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降霊術の準備

 私は麗華(れいか)の叫びが収まるまで家に帰らず遠回りで歩いていた。麗華(れいか)は気にしないかもしれないけど、家にいる北野(きたの)さんに聞かれない方がいいと思ったから。

 そして私が麗華の叫びを誰にも聞いて欲しくなかった。だってきっとこれは麗華だけの心の叫びだから。


 麗華(れいか)によると一度姿を見せると、波長が合い姿を見えないようにするのは難しいらしい。その為、私や北野さん達にはこれから麗華が見えたままとのことだ。

 

 家に帰った時は13時を過ぎていた。麗華(れいか)の家を出た時は12時前だったから1時間以上歩いていたことになる。疲れてはいたけど、余りお腹は空いていない。これはきっと精神的な疲れのせいだ。


「お帰りなさいませ」


 北野(きたの)さんが出迎えてくれた。


「ただいま」

「戻りました」

「お疲れ様です。いかがだったでしょうか?」

「予定通り回収できました。北野(きたの)さんの方はどうでしたか?」


 私が麗華(れいか)家に髪の毛を取りに行っている間、北野(きたの)さんは麗華(れいか)の曾祖母の家で麗華(れいか)が隠している家伝の書を取ってきてもらう予定だった。


「問題なく回収致しました」

「よかった。ありがとうございます」

「滅相もありません。紗月(さつき)様お昼はいかがいたしましょうか」

「今ちょっと疲れていて食欲がないのでいらないです。作ってあるなら食べます」

「疲れてお帰りになると思っておりました。その為、お昼を召し上がらないかもしれないと材料を用意して後は作るだけにしておりました」

「それなら夕飯で使ってください」

「承知いたしました。もし軽食が必要であれば幾つか用意があるので仰ってください」

「ありがとうございます」


 私は部屋に入り栞は机の上のフォトフレームに挟む。中学の頃に授業で作ったけれど、使っていなかった物。机の上なら麗華(れいか)がいつでも見られる。

 そして、服のまま布団に入った。


「ごめん。少し疲れたから寝るね」

「わかった。私は気分転換でちょっと外浮いてきていい?」

「大丈夫。15時半から儀式の準備をするってことでどう?」

「いいよ。じゃあその時間に起きていなかったら起こすから」

「お願い。おやすみ」

「おやすみ」 

   

 そうして私は眠りについた。


 14時過ぎに目を覚ました。気を抜くともう一度寝てしまいそうになるので頭を振って目を覚ます。部屋を見渡すと既に麗華(れいか)が戻ってきていた。


「目覚めた?」

「ありがとう。そっちは気分どう?」

「問題ないわよ。あの親の事を気にしているなら気にしなくていいから。さっきは少し取り乱したけど、もう吹っ切ったから」

「ならいいけど。じゃあ降霊術に取り掛かろうか」

「そうね」


星花(せいか)さんは麗華(れいか)の事わかる?呼び出して協力してもらえるよね?」

「死んだのは私が中学2年の頃で、生きていた頃はそれなりに会っていたから私の事は分かると思うよ。協力は分からない。説得次第じゃない」

「わかった」


 降霊術の手順は次の通りだ。

 まず、呼び出す本人又は血縁者のDNAを用意する。今回の場合呼び出すのは麗華(れいか)の曾祖母の星花(せいか)さんであるため、麗華(れいか)の髪の毛だ。

 次に家伝の書に書かれている文字らしきものを紙に書く。何故らしきものなのかと言うと崩れすぎていて読めないから。円形に配置されている。文字の形と円を再現することに一番気を使った。

 そいて円の真ん中に髪の毛を置き、呪文を唱える。

 最後に呼び出す相手の名前を呼ぶ。以上だ。


 実行場所はリビングだけれど、余り人が多いと呼び出した星花(せいか)さんがどのような反応をするか分からない為、北野(きたの)さんは隣の和室に控えてもらっている。


一 度で成功しない事も考え数枚描くと準備が終わったのは20時近くになっていた。


「この呪文ちょっと言うのが恥ずかしい」

「私には詩織(しおり)の為なら何でもするでしょって言ったのにあんたはこのくらいの事出来ないの」

「いやするけどね。でも読み方あっているのこれ」

「まあ振り仮名まであるから合っているでしょ」

「分かった。じゃあ行くよ。魂招来(たましいしょうらい) 魂来狐(こんここん)片桐(かたぎり)星花(せいか)!」


 何も起こらない。

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