北野さんは少し怖い
「お疲れ様でした」
そう言いながら北野さんが出てきた。ずっと待機してくれていたはずだけど疲れていた様子はない。前、夜遅くまで付き合ってくれた時も疲れていた様子はなかった。凄い。何か秘訣でもあるのかもしれない。今度聞いてみようかな。
「それで?あんたがさっき言っていた片桐の血を手に入れる策って何?」
「それの事なんだけど、北野さん、母に連絡してもらいたいんですが」
「その件であれば既に連絡しております。間もなく届くかと」
「早!流石ですね」
どうやら私たちの話を聞いていただけで、私が何をしようとしているか把握していたらしい。凄いけれど、若干怖い。
「えっと、何の事?」
「私、あなたの死体を処理した時、万が一の保険として、あなたの血が付いた服の一部を回収しておいたの」
「あっ!そういえばそんな事言ってお母さんに渡していたわね」
「そう。その一部を血を気体化する薬を使ってお札に触れさせれば何とかなるんじゃないかと、無理だったらなんとか優香さんの血を手に入れる」
「なるほどね」
「服の方は、お二人星花様とお話されている間に手配いたしました。間もなく届きます。薬の方は私では用意できませんので、お手数ですが紗月様用意をお願い致します。奥様には連絡し、許可はいただいております」
「流石です。ありがとうございます。この方法だと、血はほんの少ししか入らないから、残りの血は私だけにする」
「そうね。それがいいか」
そんなことを話していると、家のチャイムが鳴る。北野さんが出て戻ってくるとガラスケースに入った麗華の服の一部を持ってきた。
私は血を気体にする薬を取りに行った。ついでに明日使う予定の薬も持ち出す。母には事前に使うことを伝えてある。と言っても同じ敷地内にあるので10分くらいで済んだ。その間に北野さんが服の一部を更に細かくし、使えるように準備してくれていた。
残った服はまた、冷凍保存するそうだ。やり易いようにということで、先に自分の血をお札に垂らすことにした。
消毒したカッターで指を切る。ほんの少し傷つけるだけとはいえ、緊張した。切った時よりも血を垂らし終わった後に指が痛くなった。5~6枚に付けた。そこまで痛くはないけれど何度もしたくはない。この血が無駄にならないといいな。
止血した後、絆創膏を貼る。皆には料理をしていた時に指を切ったしまったということにしよう。まあ誰も気にしない気もするけれど。
机にビニールを引き、麗華の服を置く。北野さんに服の真上になるようお札をもって貰う。そして薬を服にかけた。
すると、以前使った時と同じように血が魔法に掛けられたように消えていく。それに合わせて、お札が白く光を放つ。どうやら成功したようだ。安心するとそれまで気にならなかった疲れが一気に襲ってきた。
「成功だ!よくやった!」
「お見事です」
「ありがとう。今日は疲れたのでもう寝ます」
「そうね。明日も大変だしね。私はまた外フラフラしているわ」
「わかった。北野さんも遅くまでありがとうございました」
「紗月様、麗華様もお疲れ様でした。ゆっくりとお休みください」
北野さんにお礼をいい帰ってもらう。明日は学校のため、軽くシャワーを浴びてさっさと寝ることにした。




