お花見
思い出作りと麗華に言ったけれど、私らしくないと思う。中学生の頃から思い出作りになんて興味が無かった。小学生の頃のイベントを思い返す事が全然無かったから。
思い出さない思い出に意味なんてあるのかと思っていた。正直今も思っている。
小学生の頃はそこまで擦れてはいなかった。イベント事も今よりは積極的だった。友達ともよく遊びに行っていた。
けれど、日々の中でそれらの『思い出』を思い出すことも思い返すことも無かった。その事に気が付いてから私は自分の興味にあるに事しか積極的に参加しなくなっていた。
勿論、思い出ってそういう事じゃないでしょとかその時楽しければそれでいいと言われれば反論する気はないし、その通りだと思う。私が捻くれた考え方をしている事は自覚している。
まあ、自分の考えはそう簡単には変えられないし、今の所困ってもいない。もっと年を取れば考えも変わるのかもしれないけど。
その私が今は未来の為に詩織との思い出を作ろうとしている。不思議だ。そんな事を考えながら向かっていると迷いそうになってしまった。
公園に着くと既に詩織は着いていた。勿論、麗華も憑いて来ている。何故か二人とも桜ではなくブランコを見ている。
普段見ている制服でもなく、部屋で着ている服でもない。初めて見る詩織のワンピース。気がつくと見とれていた。
「おい。おーい」
麗華に声を掛けられハッとする。慌てて時間を確認すると11時32分。嘘でしょ?考え事をしていたせいで時間感覚がおかしくなっていたのかもしれない。
「おはよう、遅くなった。ごめん」
慌てて挨拶をする。
「おはよう。楽しみで早く来ちゃった。大丈夫だよ。まだ約束の時間じゃないよ」
「いやもう半過ぎているし。本当にごめん」
「遅れてないよ。公園の時計見ているでしょ。あの時計昔からずれているの」
「そうなの?」
スマホを確認すると10時53分。本当に遅れてはいなかった。確かにどう考えても30分以上かかる距離じゃない。
「それならよかった。よく知っているね」
「昔よく来ていたの。前はここまでずれていなかったけどね。多分誰も整備していないから」
「そうなんだ」
どうやらここは詩織の思い出の場所らしい。そう言われると寂れた公園が少し輝いて見えるから不思議だ。
桜は少し散り始めていたけれど、十分綺麗だった。少し早いけれど、作ったお弁当を食べる。持ってきていたシートを広げて二人で座る。考えてみたら朝は忙しくて何も食べていなかった。北野さんがサンドイッチを作ってくれてあったけれど、てんやわんやしていて忘れていた。もったいないので夕飯で食べることにしよう。
「美味しい!紗月料理上手いね」
「ありがとう。でもこれ北野さんに手伝ってもらったんだよね」
「それでもすごいよ」
「ありがとう」
詩織に自分で作った料理食べているのを見るのは恥ずかしい。やはり作るなんて言うんじゃなかったと少し後悔する。
でも詩織の作ったお菓子も食べられるのだから我慢しよう。そう心に決めて料理を食べていく。朝何も食べていないこともあり、美味しい。作り過ぎてしまったかとも思ったけれど、二人で食べきってしまった。量は良かったみたいだ。
お弁当を食べ終わると詩織が団子を出して来た。
「もしかしてお団子作ったの?」
「そうだよ。ほら花より団子って言うでしょ。だからお花見なら団子かなって」
それは確かにその通りなんだけど、元パティシエのお父さんと一緒に作るのだから勝手に洋菓子だと思っていた。団子はとても美味しかったけれど、なんとなくモヤモヤしてしまう。それはともかく詩織の手料理を食べるのは初めてだからこの味は忘れないようにしないと。
詩織と桜を写真に収める。恥ずかしがっていたけれど、折角だからと押しきった。そうしたら、私も撮られてしまった。恥ずかしい。
麗華はずっとブランコに座っていた。さっきもブランコを見ていたし、好きなのかもしれない。もしそうなら意外な一面だ。麗華の写真も撮ってみたけれど、ブランコしか映らなかった。幽霊は写真には写せないみたいだ。
まあ、映ったらそれはそれで困ることも多いだろうけれど。
そこでふと気がつく。もしかしたら、2人の思い出の場所なのかもしれない。2人してブランコ見ていたし。だとしたらここをお花見場所に詩織はなかなか図太い神経をしている。まあそのくらい図太い方がいいかもしれない。




