好きな人が人を殺した3
私の家は黒白製薬という製薬会社を経営している。
会社の名前は苦無白のナをロに変えてクロシロ、それを漢字にして黒白としたらしい。分かりやすい名前にしたかったらしいけれど、もう少しおしゃれな名前に出来なかったのかと正直思う。
ただ、私も母もネーミングセンスはないので、代々そうなのかもしれない。もっと変な名前にならなくて良かったと思うべきか。
会社としては業界シェア10位くらいで株式会社ではない。評価としては一般的な薬の他に良く分からないユニークな薬を多く作っているとネットでは書かれていた。ホワイト企業としても有名であり、私が何かしている訳ではないけれど、そこは自慢だ。
家は裕福で恵まれている。少なくとも、欲しいと思った物ややりたいと思った事をお金が理由で諦めた事はないし、大抵の物は買って貰えた。
私の家の裏には古い倉庫があり普段使わない物や古いタンスなど要らない物が入っている。中学生の時には倉庫の中の物は使わないのだし、片付けてもっと有効利用すればいいのにと思っていた。けれど、倉庫の実態を知るとカモフラージュの為に置かれていた事がわかる。
倉庫の奥まで行き、下を見る。床にわかりにくいが床が扉になっており、地下に繋がっている。
扉の近くの床板を外すと、古い倉庫に似つかわしくない最新の生体認証が付いてあり、私と母・姉だけが 開けるようになっている。
母によると父には家の歴史は秘密にしているから設定していない、姉さんは子供の頃にした設定を念のためそのまま残しているとのことだ。
触れると音を立てず開き地下への階段が現れた。地下は驚く程広く様々な薬品が種類ごとに置かれている。この地下を見せられた時は驚いた。同時に母の話を信じざるを得なくなった。ここにあるものは量を作れるものでもっと貴重な薬は別の所にあると言っていた。他にもあるのかと衝撃だった。
地下には『人を眠らせる薬』、『くしゃみが止まらなくなる薬』など、安全そう?な薬から、シンプルな毒薬など、様々な薬が種類ごとに分けられて置かれている。
その中から『死体を溶かす薬』、『服などの繊維を溶かす薬』、『金属を溶かす薬』、『血と混ざり蒸発する薬』など必要になりそうな薬を持ち出した。
薬は洗剤が入っているようなボトルに入っている。必要な量が分からないのでとりあえず全て持ち出し倉庫の中にあった旅行鞄に詰める。少し埃っぽいのが気になるけれど、今はそんな事を気にしている場合じゃない。急いで詩織の家に戻らないと。
かなりの量で重かった。思っていたより時間がかかってしまい戻るまでに1時間近くかかってしまった。




