マンカイ/コイ/ツメ
Tuta florado
庭の木の花が満開だ。
少しは綺麗だと思うが、満開でないことがない木なのである。
しかも満開ぶりが拡大する。
決して伐れないので、わが家はがんばって資産を殖やし、周囲の土地を買わねばならない。
祖先が旅先で食べた実の種を植えたのがはじまりらしいが、いつ実るのだろう?
最近は番う相手を待つ獣に見えてきた。
* * *
La karpoj
その河に棲む鯉はみな、体中に入れ墨がある。
伝説によれば――
むかし、河に落ちた星を鯉たちが侮り、さんざんつついて嬲った。しかし昼間に夜が来る珍現象がおきた。星は力を取り戻し、鯉どもに入れ墨を刻んで空へと還った。
その痛々しい名残が、いまでも鯉に受け継がれている。
苦痛に歪んだ鯉を生きたまま食らうと入れ墨が甘く美味、と評判だ。
* * *
La ungo
爪に描いた絵に人を入れ眠らせる力を、悪魔がくれた。
わたしは彼女を爪に捕らえ、添寝を愉しんでいる。
細かな絵を毎日描きなおさねばならないけれど、利き手である左手でしか描けない。
だから絵の力を宿すのは右手だけ。
しかも右の指四本を悪魔にあげた。
――欲のない取引相手で良かった。
わたしには彼女がいればいい。
Fino