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憂鬱な新学期

 新学期初日。詩織(しおり)と一緒に学校へ行く。学校には詩織(しおり)の家の方が近いので途中で合流する。憂鬱な気分は詩織に会うだけでなくなるから不思議。


 無理していかなくてもいいのではと言ったけれど、下手に休むと家族に心配かけるから行くと言われてしまった。そう言われたら止められない。

 思っていたよりも顔色は悪くなかった。麗華(れいか)も着いてきている。学校であまり麗華(れいか)の事が話題にならないといいと思いながら向かう。


 教室にはいるとナ組と目が合う。


「おはよう」「おはよう」「おはー」「おはよー」「よー」「眠い!」


適当に挨拶しながら近くに行く。下手に避けると変に思われそうだし。


 私の高校は比較的偏差値が高く、公立高校で進学校と言われている。共学だけれど、私は余り男子と話した事はない。避けている訳じゃない。男女関係なく友達自体が殆どいないだけだ。


 別に一人が好きだという訳ではないけれど、特に自分から仲良くしようとは思えない。小学校、中学校でも、普通に話したり遊んだりしていた子は何人かいたけれど、クラスが変わったり卒業するとそれで交流が終わってしまう。


 別に関係を切ろうと何かをしている訳じゃない。むしろ何もしないから関係が終わってしまうのだろう。たまに、連絡を取ることがあるけれど、こちらからではなくもらった連絡に返事するだけだ。


 比較的仲の良いナ組も詩織(しおり)をきっかけにして話をした。正直、この4人とも高校を卒業すればそれで終わりになる気がしている。


 考えてみると麗華(れいか)との関係も複雑だ。生前は余り話した事はない。あくまで詩織(しおり)の友達で、私の友達という認識はなかった。それが今は私だけが見える存在であり協力者になっている。


 ナ組とは、理奈(りな)瑠奈(るな)玲奈(れな)、ロナの四人のことを指している。元々は理奈(りな)瑠奈(るな)玲奈(れな)、が同じクラスで奈奈奈組(なななくみ)と名乗っていた。そこに2年生のクラス替えでロナが入ってきたことでナ組となった。ナナナナ組だと長いからシンプルにしたいと相談されたため、ラ行組を提案したところ可愛くないと却下された。確かに。

 ただナ組が可愛いというのも私には疑問。結局詩織(しおり)が提案したナ組がシンプルでいいということで決まった。まあそもそもの話、ナ組なんて誰も呼んでない気がする。


 理奈(りな)は眼鏡で真面目、瑠奈(るな)はギャルで格闘家、玲奈(れな)は巨乳でいつも何かを食べている、ロナはハーフでアルバイトに精を出している。一見関りがなさそうだけれど、名前の共通点から仲良くなっていつもつるんでいる。


 私とはそこまで仲良くないけれど、誰とでも付き合える詩織(しおり)と仲がいい。私はいつかラナが入ってほしいと思っている。


「そういえばさー、2組の麗華(れいか)が駆け落ちしたらしいじゃん」


 瑠奈(るな)の言葉に私は少し肩を震わせた。話題になるとは思っていたけれど、こんなに早いとは思っていなかった。詩織(しおり)の様子を見る。一応事前に打ち合わせはしてあるけれど,大丈夫だろうか。麗華(れいか)も不安そうだ。


「あーらしいね」

「そうだね。心配じゃない?」

麗華(れいか)の家にも警察が来ていたし、私の家にも聞き込みに来たよ」

「そういえば理奈(りな)の家、麗華(れいか)の家の近くか」

「うん。私の方が後から引っ越して来たんだけどね」

「警察には何か言ったの」

「ううん。あんまり話したことないし。まあ麗華(れいか)の家がかなり荒れていたことはお母さんが話していたけどそれだけ」

詩織(しおり)仲良かったよね?駆け落ち相手とか聞いてないの?」


  ちなみに横にいます。勿論そんな事は言えないけれど。横目で詩織しおりを見る。

「何も聞いていない。私も驚いているの」

「そっかー」

「でもちょっと羨ましいな。駆け落ちできるくらい想い合っている人がいるなんて」

「ロナそんなことばっか言っている」

「何よ瑠奈(るな)。彼氏いるから余裕ってわけ?」


 ロナではなく玲奈(れな)が突っかかっている。


「別にそんなんじゃないけど。まあ、喧嘩もあるしいいことばかりじゃないし。この前も寝技決められたし」

「惚気ているし、自慢している」

「そんなことないよー」

「してる」「してるね」「訴えよう」


 明らかに自慢しているけれど、おかげで話が逸れた。寝技を掛けてくる彼氏がどういう人なのか気になるけれど、瑠奈(るな)は元々私とスパーリング出来る人ではないと付き合わないと公言しているので格闘家なのだろう。


「てか何で、私は恋人出来ないの⁉性別にこだわってないのに!」

玲奈(れな)はがっつきすぎじゃないの?もう少し余裕をもってみたら」

「それで恋人出来る?」

「さあ?知らない?」

「ひどく無い⁉」

「そろそろ、しずしず来そうだから席戻るか」


 理奈(りな)に言われて自分の席に行く。

 私の席は真ん中の列の後から2番目で、詩織(しおり)は右斜め前の席だ。ここからなら詩織(しおり)の様子を見られるので気にいっている。


 席に着くとほぼ同時にしずしずこと、清水(しみず)(しずみ)先生が入ってきた。彼女はクラスの担任。宿題が少し多めなのが困るが、優しく平等ないい先生で皆にも慕われている。しずしずと呼ばれることも嬉しそうにしている。


 学期が変っても学年が変ってもホームルームが退屈なのは変わらないらしい。詩織の様子を見ながら終わるのを待つ。


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