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「おはよー」
私の普通の挨拶にクラスは一瞬静寂が包まれた。あ、みんな知ってるんだ。一瞬の静寂で理解できた。このクラスになってからまだ一カ月くらいだ。でも中学で2年間小学校から合わせれば8年間も学年が一緒だった人たちだから知らない人なんていない。
「おはよ〜」
おっとりとしたユキちゃんが挨拶を返してくれた。いわゆる《イツメン》のユキちゃん。他には咲ちゃんとほのちゃんの4人が《イツメン》だ。
「大丈夫??」
ユキちゃんに続いてほのちゃんも近寄って来て心配してくれた。まだ咲ちゃんは来てないみたいだ。
「うん、大丈夫だよ!」
これ以上この話題で引っ張られてもめんどくさいだけなので元気よく答える。
「それより授業ついていけるか心配だよー」
おちゃらけるようにそう言うと2人の顔にも笑顔が戻って来た。よかった。クラスの外が騒がしくなって来た。そろそろ来たみたいだ。
「バイバイ!!」
その声と共にクラスに入って来たのは咲ちゃんだ。咲ちゃんは少し苦手…いわゆるお山の大将タイプ。実際顔もカワイイし、オシャレだから尚更癪に触る。
「あー皐月ー大丈夫ー?」
クラスに入ってくるなり、私の元に駆け寄って両手を取り、これでもかと心配したような顔をして下から覗いき込んでくる。
「元気、元気、チョー元気!!」
繋いだ両手を高くに突き出して高らかに宣言するように言うと、
「よかったー」
と大袈裟に胸を撫で下ろす動作をしながら続けて
「やっぱ皐月がいないとねー私たち4人で《イツメン》だもんね」
と誰に伝えるわけでもないのに大きな声で仲良しアピールをしている。私たち3人は結局咲ちゃんの仲良しアピールの道具で咲ちゃんを輝かせるためのアクセサリーでしかない。咲ちゃんだって本当の《イツメン》は違うクラスにいて、このクラスにいつもの《イツメン》がいないから仕方なくアクセサリーの私たちなんかとつるんでいるのは理解している。
「ハハハ」
私は上手く笑えているかな?上手く笑えているだろう。だって《イツメン》なんだから。
「バイバイ!」
やっと解放された。放課後になった途端咲ちゃんはクラスを出て行った。もうすぐどの部活も引退試合だから部活のする時間が少しでも多く欲しいらしい。なら最初から全力でやっていればいいのにと思いつつ、私は演劇部の部室にゆっくり向かった。私も最後の劇が今度あるが、大した思い出もない部活だから力の入り具合もいつも通りだ。なんならいつも以下かもしれない。もう劇とは関わらないなら最後に全力を出す必要なんてないから…。
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