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第8話  魔王勇者

 魔王勇者ってかー。


主様(マスター)、おそらくですが……』


 どうしたユーフィミア?


『おそらくですが、魔王勇者とは、魔王という者のチカラと、勇者という者のチカラの両方を使いこなせる者のことを指すのではないかと思われます』


 つまり、魔王にも勇者にもなれるってことか?


『そのとおりです。主様(マスター)は、両方ともになれる素質が備わっている、ということになります』


 …………。

 感無量だ。本当にどうしたらいいのだろうか。

 転生して、まだ3日ほどしか経ってないのだが、こんな急に魔王だの勇者だの言われても困るんだが……。


主様(マスター)、この後、詳細を話しますので……』


 分かった。

 で、シャールたちの家に帰ってきた。シャールが散らかっている家の説明をしてくれているのを横耳で聞いて、シャールとマイが寝静まるのを待った。

 俺はもちろん、剣なので寝る必要はない。まぁ、寝ようと思ったら寝れるんだけど、寝ないと生きていけないというわけではない。

 さて、ユーフィミア? 話ってなんだ?


『はい。魔王勇者について、女神様に問い合わせてみました』


 え? そんなことできるの?

 ……問い合わせるって……女神なにやってんだよ……。


『単刀直入に言うと、魔王勇者とはエラーです』


 何言ってんの?


『この世界は、主様(マスター)が今まで生きていた世界とは違う世界です。その2つの世界を行き来するには女神様のチカラが必要なのですが、そのチカラも充分ではないのです』


 じゃこのエラーてのは、俺が転生したときにからすでにあったってのか。


『女神様が何を思って主様(マスター)を転生させたかは分かりませんが、転生時に何らかのエラーが起こり、主様(マスター)瞬間記憶(メーンメモリ)と、魔王勇者という職業が発生してしまったということになります』


 魔王勇者という職業については分かった。じゃあ、魔王勇者って何ができるんだ?


『私の推測通り、魔王専用スキルと、勇者専用スキルの使用が可能になります。つまり、今の主様(マスター)は、魔王になれる特性も所持しながら、勇者になれる特性も所持しているのです』


 魔王か、勇者。

 どっちになるかは俺次第ってことか。

 うーん。正直どっちもやってみたいんだな。

 俺ってもともと剣なわけで、人間ではないんだし、魔物をいろいろ集めてきて魔物だけの国とか作ってみたりもできるよな。そしたら魔王になれる。世界征服とか別に興味ないし、いずれは魔物と人間が一緒に暮らす国みたいなものを作ってもいいかもしれないな。

 逆に、勇者ってなろうと思ってなれるもんじゃないよな。

 シャールとマイと冒険でもするのも面白いと思うし、勇者になれなくても、もしこの世界に魔王がいるんなら、倒しに行ったりもできるか。


『魔王ガローデ。400年前、勇者レテナにより滅ぼされた魔王です。その後魔王の復活はありませんが、近頃新たに七大魔王(セットブライド)と名乗る魔王たちがいるという噂もあります』


 てことは魔王はいるってことだな。

 まぁ、魔王になるか、勇者になるかは置いといて、とりあえず両方のスキルを覚えるかー。

 前世で誰かが言ってたよな。選択肢は上に行けば行くほど広がってくるって。

 まずは、明日、シャールとマイをこの村から連れ出して、冒険にでも……

 いや、まずはこいつらの意見も聞いてやらないとな。

 楽しくなってきた。

 じゃあ今日は寝ます。

 おやすみユーフィミア。


 ーーそして夜が明けた。


「つるぎくん! 起きて!」


 マイの大声で俺は目覚める。

 やべ。俺、寝すぎてたか。


「どうしたんだよ?」

「イルイヒヲに案内するって! シャールが!」


 へ? なんで? 

 マイは俺を持って家の外にでる。


「おい! 急にどうしたんだよ?」

「つるぎくんにイルイヒヲの絶景を見てほしくて……!」

「絶景?」

「絶ぇー対驚くよー!! それじゃ出発!」


 俺はわけがわからないまま、シャールとマイにつれて行かれた。


 そして、俺たちはイルイヒヲに来た。

 道中、聞いた話によると、イルイヒヲとは大きな街だそうだ。

 大都市イルイヒヲ。

 誰がなんのためにここに街を作ったかは不明だが、この世界全体で見てみても、かなりの大規模な街らしい。

 街の中心には巨大なギルドが建っていて、その目の前に、大きな公園。そこから東西南北に道路が整備されていて、建物が建ち並ぶ。

 ここはイルイヒヲから少し離れた小高い丘の上なのだが、イルイヒヲの全貌がよく見渡せる。

 ファンタジー感あふれる、中世ヨーロッパのような街並み。

 本当に異世界にいると、実感させられる。

 イルイヒヲにはギルドがあるようなので、俺はシャールに聞いてみた。


「なぁ? ギルドってなにができるんだ?」


 俺の前世の知識だと、冒険者にクエストを提示して、それをクリアすれば報酬が貰える的な?


「ギルドって基本なんでも出来るよ。魔石とお金の交換、冒険者登録、クエストの参加・応募とかなんでも……」


 シャールが答えてくれる。


「冒険者登録ってお前らしてんのか?」

「……さぁ……どうでしょう?」


 マイが焦らしてくる。


「ま、スライムにビビってるようじゃ、してないんだろうな」

「冒険者じゃなくても、生きていけますぅー!」


 シャールはもはや開き直っている。


「せっかくここまで来たんだ。登録してこーぜ!」

「やだよ! 怖いもん!!」


 マイが言う。


「怖いってなにがだよ? ステータス測るとかそういうのじゃないの?」

「そんな生易しいものじゃないよ! 冒険者登録するためには試験を受けなくちゃいけないの!!」

「試験って、筆記か?」

「実技!! 試験場に行って、召喚された魔物を倒さなないとならない。しかも、冒険者って言ってもランク分けされてて、1番上がSSランク。下がFランクからなんだけど、倒した魔物の数とか、強さでランクが決まるの!!」


 まぁ、スライムも倒せないような奴らだし、無理っていうのも分かるな。


「じゃあ俺が補助(アシスト)するから、受けてみねーか?」

補助(アシスト)?」

「俺が、1番最初、村がスライムに襲われてたときにシャールにやったやつだ」

「あー!! あれならできるかも!」

「ちょっ……ちょっとまってよシャール! その場合、私はどうなるの!?」

「マイ安心して! 私が戦うから!」


 シャールが乗り気になってくれた。


「よし、行くぞ!」

「えーーーー……」

「マイ! 行くよっ!!」


 シャールに引っ張られてマイもしぶしぶ、イルイヒヲのギルドに向かって歩き始めた。



 第9話に続く。



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