片付け
戻ると詩織は玄関にへたり込み泣いていた。
「紗月…。遅いよ…。もう戻ってこないかもって…」
「ごめん。思ったより遅くなった」
自分が殺した死体と一緒に居たんだ。怖かったし、心細かっただろう。処理を始める前に最後の確認をする。
「詩織、最後にもう一度確認するね。死体は消すということでいいんだよね?これからする事は当然犯罪になるよ。やり始めたら引き返せない。止まるなら今だよ」
詩織は私がいない間も悩んでいたらしいが、結論は出ていたようだ。
「うん…。大丈夫…。お母さんたちに迷惑かけたくない…。本当に証拠は残らないんだよね…」
「大丈夫だよ。それともう一つ確認。本当に手伝ってくれる?私一人でもなんとかするけど。無理しなくていいよ」
「手伝うよ…。私がしたことだし…。紗月にだけやらせることなんてできない…」
「わかった。ありがとう。そうと決まればさっさと進めよう」
「うん…。どうすればいいの…。山とか行くの…?埋めるの?」
「いかないよ。免許持っていないし。埋めることもしない。外出るのもリスクあるし。説明しても信じてもらえないだろうから見ていて欲しい。大丈夫すぐ終わるから。死体から服を脱がしたいから手伝ってもらっていい?疑問あるだろうけど質問はなしで」
「わかった…」
言いながら気がつく。私この家の中で処理しようとしてるけど、流石に許可取らなきゃ駄目だ。
「…あのさ、死体お風呂場で片付けていい?」
「え?お風呂場?」
「うん。やっぱ駄目かな」
「…いいよ」
「嫌な思いさせてごめん」
「ううん、私のせいだし」
「気にしなくていいから」
自己満足でしかないけれど、二人で麗華に手を合わせる。詩織は小さな声でごめんなさい、ごめんなさいと呟いている。
まずナイフを抜く。何とも言えない気持ち悪い感触が手に残る。次に死体の服を脱がすそうとしたが、二人がかりでも難しかった。仕方がないので私は抜いたナイフで服を切って無理矢理脱がせた。
この時に血の付いた服の一部を詩織に見られないようにしながら隠した。そして二人で死体を風呂場に移した。2人掛かりでも重かった。
一人で運んでいたら途中で落としていたかもしれない。手伝ってもらえて良かったと思う。
バスタブの中に麗華を入れる。そして死体を溶かす薬をかけた。詩織に見せるか悩んだが、見せずに消えたと言っても信じられないだろう。
足を溶かすところを見せて後は自分でやればいい、そう考えて詩織にも見せる事にした。母によると死体だけを溶かし、生きている人間には無害だそうだ。さらに自然にも優しいと自慢していた。
素手でも扱えるといっていたが、さすがに不安でゴム手袋をもらって使った。念のためマスクもした。効果はてきめんだった。
死体は簡単に溶けていき、あっという間に髪の毛一つ残らず消えた。足にかけた液が背中まで伝わり全体が溶けていった。
余りに早く溶けて行ったので思っていたよりもグロテスクではなくなくて安心した。詩織は一部始終みていたが、これならトラウマになることはないと思う。しかも、殆ど使うことはなかった。ボトル半分も使わずに人の体一つ溶かすことができてしまった。詩織は驚いて目を丸くしていた。
私も驚いていた。母に髪の毛や爪を溶かした様子を見せてもらったけれど、実のところ不安で一杯だった。
正直、詩織に大丈夫といった時も安心させるためであり、本当に大丈夫なのかと疑心暗鬼だったのだ。
その後、服とナイフも風呂場に持っていきそれぞれ薬で溶かした。
混ざっても問題ないと言っていたけれど、念のため薬を使うごとにシャワーで薬を流した。麗華は荷物を持ってきていなかったらしく財布やスマホすら持っていなかった。
その後自分たちの服も溶かした。割とお気に入りの服だったけれど仕方がない。部屋の中は特に匂いは気にならなかったけれど念の為消臭しておく。麗華の服の一部は自分の荷物に隠す。
私は詩織の服を借りた。服の事は考えていなかった。一晩泊まるだけだからそのまま寝ればいいかなと考えていたのだ。一度家に帰ったのだから持ってくれば良かった。流石にもう一度帰る気はない。私は詩織よりも背が高い為、少し小さい。まあ着られない程ではないし非常事態だから気にしない。胸のサイズが違う為、下着は借りる事が出来ない。借りたとしてもぶかぶかだ。ちょっと悔しい。まあ夜だし、いいだろう。
次にリビングに飛び散っていた血には蒸発する薬をかけて回った。そこまで飛び散っていなかったけれど二人して血眼で探した。
この作業が一番疲れたし時間が掛かった。その後、掃除機をかけ、リビングを整える。気が付くととっくに日付が変わっており2時を過ぎていた。
「もう大丈夫だと思うよ」
「うん…。そうだよね…。大丈夫だよね…見落としてないよね…」
詩織はまだ不安そうだったがきりがないし、十分探した。
「死体はなくなっているし、もう大丈夫だよ。もし、残っていても誤魔化せるよ。疲れているでしょ。少し休んだほうがいいよ」
「うん…。一緒に居て欲しい…」
「勿論。一緒にいるよ」
詩織は死体を溶かした風呂場で一人シャワーを浴びるのを怖がった。けれど、何となく気持ち悪いし若干汗もかいている。それに洗ったとはいえ血が付いたし、死体にも触った。結局二人で浴びることにした。こんな時でなければ嬉しいのに。正直今も少し嬉しいけれど。