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家に着いてからひと眠りした。
まだ手紙を読む気分になれなかったからだ。起きた時にはすっかりと日は落ちていて深夜の雰囲気が家を包んでいた。両親ももう寝てるようだ。私は少し散歩がしたくなってパジャマの上からお気に入りの上着を羽織り、サンダルと共に家を出た。ポケットにはおばあちゃんの封筒を入れて。
『皐月へ
おばあちゃんだよ、元気?最近はなかなか会えてないね。
もういつ倒れるか分からないから最後に手紙を書いとこうと思って書きました。皐月はきっとおばあちゃんが死んでしまってもあまり気にしないんだろうね。それが皐月のいいところだと思うよ。おばあちゃんは悲しまれるより気にしないでいてくれる方が楽だからね。きっと栞さんと聡太はそんなことないんだろうけどね。皐月は昔から頑張り屋さんだから特に言うことはないけどこれだけは言わせて欲しいです。皐月はいい孫だったよ…
おばあちゃんより』
涙が出た。とても多く。確実に涙だ。頬を伝って地面へと落ちていく感覚がする。やっと分かった。本当におばあちゃんが死んでしまったとやっと理解した。深夜の街の街灯の下を一歩一歩歩き、噛み締める。おばあちゃんの孫だということを。
歩き疲れ、涙も枯れてきて公園のブランコで休憩してたら封筒の中にまだ何かあるのを見つけた。
手紙がもう一枚入っていた。
『ps.おばあちゃんの家の化粧台の上から3番目の棚の奥にある手鏡を上げます。』
なんだろう?おばあちゃんが手鏡をつかっているところなんて見たこともない。しかし今はそんなことを考えられる元気はなかった。逃げるように家へ行き、泣き疲れた顔を枕にギュッと押し付けてもう一度眠りに着いた。今はそっと眠っていて、目が覚めたら全部夢であって欲しかった。
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