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機械仕掛けの宙を廻りて  作者: ドフォー/QSO
第2章【蛇蝎の如く】
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第17話【応じる隙もなく】

 C-浸透者、それは地球に棲息するミミックオクトパスと酷似した特徴を持つ。様々な服装や道具、体の形状を八つの触手で巧みに再現する能力を持つ。また、色彩を自在に変化させることも可能で、多種多様な模様をあしらうことや、周囲の色彩に紛れることもたやすく行える。

 表向きでは、家事や子守りなどを行う家庭用ロボットとして流通しており、コミュニケーション相手としても広く用いられていた。


 C-追跡者、それは地球に棲息するメカジキと酷似した特徴を持つ。獰猛かつ沈着で、内部に溜めた水を瞬間的に放出することで急加速・急旋回を実現し、海岸から海の中心まで追跡し、刺し貫く。また、一時的にだが、ジェットを利用して空中を遊泳することも。

 表向きでの使用は、海賊や密猟、海上に逃走した者の鎮圧である。しばしば、C-暗殺者と併用されていた。


 C‐妨害者、それは地球に棲息するカクレミミハヤセガエルと特徴が酷似している。音や電波などの波を選択的に取得し、位置を正確に把握する能力を持っている。それをもとに逆位相の波を作り出し、波を打ち消し妨害する。

 表向きでの使用は、車両の走行音を低減させ風などの自然の音だけを楽しむといった、選択的なノイズキャンセルを行う道具であった。


 黒天、眼球の如き恒星スノー。赤色光しか発しない故、海は黒い波を立てて迫り、赤い泡で縁を飾って引き下がる。

 C-追跡者は迫撃砲のような爆発音を立てながら空中へと次々と飛び立った。まるで空間に壁があるかのように急旋回し、職員や国際軍へと突撃していく。C-追跡者は一度突撃姿勢に移行すると回避を実行しないため、前方からの攻撃にめっぽう弱い。

 そのため、この場所で戦っている部隊はとにかく硬い道具で叩き落としていた。


「もう逃げ場はありませんよ」


 部隊の背によって作られた円形闘技場にて、ドゥべーは四本の腕が生えた人物、即ちC-浸透者と対峙していた。それはフライパンや金槌、ハタキ、霧吹きを持ち、残りの触手でエプロンと軍帽を形成している。

 ドゥべーはC-浸透者と共に騙し合いを行っていた。自身の能力で天の川支部職員の幻影を作り出して暗殺を失敗させたり、清掃員に扮してドゥべーに基地内を一周させるよう誘導したり。最終的に地球にしかいないはずのタコの存在を料理人(C-浸透者)が知っていたことで騙し合いは集結した。


「あまり肉弾戦は得意ではないんですがね……」


 C-妨害者によって遠方からの援護も頼めず、かと言って近場の部隊はC-追跡者を止めるのに手一杯だ。

 ドゥべーは整備部門の恒護、備品や基地の修理や復興の援助などを行っている。そのため最低限の戦闘能力は有しているものの戦闘には直接関わらず、なんと言っても唯一理操機を所有していない。


 ではなぜこの防衛戦に駆り出されたのかの理由については、彼の能力にある。


 ドゥべーはしゃがみ込み、そのまま一直線にC-浸透者に向かって走り出す。勿論その機械兵は愚直にライフルを放つ。だが、ドゥべーの身体に貫通しても反応は無い。気配に気づき右を向いた時にはもう遅く、彼の拳は既にC-浸透者の頭部に接触していた。

 衝撃で転倒し、重い金槌を手放してしまった。再びドゥべーを視認した時には彼は高く飛び上がり、C-浸透者の身体に飛び蹴りを食らわす体勢にあった。しかし、迎撃しようと起き上がった時にはその姿はなく、既に後頭部を蹴られていたのだ。その衝撃で軍帽を作っていた触手は解かれてしまった。


 ようやくドゥべーの戦法を理解したC-浸透者は左右を見渡した。挟撃しようとするドゥべーが目に映る。彼がしていたのは肉体による攻撃。帰納法により、肉弾戦が来るだろうと予測したC-浸透者は触手を伸ばし、それを振り回すように回転した。

 だが第三の択。唐突にナイフが頭部に突き刺さったのだ。両側のドゥべーは幻影であり、本体は姿を消していた。


 ドゥべーの能力、投影操作。視覚による認識しかできない幻影を作り出す。精密な動きをさせることは可能だが、数が多い場合や本体も同時に行動すると幻影の動きは単調になる。また、背景と同じ模様の幻影を重ねることで、存在する物体を見えなくするという高度な技も使用可能。


 翻弄するはずだったC-浸透者の立場が逆転した状況。見える偽の存在、見えない真の存在。ただ一方的に攻撃されるC-追跡者は遂に対処法を導き出したのだ。

 賭け。一か八かで顔を覆ったフライパンにドゥべーの拳が接触した。その隙をつき、甲高い金属音が鳴り終わるよりも早く彼の足を絡めて転倒させたのだ。


 C-浸透者は彼に乗りかかった。抵抗されにくくするためにハタキで彼の視界を妨害する。そのままナイフのように鋭くした触手でドゥべーの身体に突き刺し続けた。そして最後に胸部に狙いを定めて振りかぶる。

 恒護の胸の中には核融合となる(コア)が存在する。それに衝撃が加わってしまえば、核融合の暴走を防ぐために全ての機能が停止し、貯蓄していた水素も身体を作る必要分除いて全て排出し切る。即ち実質的な仮死状態となってしまうのだ。


