幽霊への対策はあるの?
家に着くとまだ田原さんが居た。時間を見ると18時を少し過ぎていた。どうやら私を待っていてくれたみたい。
「お帰りなさいませ」
「ただいま。待っていてくれたんですね。ありがとうございます。夕飯、我儘言ってすみません」
「いえ、とんでもありません。何か御用はありますか?」
「特にないです。上がってもらって大丈夫です」
「承知いたしました。それではこれで失礼いたします」
田原さんが帰った後、母に電話を掛ける。事前にこの時間に電話を掛けることは伝えてOKをもらっていた。麗華に聞こえるようにスピーカーにする。
「もしもし、お母さん?ごめんね。無理言って」
「大丈夫よ。私からも伝えたいことがあったから」
防犯カメラの事だ。ひとまず知らないふりをしよう。
「何のこと?先に話して」
「まず警察の捜査は始まってもすぐ終わるから」
「そうなの?」
「元々行方が全く分からないからね。それと少し手を回してある」
「ありがとう」
怖い。何処まで権力を持っているのか。
「次ね。防犯カメラを調べて、書き換えてあげるって言ったでしょ。それで調べたんだけど変なのよね。片桐さんが映っていたカメラは詩織ちゃんの家から離れたところばかりなの。それに途中から消えたみたいに映らなくなっているの。広い範囲調べてもらったから間違いないはずよ」
「そうなんだ。不思議だね。それなら放置しておいて大丈夫だよね?」
「うん。むしろあらぬ方向を調べてくれるだろうから都合がいい。そのままにしておくつもり」
「それでお願い」
「あんまり驚いていないみたいね。それで紗月の用事は何?」
「あーちょっと変な事きくけれど、幽霊っていると思う?」
「いるよ。それがどうかしたの?」
あっさりと答えられた。聞いた私が驚く。裏社会では幽霊の存在は当たり前なのかもしれない。呪いもあると言っていたし。ともかく、幽霊の存在を知っているのなら対策方法もあると思う。
「いや、流石に死体の処理とかしたからさ、万が一幽霊出て来たら怖いなって」
「そんなこと考えるたまじゃないでしょ。実際に出てきたの?除霊師紹介しようか?勿論本物だよ。ただちょっと時間が掛かるけど。本物の人はだいたい忙しいから」
「違うよ。でも、少し不安になって」
「そう。ならいいけど。お守りとかもあるから何かあるならすぐ伝えなさい。後これから、何かこの件で伝えたいことがあったら田原さんか北野さんに伝えて」
「なんで?あんまりこの話広めない方がいいでしょ?」
「その2人はこの件について知っているから。2人とも実は派遣のお手伝いさんじゃなくて私が直接雇っているんだよね。それも表じゃなくて裏の方の仕事をしてもらっているの。たまにだけれどね。家に来ているのも家事してもらうことは勿論、家の事を守ってもらってもいたの」
「そうなの⁉」
「そう。だから今回の件も知らせてある。もし何かあった時にすぐ対処できるようにね。勝手に伝えたのは悪いけれど、信頼できるから何かあったら頼って」
「わかった。そうさせてもらう」
聞きたいことは聞けた。田原さんたちの事等思いがけない話もあったけど、概ね思っていた通りの展開になって安心した。雑談をして電話を切る。
恐らく母は、会話から私がどんな状況にあるか、何故、詩織の家から遠い場所の防犯カメラに麗華が写っていたのか理由に気が付いている。気が付くと思って電話した。
本当なら、自分から相談しなければいけない事だ。それでも、何も聞かず強制しないのは信頼してくれているからだろう。その信頼を裏切る訳には行かない。




