プロローグ
異世界転移。
それはある日、現実世界で何らかの死や召喚などが原因で、異世界へやってきて、勇者となり、強力な仲間たちと共に魔王を倒すものだと思っていた。
しかし、実際は違った。
夜中にマンション十二階のベランダから月を眺めていた俺は、誤って飛び降りてしまい、貰うはずのチートを捨て、美人女神に頭を撫でられた。
そして、転移する事になった俺の転移先は、街を覆う高い塀の外に位置し、見張りの居る門の前で、ジーパンTシャツで突然現れたせいか兵士に捕まり、事情聴取されること十八……いや二十時間か、二日間だった気もする。
その後、異世界といえば冒険者だろうと、街の人に聞き、冒険者ギルドへ辿り着いた……はいいものの、冒険者になるために必要なお金が足りないと言われ、当時の俺は途方に暮れていた。
来たばかりでお金なんて持っている訳もなく、俺は普通に仕事を探した。
そしてなんとか冒険者になり、ちょっとめんどくさい仲間もできたが、モンスターは強いし、肝心の魔王はとある勇者により討伐寸前まで追い詰めたという話だ。
それを聞いてやる気を無くした俺は、今日も今日とで仲間たちとスライムを討伐する。
果たしてこのままで良いのだろうか。いや……。
「俺だって、チート無双がしてぇぇぇぇぇよっ‼」
あぁ、十秒ほど無駄にした。さっさとクエストを終わらせて寝よう。あと、急に叫んだからか、仲間から向けられた視線が痛い。
そんなこんなで、笑えない俺の異世界ライフは続くのであった。