「ドゥべーさ ――うわっ!」


 彼らの戦いを防衛していた職員も疲労により集中力を切らしたのか、C-追跡者の凶吻に腕を貫かれ倒れ伏す。


「あなた達は良い仕事をして下さいました! これだけ減らしていただいたのであれば充分です! 私のことは気にせずすぐに避難を!」


 C-浸透者とどめの一撃を構えたその時、C-浸透者の眼前に銃口が向けられた。どこに仕込んでいたか分からない一丁の拳銃。人に近い思考回路を持ってしまったが故に起きてしまった理解の停止。

 だが引き金を引かれた時、それは憂慮に過ぎないと認識した。けたたましい発砲音とともに、拳銃は散弾のように後方へと欠片を撒き散らしながら崩壊したのだ。


 C-浸透者はこれが滑稽かと理解した。それと同時に自身の身体は空中へと大きく投げ出されていたのだ。持っていた物を散らしながら、砂浜へと勢いよく着地する。五本の触手が千切られており、変身も解かれていた。

 自身の隣には同様に金槌が深く埋まっており、ようやく自信に起こったことを悟った。銃声と共に背後から金槌が突撃してきたのだ。


「この理操機は銃につき一発しか能力を発動できないんです。しかも借り物でして失くしたくないのでここぞという場面でしか使いたくなかったのですよ。ですので、上に乗ってくれた時はありがたかったですね」


 ドゥべーは薬莢の部分に透明な球が埋め込まれている弾丸を見つめながらC-追跡者のもとへと寄った。そしてそのまま金槌と一緒に頭部を掴み上げる。C-追跡者はドゥべーの設置した幻影に誘導され、樹木のような形状になっている。


「さてと、バッテリーはこの場所でしょうか。すぐ楽になりますよ」


 そう言って、C-追跡者の頭部に金槌を振り下ろした。


☆☆☆


「はぁ? 意味わからん」


 ゼセルは腕を組み、複雑に組み合わさった青く輝く歯車機構を睨んでいた。彼はそれを組んでは離し、別のところに噛み合わす。


 空で甲高い鳴き声が響き渡る。その度にゼセルは洞窟の入口から顔を覗かせ、弓の先端をちょいちょいと小さく動かした。ゼセルの仕事のひとつ、クリース国際軍をC-襲撃者から守ること。


 C-隠密者は地球に棲息するカメレオンと酷似した特徴を持つ。単調な色彩の岩場であるドロンルス山では体色変化で姿を隠しやすい。そこから舌ではなく針を飛ばし、怯ませたり動きを鈍らせたりする。

 C-偵察者は地球に棲息するウスバキトンボと酷似した特徴を持つ。風に乗ることを目的とした軽い設計。旋回するためのモーターのみを持ち、撮影した情報は本体には記録せず即時サーバーに送信する。


「いや何回見てもそうはならん。エクスロテータの技術力とて壁ん中に物を埋め込むこたぁ無理だろ。座標バグじゃあるめぇしよ」


 彼の能力は記録操作。情報を記録し、それらを組み合わせて集計、分析、計算、整理、検索などが出来る。表計算ソフトとデータベースソフトが融合したような能力である。


 彼が見ているのは、クリースにおける地質調査や道路の点検の記録。惑星全体で見ると、今回の防衛戦の場所と過去の調査記録の場所が一致する確率は極めて低い。

 しかし、よく人が利用する場所ではどうか。ゼセルの予測は的中。クリースの地下都市は数年おきに崩落などが起こらぬよう地質検査を行っているらしい。それ即ち、今回ローゼンらが戦っていた太古の光への通路も対象に入っていること。記録を調べたところ、なんと異常な数値や物質は検出されなかったようだ。


 ゼセルは頭を抱えていた。考えられる可能性が複数存在する。

 転送装置の開発に成功したならば、本格的な戦争になりうるかもしれない。大量の人員や機械兵が送り込まれれば、総動員しなければ対処はしきれない。

 後ろ盾がいるならば、新たな対立を産むかもしれない。そうなれば、事態は更に混乱することになる。


 現在天の川支部はアンドロメダ支部という姉妹支部の関係にあった組織と領土を巡って対立関係にある。来るべき日に備えて人員を消耗するのは避けたい。


 ゼセルは情報をアフィンに報告しようとしたその時、微かな風が彼をそっと抱きついた。C-偵察者にゼセルの居場所が暴かれたのだ。


「こんのエロトンボが……!」


 標的を補足した時に発する甲高い鳴き声。このまま籠るか弓で応戦するかを迷っている時には遅かった。C-襲撃者は天空から洞窟を貫く漸近線へと、数多くの爆発音と共に迫っていた。


「やっ……べ」


 ゼセルの目前には一本、二本の爪、加えて三本目の爪が。


「――!?」


 ゼセルが目を開けて防御を解くと、黄色い歯車が収縮していた。


「ローゼンさん、次の場所へと送ってください」


 尋常ではない速度により地面に叩きつけられたC-襲撃者から、猛禽の爪のようなナイフを引き抜くスノウ。再びナイフをC-襲撃者の頭に投げつけて言う。


「ここ周辺一帯のガラクタは全て破壊したので帰ってもらって結構です」


 スノウは黄色い歯車、ローゼンのワームホールを通って消えた。

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