表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/173

伊織の事をどうしよう

 20時頃。麗華(れいか)が私の部屋にやって来た。今日課題を忘れた反省から早めに初めており、丁度終わった所だからよかったけれど、いつもより大分早く来たので驚く。


「もう一度、言っておくけれどお花見には私も行くからね」

「わかっているって。それより昨日の事を教えて」


 封印の効力を確認する為に、麗華(れいか)とは事前に話をしてあった。夜、詩織しおりが寝た後に伊織(いおり)の封印を解いて再度封印するというものだ。

 星花(すーぱーすたーまいん)さんによると封印はかなり自由に封印を解けるとのことだったので成功しているか試すことにしたのだ。


「成功だったよ。何回か試してみたけれど上手く行った。念じるだけで詩織(しおり)の身体からお札が浮いてきて封印が解けたみたい。直ぐに目を開いてこっちを睨んできたよ。起き上がろうとしてきたから再度念じたらお札が身体の中に入って行って目が閉じて動かなくなった。3回試したから間違いなく成功だよ。3回目はもう完全にぶちぎれていたね」

「上手く行ったのは良かったけれど完全に恨まれているね」

「まあ仕方ないでしょ。それに何かの間違いで封印が解けることがあっても私には手を出せないし大丈夫だよ」

「それ私は大丈夫じゃないよね?良くないよね?」

「でも他に方法ないししょうがなくない」

「まあそうだけど…」


 それはその通りなのだけど、なんとなくモヤッとする。とは言ってもこちらの都合で伊織(いおり)を封印したのだから恨まれるのは当然のことだと諦めるしかない。

 封印を解いた後が怖い。私が詩織(しおり)から離れる時まで封印を解く機会がないことを願おう。


 伊織の封印は一旦置いて置くとして一つ大切な事を決めないといけない。


伊織(いおり)の事、詩織(しおり)に話した方がいいと思う?」

「いや駄目でしょ」

「やっぱり?」

「そりゃそうでしょ。何で言おうと思う訳?」

「勿論、デメリットが有ることはわかっているよ」

「デメリットしかない気がするけど、あんたの事考えるメリットは?」

「自分が殺したわけじゃないってわかる」

「それは確かに。でも、どうやって伊織(いおり)の存在を証明するの?」

「まず前提として、超常現象的な存在の事は話せないでしょ」

「勿論」

「だから説明するとしたら二重人格かな」


 私の家の事は話す事とは出来ない。既に母にかなり譲歩してもらって自由にやらせてもらっている。これ以上は難しいし、話せば詩織(しおり)を巻き込むことになる。麗華(れいか)の事を明かす事も出来ない。


「一度、封印を解いて、その時の様子を動画に撮って見せるとかどう?」

「それなら確かに信じてもらえるかもしれないけど、やっぱり反対。そもそも伊織(いおり)の事をどうやって知ったって言うつもり?」

「そこは相手から姿を見せて脅されたって言えばいいと思う。実際に脅されはした訳だし」

「確かにね。でも、封印したことはどう説明するの?」

「封印なんてしてない事にするのは?」

「無理でしょ。封印してないなら、いつ伊織(いおり)が暴れ出すかわからないって事になる。そんな状態詩織(しおり)が受け入れる訳ない。引きこもったり、下手したらもう誰にも迷惑かけないように自殺とか考えかねない」

「だよね。やっぱり無理だよね」


「それに伊織(いおり)の存在がわかれば、ストーカーの正体にだって気が付くでしょ。今回の事はそこが発端だし。流石に私が刺した理由まではたどり着かないと思うけれど、何か感づく可能性もある」

「確かに。それは思いつかなかった」

「あんたも言えないなんて事わかっているでしょ。伝えられないってわかっているから、田原(たはら)さんとか呼ばないで二人で話しているんでしょ」

「うん」


 その通りだ。伊織(いおり)の事を話すのであれば、母に事前に話しておく必要がある。それに、事前に田原(たはら)さん達にも相談するべき事だ。


「もう一つ理由があって、伊織(いおり)の事を詩織(しおり)に許可取らず勝手に決めちゃっていいのかなって」

「まあそれは確かに思うけど、しょうがなくない?封印前に詩織(しおり)に話すなんて出来なかったし」

「勿論、わかっているよ。でも、詩織(しおり)の事を勝手に決めるのは悪いかなって」


 結局の所、自分が納得する為に麗華(れいか)に相談したに過ぎない。伊織(いおり)の事を話すのは無理だと私だってわかっている。一人で決めたんじゃないって言い訳が欲しいだけだ。自分はつくづくせこい性格だと思う。


「そもそもさ、伊織(いおり)の事を知って、自分が殺したんじゃないって知ったところでそれで良いとなると思うの?」

「思わない。結局は伊織(いおり)の存在に気が付かなかった自分を責めるだろうし。でも、詩織(しおり)伊織(いおり)の責任全て背負うって言うほど聖人ではないから。少しは、自分への言い訳が見つかるかなって」

「まあね。それはそうだね。でもやっぱり無理だよ」

「うん。そうだね」


 きっと伊織(いおり)の事を知っても詩織(しおり)の背負っている物が無くなる訳じゃない。それでも少しは軽くなると思う。私は詩織(しおり)の抱える物を少しでも軽くしたい。いつかそれが出来る時が来るといいな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