ストーブの暖かなあかりを見ながら
私、不安なんだ。
うん。
編み物の腕を取り立ててもらったけれど、なんの資格もとってない自己流だし。次に何を編んだらいいのか、何を編むか決めて材料を探しに出かければいいのか、わからない。
うん、そうだね。
小説の何年か前に書いたものをコンテストに応募したんだけど、幻聴が「賞をあげるよ。金の懐中時計をあげるよ」って囁いてくるけど、自信がないし、何度も騙されたから、疑心暗鬼になっちゃって、不安なんだ。
俺ら、お前を喜ばそうとして、いろいろ言ってるだけで悪気はないよ。
わかるけど、嘘で喜ばせないで。あとでがっかりして、悲しいから。
窓際のバケツの中から、金魚のたてる水音が静かに響く。
鳥籠のセキセイインコたちは、ストーブの余熱で暖かそうに止まり木にいる。
幻聴と会話する。
母にそのことを話すと、いつも、全部自分で考えてることだと言われる。
私はそうは思わない。
病院の先生に小説を書いてるんです、と言ったとき、幻聴のひとたちと、小説の登場人物は同じなの?と聞かれた。
一応、区別はついているけれど、いつかごっちゃになったら、何もかもおしまいだと思う。
愛おしいおとぎ話の女の子を見たあと、しばらく、その女の子の語り口が残っていて、文章をかくと、その女の子の声で考えている。
もっと不安な人たちだってたくさんいるのに、自分のことで精一杯だ。
今は夜。
さあ、眠りにつこう。