第8話
あれから3回、チュートリアルダンジョンに通うことで、ようやく目的を達成することが出来た。
俺はステイタスを確認する。
◇神崎 直人
職業:ネクロマンサー
生命力:150
精神力:220
力:15
知力:30
体力:22
素早さ:23
器用さ:19
抵抗値:50%
運:12
◇スキル
隠蔽
空間収納
闇属性魔法:レベル2
無詠唱:レベル2
対闇属性無効
対呪術系無効
ネクロマンス:レベル2
ラスト・カース:レベル2
サクリファイス:レベル2
(以下、基準に満たないスキルは全て封印されています)
という訳で、スキルレベル2に上げることに成功した。
1上がればかなり自由度が違ってくるからな。
「―――ちょっと、聞いてるの?」
「ん?何が?」
「だから、アイツらでいいんじゃないって」
隣に居た泉が少し不機嫌ながらとある方向を指差す。
そこには―――
「ランク不問で荷物持ち20万で後2人!!ランクC行きで討伐部隊にはゴールドが5人も居る手堅い仕事だ!」
呼び込みをしている男の姿。
俺達は現在、協会にある低ランクの溜まり場で仕事を探していた。
ランクを上げてないから俺はブロンズのままだし、泉はシルバーでしかない。
こんな2人が2人だけでどこかを占拠することなど出来ない。
かといって自ら主宰して人が集まるような魅力もない。
なので適当な所に潜り込んでコッソリと泉の戦闘経験値を稼ぐつもりだ。
俺が持つ特殊キーを利用した専門ダンジョンという手もあるが、カギに数がある以上は無駄にしたくはない。
何より難易度が高めなものが多く、現時点では厳しいというのもあるが。
とりあえずアレでいいやってことになり、声をかけにいく。
「あのぅ~?私達がぁ~立候補しても、いいですかぁ?」
コイツどっから声出してんだ?ってレベルの声だ。
言うなれば猫どころか別の何かを被っていそうな状態だとも言える。
「ああ、かまわ―――」
「大歓迎だ!この大門 太郎が守ってやるからな!」
思いっきり鼻の下が伸びきった男が、呼び込みの男を押し退けて現れた。
どうやらこのチームのリーダーらしい、ゴールドランクの男だ。
「ゴールドランクなんですかぁ?すぅごぉ~い!」
「ま、そんな隣のもやしみたいな男なんかより、よっぽど俺の方が役立つぜ?」
俺と泉の胸を交互にチラチラと眺める作業が忙しそうな男だが、しっかり自分アピールも欠かさないらしい。
こういう時に俺が何か話すと拗れるだけなので放置しておく。
すると周囲に促されて移動準備をするために指揮をし始めた。
泉がこちらに帰ってくる。
「あ~、うっざ。キッモ。」
こちらに来るなり俺にしか聞こえないレベルで毒を吐き始めた。
「胸ガン見してきてサイアク。隙あらば手を握ろうとしてきてホント無理」
「変に媚び売ったからじゃないのか?」
「その方が手っ取り早いからよ。スキルを使う気にもならないわ」
「スキルは、ほどほどにしとけよ」
「わかってるわよ」
あの蜘蛛のダンジョンで彼女の周囲に居た連中の大半は壊滅した。
しかしダンジョンに潜らない情報担当など一部が残ったままになっていた。
それらが彼女の周りに新しく現れた俺に対して嫉妬という名の無意味な絡み方をするようになる。
ぶっちゃけ俺からすれば勝手に現れたのは彼女の方だ。
意味不明な嫌がらせなど話にならない。
なので泉ごと切ろうとした。
すると危機感を覚えた泉が、連中を切った。
その騒動で一時期ストーカーまがいの連中にウロウロされて迷惑だったことがある。
それ以来、泉にはスキルの使用に関して制限するように言った。
無差別に使えばこうして制御出来なくなった連中が暴走するようになる。
いずれそれは自分に跳ね返ってくるだろう。
彼女もそれを理解したのか、それからは無意味に使わなくなっていた。
つまり今の彼女からすれば、俺の方が利用価値が高いと判断している訳だ。
まああんなダンジョンとか色々あれば、そう思うのは当然だろうが。
口止めに関しても「当たり前じゃん」と言うまでも無く秘密にすることに同意した。
こういうものは、秘密にするからこそ、俺達だけが利用するからこそ意味があるものだ。
特に初級スキルを覚えられるダンジョンなんてこの世界では、とんでもないアドバンテージといえる。
さて考え事をしている間に、目的地まで移動する。
今回はグループが貸切ったバスによっての移動だ。
何故バスをと思ったら、遠いもののバスなら直接行ける場所だった。
小さな村の大きな空き家。
その中に今回のダンジョンの入口が存在していた。
荷物を降ろしてキャンプ地を作る。
そして万全の体制で乗り込むという流れだ。
せっせと作業をする俺だが、泉はと言えば……
ゴールドの野郎どもの中心地で取り合いをされていた。
まあ見た目は可愛い巨乳JKアイドルだからなぁ。
わからんでもないが……あ、何か目でSOSを送ってきているが、俺が介入したら余計面倒だろうが。
という訳で見なかったことにしてさっさと作業を終わらせる。
そして作業が終わって突入準備をしている最中。
まだ連中は泉の取り合いをしている。
誰が守るとか、誰がふさわしいとか、どうでもいいわ。
連中は、自己アピールに必死過ぎて既に死んだ目になっている泉の様子にすら気が付いていない。
女性経験が無い俺でもそれを見ていればわかることはある。
「―――だからコイツらは女にモテないんだろうな」
このくだらないやり取りのせいで、ダンジョンへの突入時間が1時間ほど予定からズレることになった。
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