夜中の考え事
その後、詩織の部屋に行き、寝るのを見守った。寝れば少しは気がまぎれるかもしれないと思い私が無理矢理寝るよう進めた。詩織は普段使っているベッドを私に貸して自分は布団を引いて寝るつもりだったらしいけれど、ベッドで寝るよう説得した。普段と同じ環境で寝た方が疲れは取れるだろう。
寝られないかとも思ったけれど精神的にも肉体的にも疲れていたらしくすぐ寝た。詩織には死体を消せば大丈夫と言ったがそんな訳ない。
麗華は行方不明として捜索されるだろう。そうすれば周囲の防犯カメラを調べられこの近くに来ていることそしてこの付近で足取りが消えていることがばれる。麗華の友達として詩織は話を聞かれることになる。来たことを隠すことは難しいだろう。
麗華がこの家に来るまでに防犯カメラに写っていないとは思えない。家族に行き先を告げている事だってあり得る。
この問題は解決手段がない。死体がないことを主張し押し通すしかないだろう。
母によると血を蒸発させる薬を使えばエタノール反応も消せるらしい。その話を信じるしかない。
母に今回の事を隠し続ける訳にはいかない。薬が減っている事はいずればれる。その時まで隠し通すよりも先に素直に話した方がいい。二人きりの秘密ではなくなってしまうけれど大事なのは詩織が二人きりの秘密だと思っている事だ。
この家にも防犯カメラがあるが運よく壊れていた。詩織によると数日前に突然壊れたらしい。まだ、修理はしていなかったとのこと。
残った薬を返すのは明日になって帰るときの方がいいだろう。さすがに夜に歩き回る様子を防犯カメラに撮られたら不信がられる。
…後からこれらの問題は考える必要がないことを知るだが、今の私は知る由もなかった。
それに詩織の精神状態も心配だ。友達を殺してしまった。その痛みは私では想像出来ない。きっと生涯苦しむ事になる。
私に出来る事があればしたいけれど、踏み込んでいい事か分からない。
死体を消すように唆した私が触れていい事なのだろうか。そんな事ばかり考えているとふと、あることに思い当たった。二人の秘密。そう秘密。という事は…。
どうしよう。いやでも。そんな事したくはないけれど。詩織の事を考えたらそれしかないだろう。嫌だな。本当に嫌だ。嫌だ。嫌だ。でもやっぱりそうするしかない。受け入れ難いけれど仕方がない。
詩織が寝ている間、私も寝ようかと考えたけれど、もし起きた時に私が寝ていたら不安になるかもしれない。何しろ人を殺した後だ。パニックになってもおかしくない。
そう考え一晩起きていることにした。幸い詩織は電気をつけたまま寝てしまった。消さなくてもいいだろう。
スマホの充電は一晩持たない。充電させてもらうことにする。許可はもらっていないが、そのくらいはいいだろう。あくびがでる。眠気覚ましでもあれば良かったのだけれど、流石にこんな状況は想定しておらず持ってきていない。このまま何もしなければ眠気に負けてしまう。
これからの事を考えると暗くなってしまった。気が滅入っている。気分を変えるためにも、動画を見る事にする。幸いイヤホンはいつも持ち歩いている。音漏れの心配はない。
最近はテレビの再放送が公式アプリを使って無料で見ることができるので有難い。
気になっていたドラマの1話を見たが余り面白くなかった。毎週録画予約をしてあるけれど、2話も面白くなければ消してしまおう。そう考えながら今度は長寿アニメの最新話を再生する。こっちはマンネリ化気味だけど、安定の面白さだ。
一度、トイレに立った時に、一階に何かの気配を感じた気がした。一瞬だから気のせいだと思うけれど、流石にあんな事をした後なので少し怖くなった。
詩織の寝顔を見ると安心した。
ずっと起きているとお腹が空いてきた。眠気も覚めるし何か食べようと持ってきたお菓子を食べ始めると、止まらずひと箱食べてしまった。考えてみたら夕飯を食べていない。お腹が空くわけだ。
しかし、深夜5時に食べるのは良くなかった。女子高生としては失格だろう。
詩織も起きたらお腹が空くかもしれないと考え何か作ることも考えたが、人の家のキッチンや食材を使うのは気が引ける。
起きてから確認すればいいだろう。そんなことを考えていたら詩織が目を覚ました。