皆で花見に行かない
翌日。疲れていたせいか泥のように眠っていた。だけれど、余りすっきりしていない。そうはいっても学生には学校がある。頭を振って目を覚ます。リビングに行くと北野さんが朝食を用意してくれていた。
「おはようございます。昨日はありがとうございました」
「おはようございます。とんでもございません。こちらこそ遅くまで申し訳ありませんでした」
朝食を食べて家を出る。昨日とは違い寝過ごしたわけではないので詩織と合流して学校へ行く。麗華も憑いていた。麗華が話し掛けてくる。
「昨日試したけど、問題なかった。詳細は帰った後に話す」
麗華の方に軽く頷き了解と伝える。雑談をしながら学校へ向かう。こんな日が続くとといいけど。
クラスではロナが叫んでいた。課題が難しすぎる!と。それで思い出した課題が出ていたことを。背中を冷汗が伝う。
「忘れた…」
「え?何を?」
「課題。出ていたことすっかり忘れていた。やっていない」
「そうなの?紗月が忘れるなんて珍しいね」
「紗月が宿題わすれたの⁉明日雪降るんじゃないの?」
ナ組も話に絡んでくる。こういう話にはすぐ飛びついてくる。流石の嗅覚だ。
「ロナとは違うもんね」
「何…⁉思わぬ反撃だ」
「まあロナの事は放っておくとして紗月はどうするの?一回くらいなら忘れてもしずしず怒らないと思うけど」
「放っておかないでよ!」
「私見せようか?」
「理奈の字は汚いからやめた方がいいよ」
「ロナ。もう見せない」
「冗談だって。ごめんて」
「心配してくれてありがとう。でも社会科3限目だからそこまでに何とかやるよ」
「真面目だね。理奈、私には見せて!」
「ロナ。あんたは詩織を見習いなさい。爪の垢分けてもらったら?」
「ジュース奢るから」
「しょうがないなあ」
「ありがとう!」
そんなことを話しながら課題を広げて少し進め始める。そうこうしている内にホームルームが始まった。いつも通りの日常で昨日までの事なんて何もなかったかのように錯覚してしまう。
お昼休み。何とか課題を終わらせて提出することが出来た私は安心してお弁当を食べていた。朝と同じくナ組と一緒に雑談をしていると、瑠奈がこんなことを言い出した。
「私たち、土曜日にお花見行こうって話しているの。ほら裏山の桜っていま満開じゃん。そこに行こうって。2人もどう?」
奇遇な事に同じ日にお花見を計画していたらしい。私としては二人きりで行きたいけれど、詩織はどうだろう。昨日は二人でと言ってくれていたけれど、ナ組のみんなが同じ日にお花見をするというなら一緒に行こうと考えてもおかしくない。詩織は私と違って人付き合いがいいし、皆とわいわいするのが好きだから。
様子を見ようと顔を向ける。すると、詩織と目が合った。少しだけ笑った気がする。そして詩織が返事をした。
「誘ってくれてありがとう。でもごめんなさい。その日は紗月と出かける約束しているから。また今度誘って」
「何、デートするの」
「そういう訳じゃないけど」
デート。2人で出かけるなら確かにそういう捉え方も出来る。まあ、はっきり否定されてしまったけれ ど。それでも詩織と出掛けられるのは嬉しい。
「そういう訳だからごめんね」
私も一応謝っておく。
「一応言っておくけれど、私も着いていくからね。2人だけじゃないけどね」
麗華が目を細めてこちらを見てくる。勿論分かっているけれど、返事はしない。
その後は別の話が始まりお昼休憩も終わった。
帰り道。詩織に気になっていた事を聞く。
「お昼の話は良かったの?」
「何の事?」
「お花見の事。瑠奈が誘ってくれたけど、断ちゃったじゃん。皆と行った方が賑やかで楽しいんじゃない?」
「紗月は皆と行きたかった?」
「ううん。詩織と2人で行きたい」
「なら良かった。私も2人が良かったから。紗月、誘われた時ちょっとだけ残念そうな顔していたから」
麗華が私も行くぞと言いたげにこちらを見てくる。しかし、麗華にかまっていられない。そんな事より気になる事がある。
「嘘?私そんな顔していたの?いつも顔に出ている?」
「今日はしていたよ。いつもはそんな事ないけど」
「なら良かったけど」
もし普段から自分の考えが顔に出ているとしたら恥ずかしくて仕方がない。結構鈍感だと思っていた詩織にばれているなら、周りにもばれているかもしれない。
まさか私が詩織の事を好きな事は周りにばれていないだろうか。少し不安になる。自分ではどちらかと言えばポーカーフェイスだと思っていた。いつもはそんな事ないらしいけど、これからはもう少し気を付けよう。そう誓った帰り道だった。
そろそろ半分くらいだと思います。多分。




