麗華2 痛みと出会い
麗華の過去です。
後半は紗月以外の視点の話も増えます。
私が憶えている最初の感覚は痛み。父親に肩を殴られたことによるものだ。
理由は分からない。けれどどうせ、私が泣いたとか自分の競馬が外れたとか下らない理由だ。
物心ついた時からどこかが痛い事が当たり前だった。
あいつが私に暴力を振るう時はいつもそんな感じだった。正当な理由があったことは無い。ただの一度も。まともに教育された憶えも何かを教わった憶えもない。当然愛されたと感じたこともない。
母はそんなクズに対して何もしていなかった。暴力を振るわれることはなかったけれど、止めることもなかった。私は何でこんな目に遭っているんだろう、何で私は生まれてきたのだろう、私は何か悪いことしたのだろうかそんな事ばかり考えていた。
子供心に私の家が普通ではない事は分かっていた。私は家で段々と何も話さないようになった。何が父親の癪に障るか分からない。特に父親が機嫌の悪い時に笑っていると、より機嫌が悪くなった。
だから、ひたすら黙って視界に入らないようにと生活していた。いくら普通ではないと分かっていても幼い私にとって親は支配者だ。逃れる術もない。
当然自分の家だけど、心休まる場所なんてなかった。中学生の時に引っ越した家よりも狭かった為、私の部屋なんてなかった。父親は余計な悪知恵が働く奴だった。顔などの目立つところに暴力を振るわれたことはなかったし、痣になるほど叩かれることもなかった。
そのせいで、児童相談所などに周囲の人が通報されることもなかった。それでも、周囲の人にも私の家が変だということはばれる。私が小学校に入るころには近所で話しかけてくる人は居なくなっていた。
小学校でも私は孤立した。最初の頃は話し掛けてきてくれる子がいたけれど、すぐに居なくなった。恐らくだけれど、親に止められたのだろう。
子どもだからこそ、無邪気で残酷に対応する。別にその子達の事を恨んではいないし悪いとも思ってはいない。もう名前も思い出せないし。
私が子供の親であれば、明らかに問題がある家の子と付き合って欲しいとは思えない。だから仕方のない事だろう。
恨むとすれば、悪いとすればそれは私の親だ。私はどこにも居場所がなかった。どこに居ても一人ぼっちだった。
父親は当時バイトをいくつか掛け持ちしており、夜の勤務があるものもあった。当然家にシフト表もあったのだけれど、そんなものの存在は知らなかった。子どもの私にはいつ出掛けていていつ家にいるのかがわからない存在。家に帰るのがいつも怖かった。
それでいつも帰り道から少しそれた所にある公園で暇を潰していた。一人でいると、家にいる時よりも何で生きているのか、何の為に日々過ごしていたのかそんな事を考えるようになっていた。
子どもだった為、世界が狭かった。元々孤立していたこともあり、家族と学校の生活だけが私の全てだった。
その両方に居場所が無かった為、自分は要らない存在だと思い込んでいた。幼かった為、自殺するという選択肢が無かったのは今思うと良かった。
その公園は大きな道から離れた所にあり、10年以上前に作られた為、若干寂れた雰囲気だった。遊具もブランコとシーソー、小さな砂場の3つしかなかった。ただ、桜は綺麗だった。
もっと大きく新しい公園が学校の近くにあったこともあり、殆ど人がいなかった。私にとってはそれが有難かった。たまに知らない子どもが遊んでいれば隠れて時間が経つのを待っていた。殆ど毎日行っていた。
公園には時計があることも私にとっては救いだった。10分くらいずれていたけれど、時間が分かるので帰るタイミングを把握できたからだ。
一度、帰るのが17時を過ぎてしまった時は、母にすごく怒られ心配された。だから、16時半には帰るようにしていた。
その公園で私はブランコに乗りながら絵本を読むなどをして時間を潰していた。絵本を読むことでネガティブな事を考えないようにしていた。読んでいる間は今とは違う世界に居られる気がしていた。
詩織とはその公園で出会った。
ようやく麗華2が投稿できました。




