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医師の手の中には一枚の紙切れがあった。それを見た瞬間の両親の反応で紙切れがなんなのかは容易に想像がついた。
「皐月は少し待ってて」
そう言ってどこかへ両親が消えたのはもう2時間前だ。時計を見ると12時を回っている。
「お腹空いたな…」
こんなことの後なのにこんな気持ちになるのは薄情なのかもしれない。病院の受付では慌ただしく働いている人がいて私のスマホには友達からのラインが溜まっている。どれもこれもおばあちゃんとは無関係のものだ。ふと私が履いているジーパンの一部の色が濃くなっているのが目に入った。悲しいからか悲しくならないといけないと言う義務感からかは分からないが胸がキツくキツく締め付けられている感覚がした。
「お待たせ」
両親はぎこちない笑顔と共に来た。きっと私に心配させまいと頑張っているだろうけど3時間も待たされれば今の状況じゃなくても心配になる。
「お腹空いたよな、どこかご飯行くか」
やっとご飯にありつける。けど今日のご飯はどこで食べても最低な味がしそうだ。
「おばあちゃんのことなんだがな」
注文が終わった後すぐに父は切り出した。いつもならこれでもかと大盛り食べるはずなのに今日は母と半分ずつで食べるそうだ。ダイエットにちょうどいいやと思いつつ顔を上げると父と母はまだ顔を上げていなかった。目線が合わないまま話が続いた。
「脳梗塞で亡くなった」
続けて
「警察の方も来てて事件性がないからこれは渡すって」
そう言っておばあちゃんの字で皐月へと書いてある封筒を渡された。
「今度読んどきなさい」
母さ諭すように言った時に大きな声でご飯が届くのを知らされた。やっぱり過去最低の食事だ。
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