最近話し合いが多い
詩織(伊織)が帰った後、早速四人で話し合う。田原さんは麗華の事は片桐様と呼んでいる。呼び方を変えるのには何か意味があるのか不思議になるけど、聞く程の事でもない。
「どうすんの?あの伊織って奴かなりやばいわよ。話が通じない」
「元々怨霊だったことを加味すると執念・執着に囚われやすい性質なのでしょう。現在は詩織様に執着しているようです」
「詩織を守ってくれる存在ならそのままでもいいと思っていた。でも、あのままだと詩織を独占するために、詩織を追い込みかねない。許すわけにはいかない」
「ただ一つ良かった事もあります」
「なんですか?」
「霊と人が完全に融合しているのであれば、自由に離れる事は出来ません。つまり、幽霊である麗華様には危害を加える事は出来ないという事です」
「成程」
「っていってもどうすればいいのさ。こっちも詩織に手は出せない」
「元が霊であれば封印するか除霊することもできるはずです」
「そんな事できるの?」
「あんた何言ってんの?自分で母親に聞いていたじゃん。それに私は霊媒師の家系だって言ったよね」
「そういえば」
色々ありすぎて忘れていた。恥ずかしい。
「それならその方向で行こう」
「それが一つ問題がありまして」
「問題って何ですか?」
「霊媒師を呼ぶのには時間が掛かります。霊媒師の人数は非常に少ない上、多忙です。恐らく1週間は掛かるかと」
「お母さんもそんな事いってたね。それだと3日後に間に合わないよね。過ぎると伊織が何するかわからない」
「危険ですね」
「一度詩織と別れる振りをして1週間経つのを待つのはどう?」
「いやダメでしょ。今あんたがそんな事をしたら、せっかく精神正体が改善してきたのに悪化する。関係もこじれる。元に戻ろうとしても一度壊れた関係が元に戻れるとは思えない」
「確かに。でもならどうする?」
「片桐様の力ではどうにかならないでしょうか?」
「私?」
「はい。片桐様の家は元々霊媒師として有名な一家でした。現在でもその方法は伝わっているのではないでしょうか」
「ごめん無理。家の力については殆ど資料が残っていない。幽体離脱とか降霊術くらいしかわからない」
「それだ!」
「え?どういうこと?」
「わからないならわかる人に聞けばいいんだよ。降霊術つかってさ!麗華の曾祖母さんとか呼び出せば方法わかるんじゃない?」
「なるほど。その方法なら何とかなるかもしれません。麗華様はどうでしょうか?」
「いいんだけど、一つ問題があって…」
「何?何か難しいことでもあるの?」
「いや、降霊術使うには呼び出す人のDNAか血縁者のDNAが必要になるんだよね。私の身体はもうないじゃん。だとすると私の家に行って私か母の髪とか拾って来ないと」
「それだけ。ならあなたに連れて行ってもらえば何とかするよ」
「私が行きたくないんだよね…」
「紗月の為なら?」
「はいはい。何でもしますよ」
「良し、じゃあ私が行って何とか入り込んで髪の毛を回収する」
「片桐様がお母さまに姿を見せれば話がスムーズに進むのではないでしょうか」
「それだ!」
確かに麗華が姿を見せれば私が話をするよりもいいだろう。最初は驚くだろうけれど、麗華が話をすれば信じてくれるのではないか。勿論、死因は誤魔化してもらうけれど。子どもと話を出来る事も嬉しいに違いない。
「絶対に嫌だ」
「そんな事言わないでさ。詩織の為でしょ」
「これだけは無理。あいつには絶対姿を見せたくない。それに頭固いから、幽霊なんて信じない。昔の事も知らないだろうし。それに、万が一信じたとしても、死体の事とかどうするの?死んだと別れば警察とか巻き込んで騒ぎ出すだろうし、リスクの方が高い」
「それは確かに」
言いくるめられるような案は私には浮かばない。
「意識を混濁させる薬などもございますが」
「それ使うか。いっそ気絶させればいい」
「いや、駄目だよ。あなたのお母さんでしょ」
「別にいいよ」
「駄目。穏便に済む方で行こう」
「それなら、私の姿を現すことを諦めて」
これ以上話し合っても解決しないだろう。ここは譲ろう。仕方がない。
「じゃあ私が行くことで決まりね。早めの方がいいよね。明日は日曜日だから…お母さんいる?」
「日曜なら母はいるはず。明日にしよう」
その後、明日に向けて話し合いをした。ここ最近は話し合いをしてばかりだ。仕方が無い事だけれど少し疲れる。
田原さんが呼び方を変えているのは誰が何を言っているのかわかりやすいように以上の意味はないです。




