コウカイ Pento
来し方をふりかえらずにはいられない性格だ。そして後悔をくりかえしている。
わたしは悔いの気もちの大きさからため息をつく。
するとどこからか小さな虫が歩いてきて、わたしのため息を手際よく丸めてしまう。そして足でころころと転がして去る。
わたしのため息など巣穴に運び入れ、なにに使うのか?
不思議に思う時間もつづかず、またむくむくと後悔の気もちがふくらみわたしはため息をつく。
別の虫がやってきてそれを丸め持っていく。
わたしがため息ばかり生み出すので、それを目あてに自室に虫の列ができてしまった。
さすがにわたしも前を見て生きるべきだと気がつく。
人間の心など、気の持ちようを少し変えるだけでずいぶん違ったものになる。わたしの生活は明るく変わり、前方に視野が開けてきた……。
しかし問題も生じた。ため息を当てにして増えに増えた虫たちが、わたしのまわりを囲んでいるのだ。
彼らはものを言わず身じろぎもせず、じっと待っている。しかも時が経つにつれさらに数を増しているようだ。
その様子に恐れを感じて、癖になったため息を思わず小さくぽつり、ひとつだけついてしまう。
たちまち目の色を変えた虫たち!
いっせいに飛び跳ね、八方からわたしの口もとめがけ波濤のように押し寄せる。
――ため息なんてつくんじゃなかった……。
Fino