北野2 裏側
「紗月様は詩織様と片桐優香の元を明日、訪ねるそうです。詩織様は麗華様を殺したことを伝えるつもりのようです。どのように致しましょうか」
私は奥様にメールを送る。これは紗月様に聞いたわけではない。盗聴器で盗み聞いたものだ。
私と田原は、苦無白家に仕えている。その中には紗月様を守ることも含まれている。紗月様には、実は盗聴器とGPSが仕掛けてある。
最近作られた最新のものであり、スマートフォンのチップと一体化しているため、気づくことは難しいだろう。勿論、奥様の許可は取っている。というよりも奥様からの命令でつけている物だが、紗月様は知らない。紗月様がスマートフォンを持ち始めた時から仕掛けてあった。
スマートフォンを持つ前からもランドセルなどに着けて常に監視していたとのことだけれど、私が勤め始めたのは数年前のため詳しくは知らない。勿論、プライベートを犯していることは分かっている。その為、本来はGPSのみ使用している。
しかし、ここ最近はそういう訳にはいかなくなった。無論、麗華様の事件があった為だ。紗月様は知らないが、事件のあった日、紗月様が薬を持ち出したことが分かった時から、盗聴器を起動し、その後の事はおおよそ把握していたのだ。
実のところ紗月様達が眠りに入ったのちに私と田原で部屋の処理を行った。
普段は専門の業者や部下を使うけれど、今回は急な出来事の上万が一にも外に漏れる訳には行かない。その為、二人だけで作業を行った。電気も着けず、音もたてないように行った為、紗月様も気が付いては居ないはずだ。
紗月様達は素人にしては上手く処理していたが、やはりプロの目から見れば甘い箇所も多かった。今は警察がどれほど調査しても一切の痕跡を見つける事は出来ない。
勿論、その後詩織様の家に訪ねていた時などもどのような話をしていたかを把握していた。麗華様が幽霊になった事もだ。
鈴原家と片桐家にも盗聴器を仕掛け状況の把握を行っている。紗月様の事を信用していない訳ではないけれども、事が事だ。もし詩織様が罪の意識に耐えられず警察や家族に話した場合、すぐに対処しなければいけない。
紗月様と麗華様が伊織様の封印をしようとしていた時も状況を把握していた。近くに待機しており、何かあった場合対処する計画だった。後少し、麗華様が封印をするのが遅れていた場合、突入する予定だった。
『紗月がどのように出てくるか連絡。念の為、対処の用意を』
奥様からメールが返ってくる。奥様は可能な限り紗月様の意思を尊重する。今回も紗月様が約束を守り連絡してくるのであれば、いったんは様子を見るつもりのようだ。対処とは記憶を消す薬や意識を錯乱させる薬など危険な薬を用意し使用できるようしておくという意味だ。
『承知いたしました』
メールを返し行動を開始する。使わないことを願いながら。




