第1話 色々な出会い
俺の名前は、佐藤 颯真。特に取り柄もない、ただの高校生だった。さっきまでは。
俺は交通事故に巻き込まれ、何故か知らないが、剣に転生することに成功したのだ。
そして俺は、今とんでもない人との出会いを果たしたのだった。
大賢者ユーフィミア。2500万年前にこの世界を作った人たちの1人だと言う。
……それで? 俺はどうしたらいいんだ? 俺を待ってたって言ってただろ?
「その通りです。私が貴方を待っていた理由、それはまだお話出来かねませんが、女神様に貴方に仕えるようにと承りましたので」
俺に仕える? どういうことだよ? というか、女神って誰だよ?
「この世界を管理されておられる、いわゆる管理者です。」
ふーん。でも、どうやって仕えるんだよ? その姿は仮の姿だろ?
「はい。詳しくは貴方の頭の中に憑依する、というのが正しい言い方です」
憑依って聞いたことあるけど、それって俺の意識まで乗っ取られないか?
「それについてはご心配ありません。この世界の人々は、魔力というものを消費して、見たり、聞いたりしているのです。私は、貴方の頭の中にある、魔力放出脳のはざまに……」
あー! 分かった! 分かった! もう頭痛くなるから難しい話はやめてくれー!
何も分かんないから。
「そうですか。それではまず、貴方に名前を差し上げましょう」
名前? 前世の俺の名前じゃ駄目なのか?
「駄目というわけではありませんが、この世界に貴方の名前はまだ登録されていません。なので、この世界に会う名前をと……」
なるほど。任せた!
「……リウス! リウス・レティーウェルの名を差し上げましょう」
リウス……レティーウェル。気に入った。
「それでは、失礼します」
カッ!!
目の前が真っ白に光る。
次に目を開けると、そこに立っていたユーフィミアは消えていた。
『完了しました。主様』
おお! 頭の中から声が聞こえる。
『少し動いてみて下さい。私の魔力を注ぎましたので、自由に動けるはずです』
え? そうなの?
俺は身体を起こしてみる。
本当だ。起き上がれるし、動けもできる。
でもさ、ここからどう出るの? 洞窟の最深部っぽいけど。
『待つのみです』
おーい? 伝説の大賢者ー?
『私にも出来ることと、出来ないことがあるのです……』
分かったから、拗ねんなよ。でも、確かに誰かに拾って貰わないと脱出出来ねーよな。誰か来てくれ。
そう思い続けて、3日ほど経った。
どうやら剣である俺の身体は、空腹にもならなければ、眠くなることもないらしい。ユーフィミアもいることだし、暇でも無かった。
……ガヤガヤ。
遠くから話し声が聞こえる。もしや、人が来てくれたのか!?
『250メートル先に人間と思われる生物を2体確認……』
2人か。男か女か分かるか?
『声から、おそらく女であると推測できます。年はどちらとも10代後半辺りかと思われます』
やった! これでようやくこのジメジメした洞窟から抜け出すことが出来る。
そうこうしているうちに話し声がだんだん近づいてきて、姿が見えるほどに。
俺はもちろん、拾ってもらえるように道のど真ん中で横たわって、スタンバイしている。
えっーと。女の子が2人、歩いてくる。
1人は、銀髪でポニーテール。剣を持っているし、剣士とかなのかな。
もう1人は、青髪でボブ。銀髪の子にくっついている。
とても熟練パーティーには見えない。なんでこんな洞窟の奥に来たんだろう。
「もう帰ろうよ……」
「まだ始まったばっかじゃない! 怖がり過ぎだよマイ」
2人の会話が聞こえてくる。
「でもいきなり土砂崩れに巻き込まれて、こんな洞窟の奥に来ちゃったんだよ? まずは私達の身の安全を」
ん? ちょっとまって? 土砂崩れに巻き込まれてここに来た?
それってつまり、この子たちも帰り道を知らないんじゃ……
「あ見て! マイ!」
銀髪の子が俺を指差す。
「……きれいな剣……」
マイと呼ばている青髪の子も、俺に見惚れる。
「持って帰ろーっと」
銀髪の子が俺を持ち上げる。
「シャール大丈夫? 人のものかもしれないよ?」
「大丈夫! もし、人のものだったとしても、こんな場所に置いていったほうが悪いんだから!」
そう言って、持っていた剣を、俺が横たわっていたところへ置く。
いや、こいつ人のこと言えねーじゃん!
「シャールそれ、人のこと言えないよ?」
マイも俺と同じことをツッコむ。
俺、こんな子達に拾われて大丈夫かなぁ?
ーー大丈夫じゃなかった。
あれから1時間ほど経っているが、こいつら同じところをぐるぐる周っている。
「どっから出るのー?」
「そもそも出口がないのかもしれない。私達落ちてきたんだから、入ってきた訳じゃないじゃん?」
駄目だ。完全にここから出られない。ユーフィミアなんとかしてやってくれないか?
『……分かりました。大賢者能力・・・空間脱出!!』
その瞬間、俺を持った銀髪の子、そして青髪のマイも青い空の下へと移動した。そこは森の中らしく、木々が生い茂り、小鳥が鳴いていた。
いーやー。まさかもう一度、この青空が見れるとは思っていなかった。
ユーフィミアに感謝だな。
「えっ? えっ?」
当然、マイ達は混乱している。
と、いうか流石はユーフィミア。便利なスキル持ってるね。
「まぁ、結果オーライということで! 村に帰ろっ!」
銀髪の子が言う。絶対懲りてないな。またいつかやりそう。
銀髪の子は森の中をどんどん進んでいく。すると、少し木々が拓けた場所に着いた。木造の1軒家(と言っても、テントほど)が10軒ほど並び、村、というか集落のような場所だった。
「ただいまー!」
銀髪の子はその中の1軒へと入る。
案の定、中はめちゃくちゃ狭い。畳4畳分もないんじゃないか? それにしても、散らかってるなー。いや、散らかってるというよりかは、もはやゴミ屋敷。とても女の子が住んでいる家とは思えない。
「さーて、つるぎ君はここに置いておいて……」
銀髪の子が、俺をテーブルに置く。
「つるぎ君?」
「いやー。なんか名前でも付けとこうと思ってー。そのほうが愛着が湧くでしょ?」
「いや、まぁそうなんだけど、安直すぎない?」
ん? 俺の名前勝手に決められてるんだけど。そして、つるぎ君って……マイの言う通り、安直にも程があるだろ!
って言いたいけど、俺、喋れないからなぁー。ユーフィミア、喋れるようになるスキルとかないの?
『あることは、ありますね。言語発生。特殊能力です』
まだ持ってないのか?
『私は取得していますが、主様はまだ獲得できていません』
あー残念だ。
てか、あれ? 銀髪の子は?
俺がユーフィミアと話している合間に銀髪の子が何処かへと行ってしまっていた。
ちょっとーーーー!
第2話へ続く。