第4話
「―――以上が、昨日起きました事故の内容になります」
「ふむぅ」
日本適合者協会では、昨日連絡があって発覚した事故とも呼べる件に関しての調査報告が行われていた。
レベルDランクのダンジョンで起きた適正レベルを超えるほどの圧倒的物量のモンスター達の出現。
ゴールドランク1人にシルバーランク6人。
そしてブロンズ5人にアイアン5人の計17人の個人チーム。
そのうち生存者はたったの2人。
生存者の1人は気を失っていたようで詳細を知らないらしく聞き取りに対しても情緒不安定であり、これ以上の聞き取りは不可と判断。
残りの1人の話では、ゴールドランク達の討伐組が『俺達が何とかするから彼女を連れて逃げろ』と言ったらしい。
襲われ捕まった彼女を助けて文字通り逃げていると目の前に出口が出現、何とか外に出たとのこと。
ダンジョンはボスを倒さない限りは出られない。
つまりゴールド達がボスを撃破したということだ。
ならどうしてそのゴールド達は出てこなかったのか?
「相打ち、もしくは討伐で力を使い果たした……と見るべきか」
「それ以外にあり得ないかと」
生き残りがゴールドクラスなら、それはそれでまた色々な疑念も無くはない。
しかし生き残ったのは襲われたロクに戦闘技術の無いシルバーランクの女性と、そもそも戦力にならないアイアンの若い男だ。
ランク詐欺かと男の方に魔力量を判定するランク検査装置を試してみたが、アイアンの数値のままだった。
こうなると非常にレアケースにはなるが、相打ちとして処理するしかないだろう。
「では、そのように処理してくれ。……I大神くん、遺族に対しては」
「今回の適合者の大半が適合者遺族金に参加しておりませんでしたが、基準の半額程度を支払うよう手配します」
「そうしてくれ。そうでもしないと残された者も報われまい」
大神と呼ばれた男は、協会の会長に礼をして部屋を出た。
今回のようなケースは今まで無かった訳ではない。
しかしゲートの難易度調査に関してはかなりの精度を出せるようになっていたはずだ。
「技術部連中が文句を言いそうではあるが―――」
言わない訳にもいかない。
これだけ大きな被害を出した以上、世論を納得させるためにも必要なのだ。
正直な話をすれば、勝手に自信満々で討伐に行って返り討ちにされただけと言えればいいのだが、そういう訳にもいかない。
大氾濫を起こさないためにもゲート破壊は必須業務なのだ。
しかしそれに対応出来る適合者は限りがある。
だからこそ適正レベルを決めてバランス良く振り分ける必要があった。
今日は何時に帰れるのやら……と思いながら大神は車に乗り込んだ。
一方その頃。
自宅に戻った神崎直人こと、俺はソファーに座って天井を見上げていた。
あの時、思い出したのだ。
かつて同じような世界で流行したオンラインゲームを。
そしてそのゲームを世界初でクリアしたのが自分であり、その時に『強くてニューゲームをプレイしますか?』という選択肢が面白そうでYesを選択したことを。
何よりその瞬間、真っ白な世界で出会った神を名乗る存在によってこの世界に転生させられたこと。
転生特典としてオンラインゲームで使用していたキャラのアイテムや能力を強くてニューゲーム仕様で引き継いだこと。
「あー、マジかー」
もう何度目になるかわからない呟き。
前世の世界によく似た世界ではあるが決定的に違うのは異世界門の存在。
そしてその門に関しては前世の世界で大流行したゲーム『タワー オブ トランセンデンス』にそっくりだ。
そう言えばと自らのステイタスを確認する。
予想通りではあったがスキルの項目を見て思わずため息が出る。
◇神崎 直人
職業:ネクロマンサー
生命力:150
精神力:220
力:15
知力:30
体力:22
素早さ:23
器用さ:19
抵抗値:50%
運:12
◇スキル
隠蔽
鑑定眼
空間収納
闇属性魔法:レベル1
無詠唱:レベル1
対闇属性無効
対呪術系無効
ネクロマンス:レベル1
ラスト・カース:レベル1
サクリファイス:レベル1
(以下、基準に満たないスキルは全て封印されています)
確かに強くてニューゲームを押したと思うが、ここまで身体能力だけでなくスキルまでもが弱体化しているとは……。
まあ救いがあるとすれば空間収納の中身が生きていたという点だ。
これで装備やアイテムに当面困ることはない。
何とか底上げ効果があるうちにスキルレベルを全盛期にまで戻さなければ。
人が色々と考えている時だった。
ピンポーン!
珍しいこともあるもんだ。
まあ大半がセールスとかなんだけど。
そう思い、どう追い返そうと思いながらドアを開けると―――
「やっと見つけたわ」
バンッ!
即ドアを閉める。
「ちょっと、なんでドア閉めるのよ!」
ドンドンとドアを叩く音がする。
全く近所迷惑だ。
仕方が無いのでゆっくりとドアを開ける。
「何でお前が居るんだよ」
「だって調べたもの」
平然とした顔で目の前に現れたのは……あの時助けてやった女だった。
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