ミガク/グンキョウ/オシエ
Poluri
汚れは磨かずにいられない彼女。
古アパートのシンクの錆が気になって磨き、台所も建物もなくなるまでつづけた。
さらに地上に街や山や国がへばりついているのも気にいらず、磨き落とす。
つるつるの大地から夜空を見れば数多の星と天の川。
天井の染みに見えてしかたがない。
すべてを磨ききるため彼女は天空へと旅立った。
* * *
Malbonuloj
その山は群凶の巣。
あつまった連中はみな小悪党の生と縁を切り、歴史に名を遺して死ぬつもり。
だがどんな凶悪な大事を為すかが決まらない。
話し合うあいだの飯のため、山肌に畑をつくると、丸々とした野菜がとれた。
山をおりて街にもっていくと、すぐに売り切れ。もちこむたびに評判がたかまり、外国からも買手が来るほどになった。
大忙しの日々により山と野菜の名は轟く。富が人をよび、まわりごと国ができた。その国も育って、人々はみな笑顔、おおいに栄えたそうな。
だが、群凶の連中の名は、ひとつとして遺っていない。
* * *
Instruoj
古木のごとき老人が話しかける。
私は手で耳を覆い、通り過ぎる。
また別の老人が話しかける。さらに別の老人も…。
世に馴れた老人が、いたるところで若者に道を教える。
しかしみな言うことが違い、若者は迷うばかり。
私はもう若くないのにまだ迷い、目的地すら忘れてしまった……。
棒になった脚を折って道端に坐る。
背を丸めた私は、若者に話しかける。
若者は手で耳を覆い、足早に通り過ぎていく。
Fino