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親の再婚で出来たきょうだいが前世魔王だった俺がペットにしていたスライムだったんだが。

作者: アーク

佐藤孝之21歳。前世は魔王。先代魔王が癇癪と気まぐれで人間にとっても魔族にとってもはた迷惑だったので先代を討ち取って魔王になった。基本的には平和主義。

異世界転生。


一般的には「今、自分が住んでいる世界から何らかの理由で剣と魔法の世界に行って冒険をする」という、ラノベなんかでありふれたものを想像するだろう。


俺の場合は、「逆転生」というもので、剣と魔法の世界から化学文明の発展したこの世界へと転生した。


異世界転生で「俺TUEEEE」した勇者達の弊害で魔物から人間への転生が多くなった20××年、とある世界で魔王として君臨していた俺は異世界転生してきた勇者に討ち取られてこちらの世界に転生した。

魔王だった頃の記憶とスキルは不思議と持ち越せたので、魔王時代に生きた1000年+この世界の人間として生きた記憶21年分がある。


こちらに生まれた俺の名前は「佐藤孝之」。


どこにでも居る平凡なサラリーマン家庭の一人息子。母親は1歳児健診で俺が魔王からの転生者だと知ると「将来何をしでかすか分からない」と逃げたので父親と二人暮し。

…別に、こんな世界を掌握したところでただの無駄骨だから普通の人間としての人生を過ごそうと考えていたのに失礼な母親だ。


魔王からの転生者という事で、魔物からの転生者が普通の人間と同じ学校に通えるにも関わらず、俺だけ全世界の政府監視のもと、自宅で、独学でこの世界の常識を学ぶはめになった。


世界征服なんて考えていませんよ、という事を理解してもらう為、引き継いだスキルは一切使わずに高校卒業認定を受けた頃にようやく、全世界の政府監視こそあれ、普通の企業に就職する事を許された。

ただ、「前世魔王だから散々悪い事をしてきたんだろうから、俺には何をしても構わない」と罵詈雑言や暴力を振るうのはやめて欲しいと思った。


そして先日。


「父さんな、再婚する事にしたんだ」


父親が新しい母親を連れて来た。


独り立ちしているとはいえ、元魔王の息子の連れ子がいてその人は平気なのか、と聞いたら、その人は魔物からの転生者の5歳になる子どもがいる、と言った。


その子がやたらと俺に会いたがっているらしく、「労働者の権利だ」とゴリ押しして入社数年一切貰えなかった休みを勝ち取りきょうだいとなるその子に会いに言った。


―――アルビノの白い髪と、白い肌。燃え上がる様な真紅の瞳。


魔王時代に見慣れた姿がそこにあった。


「シロコ…?」


名前を呼ぶと「うん!」とニッコリ笑って丸くてぷにぷにとしたスライム形態に変化した。


シロコこと、シロコンブは人間の国と魔族の国の和平の証として俺が向こうの王妃と共同研究して完成させたペットスライムだ。


1000年以上前、先代魔王(クソ野郎)の癇癪で殺された、人間の姫の魂を(コア)に作られた戦闘能力は一切持たないシロコはまるで雛鳥の刷り込みの様に俺と向こうの王妃―――生前のシロコから見たら他国に嫁いだ姉の子孫である彼女を親として認識し、良く懐いていた。


ところが、だ。


シロコは生まれて16年が経過した頃、何者かに攫われ行方不明になった。


俺も我が子(シロコ)が行方不明という事態に動揺していたというのに、新しく即位していた王妃の息子の人間の王はこれ幸いと「1度ならず2度までも、魔族が人間の王族を手に掛けた」と人間の反魔物感情を掻き立てて魔王討伐へと乗り出した。


俺は仕方無しに応戦しながらシロコの行方を探している中、人間の国が送り込んで来た異世界転生してきた俺TUEEEE系勇者によって討ち取られた、という訳だ。


そして、人間として転生した俺の前に、血眼になって探していたシロコがいる。


「…お前、どうして死んだんだ?」


直球(ストレート)に聞く。シロコは特別なスライムだ、冒険者に遭遇したところで簡単に死ぬとは思えない。


「勇者にこき使われたの。過労死だねぇ」


―――シロコはまだ幼い勇者に攫われた。


いわく、シロコはとあるゲームに登場する倒すと経験値が豊富に手に入る魔物で、増殖を強要させ続けたという。

増殖して増えたシロコを生まれた端から殺し、経験値を手に入れる。勇者として旅立つ1年の間で勇者(ゲス)はレベルが1からカンストまで上がってホクホクしていたという。


そして、度重なる増殖で魔力を使い果たしたシロコは勇者(ゲス)に笑いながら(コア)を砕かれたという。


「もう一度、ルーデル様に会いたいってずっと思ってたの。だから、また会えて嬉しい!」


「そうか」


人間の魂を(コア)にしたスライム故に、転生が遅れたのかと思ったが違うらしい。


シロコはまず、母親である王妃に真実を伝えるべく暫くは憎き勇者(ゲス)の元に取り憑いていたそうだ。

王妃は魂が見える人間だから、勇者(ゲス)が俺の討伐後に王都へ凱旋した時シロコと再会し、全てを知り、隠居していた自分の夫と、勇者(ゲス)の凱旋を褒め讃えていた息子に真実を全て話した。


そして、図々しくも「(シロコ)を妻にしたい」と言った勇者(ゲス)に制裁を加えたそうだ。


勇者(ゲス)の末路を見届けて転生した為、時間が掛かったという。


どんな末路か、は知らない方が精神衛生上良さそうだ。


「私は、ルーデル様のペットスライムですから!困った事があったらなんでも言い付けてくださいね!」


「ありがとう。取り敢えず、今の俺の名前は孝之だ。覚えてくれ」


「孝之様!」とシロコが元気よく叫ぶ。


―――今の俺は一般人なので「様」付けは辞めろと説得しよう。

前世の孝之を討ち取った勇者は「色々あった結果」取引先のイヤミ社長に転生していたりする。

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