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ガラガラガラ
演劇部の部屋として使っている昼間は顧問の教室に入ると軽く挨拶が交わされた。
「こんにちは」
後輩も同級生も適当にするだけの挨拶。それぐらいの距離感でやっている。最後の劇は白雪姫。私の役は白雪姫の性根が腐ったお母さん…の前半。意外と出番は少ない。有名なシーンで言えば「鏡よ鏡」ぐらいだ。
「じゃあ、通しで一回やろうか」
一通り全員集まり、ウォーミングアップを済ませると部長の…名前なんだっけ?…ロミオで邪智暴虐の王様でキジ役で今回は王子役の女なのにやる人がいないからよく男役押し付けられてる部長の一声で練習が始まった。やる気あるのはほんの数人で顧問すら部活を見にこないのでもうお察しって感じの部活。
「鏡よ鏡世界で一番美しいのは誰だ?」
キマった。私の一番の目立つシーンを終えた。もう残りはわずか、これで後半の子とバトンタッチ。出番を終えた私はどうせ一回しか通しでやらないのだからと、置いてあった自分の鞄をそーと取って逃げるように帰った。
「あっ、」
昇降口を出たところで偶然前半の白雪姫と出会った。
「帰るんだ…じゃあね」
2年間も一緒だったはずなのにどこか距離がある。白雪姫とお母さんのはように。
「じゃあね」
私はそう言って校門の方向へ向かったが、疑問に思った。
なんで前半の白雪姫はここにいるんだ?まさか!と思って後ろ振り向いて見ると私と同じように校門へ向かっている人がもう1人いる。彼女も又サボりらしい。まぁ私には関係ないことだから放って置こう。またあの部長が困るだけだし。
帰り道川沿いの夕焼けはとてもきれいに見えた。真っ赤な太陽と飛んでくカラス間を埋めるのは五線譜のような電線。まだ少し家に帰るには早すぎる。そろそろ意識高い系でなくとも勉強を始め出した方がいいことは理解している。けどなかなかやる気が出ない。そもそも出るほどのやる気を自分が持ち合わせているとは思えない。ふと徐に鞄から手鏡を取り出す。じっと鏡の中の自分を見つめて一言。
「鏡よ鏡」
続ける言葉は見つからなかった。何かで一番だと自負できるものが何もないから。
「よし」
リフレッシュして立ち上がろうとした瞬間眩暈に似た何かに襲われた。ぐるぐると目が回り、体が引き伸ばされている感覚に合い、思わず目をギュッと閉じた。次の瞬間目が回っていた感覚はなくなり、体はいつも通りの健全な肉体に戻ったのを感じた。恐る恐る目を開けて見ると!
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