦めた。まあ飲まなくても生きていけるし問題ない。
「10時に私の家に来るで大丈夫?」
「いいよ」
「じゃあ待っているから」
そう言って笑顔を向けられると、色々気になっている事がどうでも良くなってしまうから不思議だ。まあ元から詩織からの誘いは断る気はない。不安半分楽しみ半分だ。
変わりたいか。詩織は何を考えてその結論を出したのか。麗華の事が関わっている事は間違いない。
そして変わる私を見ていて欲しいと言ってくれた。嬉しい。本当に。別れるまで後1年も無いけれど、その間は一緒に居ていいという事だろと思う。ただ、少しずつ離れようと思っているから考えているよりも時間は無いかもしれない。残りの時間を大切にしないと。
私も変わろう。少なくとも、詩織と自信を持って別れられるように。悔いのない別れは無理だけど、少しでも詩織と麗華に自信を持ってさよならを言える人になる。まあ、多分人の道からは外れるけれど、少しでも成長したと言えるよう頑張ろう。
次の投稿は明後日の予定です。




