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「皐月ー何探してんの?」
母は母で忙しそうに手を動かしながらこっちにちょっかいをかけてくる。
「なんでもないよー」
なんでもないわけないのはどっちも分かっていたが、説明するのがめんどくさいのでなんでもないと言う。ってこともどっちも分かってそうだ。
「えーと化粧台の上から…3番目か」
ポケットに突っ込んであるおばあちゃんからの手紙をそっと広げて少し独り言を言ってみる。
「ここか」
私の胸ぐらいまである大きな化粧台の前にかがみ込んでそっと上から3番目の棚についている古びた取っ手に手をかける。ドキドキする心臓の音に合わせるようにゆっくりと棚を引いて出してみる。
「ふぅー」
半分くらい出したところではおばあちゃんの化粧用品が雑に詰め込まれているところしか見えない。
「よし」
腹を決めて残りの半分をガッと勢いよく開けた。中には変わらず化粧用品が入れてあるが、その中に一つだけ奥の方に白い袋が入っていた。
「これだな…」
確信に近い気持ちで白い袋を取り出し、中にあるものを左の手のひらに一気に出した。…やっぱり手鏡だった。これが手紙に書いてあった手鏡だろう。手鏡と一緒に紙切れが1枚。
「上手く使いなさい」
左手を避けるようにヒラヒラと地面に落ちていきながらこれでもかと強調するように私の視界を占領した。落ちた紙切れと手鏡をそっとポケットに入れた。
「車で待ってるね」
母を軽く追い越すぐらいに大きな声を出しながらおばあちゃんを出た。少し待ってから母が車に来た。この間手鏡はずっと私のポケットで異質の存在感を放っていた。なんでわざわざおばあちゃんは私に渡したんだろう???
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