寄り道
新学期初日はこれからの説明と教科書購入だけなので半日で終わる。私は姉のお古の教科書があるので買う数が少なくて済む。詩織が買い終わるのを教室で待って一緒に帰る約束。12時半を過ぎた頃だった。
「お待たせ。混んでて時間かかっちゃった」
「大丈夫だよ。帰ろっか」
「うん。教科書どうする?一応持って帰れって言われているけど」
「持って帰る訳ないじゃん。何冊あると思っているの。そもそも学校で使うんだし」
「そうだよね」
「お昼どうする?」
「どっかで買おうか」
「わかった。マキドはどう?新商品のシェイクが気になっているんだよね。玲奈が美味しいって言っていたし」
「いいよ」
田原さんにお昼はいらないと伝えておいて良かった。
校門を出ると風が吹いている。最近は暖かくなってきて過ごしやすい。桜はまだ殆ど咲いていない。昨日は入学式だったはずだけど、アニメみたいに満開の桜の中でという風にはいかなかったようだ。
途中でマキドに寄ってハンバーガーとシェイクを買う。美味しいけれど、カロリーが高いのが問題だ。詩織は私より一つ大きいLサイズのハンバーガーを選んでいた。食欲があるようで良かった。詩織は元々見た目に比べて結構な大食いだ。私の二倍近く食べる。それなのに全然太らないのでうらうやましい。
近くの公園の椅子に座り食べる。周りに人がいないことを確認し話しかける。念の為麗華の名前は出さない。
「調子どう?さっき話出ていたけど、大丈夫だった?」
「うん。何とか慣れてきた。慣れるなんておかしいし、いけないことなんだけど」
「私はそうは思わないな。詩織が元気なのが一番だよ」
麗華も頷いている。
「ありがとう。ごめんね巻き込ん」
「それは違うよ」
言葉を遮り断言する。
「あれは私が決めたこと。それに提案したのも私。だから詩織は自分を責めちゃ駄目」
「うん。でも」
「でもじゃないよ。本当の事だから」
「…わかった」
少し強引に話を打ち切りハンバーガーを食べる。
「とにかく何かあったら何でも言って。出来る限り協力するから」
「ありがとう」
その日はそこで別れて翌日から本格的に授業が始まった。麗華の話もそこまで出ることもなく安心した。数日間は何事もなく、麗華の報告でも特に心配すべきようなことはなかった。
けれど、十日後事態が動いた。私の予想外の形で。
私と麗華に脅迫状が届いた。それも詩織から。
麗華は基本的に詩織と一緒に居ます。
一部エピソードのサブタイトルを変更しました。




