告白3 あなたにとって麗華は
「詩織さん、あなたはこの1月近く何を考えて過ごしてきたの?どんな気分で生きていたの?何考えて授業を受けていたの?どんな気分で麗華の話を聞いていたの?よく眠れている?夜中目覚める事は無い?悪夢を見る事はない?うなされる事は?体調は崩していない?食欲はある?肌の調子はどう?ご飯は美味しい?好きな物は食べた?外食には行った?遊びに出掛けた?お友達と出掛けた?買い食いはした?誰かに奢った?奢ってもらった?バイトはした?漫画や本は読んだ?音楽は聴いた?映画を見に行った?絵は描いた?文章は書いた?テレビは見た?動画は見た?勉強はした?授業には身が入っている?宿題はちゃんとやっている?掃除はした?料理はした?洗濯はした?ごみ捨てはした?お手伝いはした?おしゃれはした?お化粧はした?おしゃべりはした?電話はした?メールはした?何か欲しい物は買った?ゲームはした?綺麗だと思った物はある?面白い事はあった?嬉しかった事は?楽しかった事は?感動した事は?良かった事は?気持ち良かった事は?安心したことは?癒された事は?リラックスした事は?可愛いと思った事は?綺麗だと思った事は?かっこいいと思った事は?美しいと思った事は?興味を持った事は?悲しかった事は?哀しかった事は?辛かった事は?痛かった事は?不快だった事は?苦しかった事は?不安に思った事は?怖かった事は?暑いと思った事は?寒いと思った事は?人に優しくした?何かを譲った?誰かを助けた?助けられた?この先の人生についてはどう考えているのかしら?誰かを愛して共に生きて何かを慈しむ。それが出来るの?何を目指して何をしていくの?どんな生き方をしていくの?友達とはどんな話をしたの?先生とは?進路相談とかはしたかしら?ご両親とはお話しした?麗華はねもう何も出来ないの?それをわかっているの?理不尽よね?」
きっと答えを求めている訳ではない問いが投げかけられる。それに答えたのは麗華だった。
「もういい。やめろ。お前が、お前が言うな。黙れ」
麗華からゾッとする程冷たい声が漏れる。詩織は言葉を紡げずにいた。けれど、優香さんから目をそらさずに返事をしようとしている。
その様子を見ていた優香さんは天井を見上げた。そして深いため息をついた。次の瞬間優香さんは詩織の頬を殴った。
バチッっという聞きなれない音がすると同時に詩織が椅子から倒れる。真横で起こった光景に頭が追い付かず座ったままだった。
「詩織‼」
麗華の叫び声で我に返る。慌てて詩織に駆け寄る。
「何もするなって言ったよな!おい!約束破る気⁉」
「大丈夫⁉」
「うん」
詩織はそう答えながら立ち上がり、優香さんの方へ顔を向けた。優香さんは部屋の隅へ歩いていた。私は優香さんが何をする気なのかわからず恐れながら詩織をかばうつもりで少し前に出て立った。
「はい」
そう言いながら優香さんが何かを投げてきた。詩織がキャッチしたそれは湿布だった。
「それあげるから使って。そして二度と来ないで。ふざけた話を二度としないで。麗華は強かなの。あんた程度に刺されるはずがない。だからまだ絶対生きているから」
詩織は何かを言おうと口を開こうとした。しかし、優香さんはそれを遮る。
「わかったなら、早く出て行って。早く」
詩織は何を言っても無駄だと悟ったのだろう。深く頭を下げて『失礼します』といい玄関へ向かった。優香さんを睨んでいた麗華も着いて出て行く。私は慌てて、頭を下げ詩織の後を追った。
玄関で靴を履いていると優香さんが来た。そして、詩織に話しかける。
「詩織さん、最後に一ついいかしら」
「はい。何でしょうか」
「あなたにとって麗華はどういう存在だったの?」
「親友です。ずっと前から一番の親友です」
「そう。二度と顔を見せないでね」
そう言って立ち去ろうとした優香さんはもう一度振りかえった。
「詩織さんあなたも幸せになってね」
優香さんは今度こそ振りかえらずに中へ戻っていく。
詩織と私はもう一度、頭を下げて失礼しますと言って家を出た。




