表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/17

第9話  冒険者になろう

 ギルド。

 異世界であるならば、確実に耳にするであろう3文字。

 俺たちは今、そのギルドへと向かっている。


「なんで冒険者登録に試験なんかいるんだよ? 別に冒険者じゃなくても登録はできるんだろ?」


 この世界のギルドでは、冒険者登録をするためには、魔物を倒すという実技試験が必須らしいのだ。

 前世の知識だと、ステータスを読み取ると登録完了とか、書類に署名するだけで登録完了とかそういうのだと思ってたんだが。


「高難易度クエストとか、身の危険に迫るようなクエストを無理して受けようとするのを防止するためだよ。そのために自分が今、どれだけのレベルの魔物を倒せるかをこの試験で理解しておくの!」


 シャールがたんたんと喋ってくれる。

 なるほど。無茶を防ぐため……か。


「それに……倒した魔物のレベルによって冒険者としてのランクがつけられる…………」


 マイがブツブツ行ってくる。未だに納得していないようだ。



「さ! 着いたよ」


 目の前には、レンガ造りの建物が建っていた。5階建てで、普通に現代日本にあってもおかしくないような建物。

 もはやビル。


「じゃ入るよー!」


 シャールがギルドの入り口の扉に手をかざした途端、


 ウィーン。


 自動ドア!?

 そんなに技術が発展してんの!? 

 驚くことしか出来ない。まさか異世界に来て自動ドアを目撃するとは思ってもなかった。


【魔石交換所】 


【価値測定所】


【武器防具屋】


 などなど。カウンターが並ぶ。

 シャールは【冒険者登録】と書かれた看板があるカウンターへ進む。


「すみませーん!」


 シャールが声をかけると、中から人が出てきた。


「測定ですか? 登録ですか?」


 その人が聞く。


「登録。2名でお願いします」

「2名様で登録ですね。ランク試験がありますが、大丈夫でしょうか?」

「はい」

「分かりました。それでは隣の扉を開けますので、試験会場へどうぞ」


 そう言って、カウンターのすぐそばにあった木の扉が開く。


「マイ行くよ」


 シャールとマイはその先へ進む。

 その先は、建物の外へと繋がっていた。試験会場と呼ばれた場所は、小さな競技場みたいな場所だった。

 今通ってきた通路からのびる階段を上がった先が試験会場らしい。

 上がるとそこには、いかにも偉そうな男の人が椅子に座っていた。


「ラーズ様。2名様の試験です」


 さっきの受付の人が男の人に告げる。


「初登録かぁ? それで俺の試験を受けようとはいい度胸じゃねぇか小娘ども!! どれほどの実力者か……。俺が見届けてやろう」


 大声で話し始める。

 うわー。いるよなこういうタイプ。


「おい」

「はっ!」


 そいつの呼びかけで、2人の白い服をまとった人が出てくる。

 そして、そいつは俺たちのほうへ向き直り、


「こいつらが今から貴様らの試験監督だっ! こいつらの出すすべての魔物に打ち勝て!! それでは……」


 そいつが右腕を上げた。


始め(スタート)っ!!」


 白い服の人が早速召喚したのは、3体のゴブリン。

 緑色の肌色をして、ボロボロの鎧を着ている。手には刃こぼれだらけの剣と、今にも壊れそうな盾を持っている。


「いっ……きゃあああ!!」


 マイが目を伏せる。

 おいおいこいつ…………。

 まぁいい。シャールに託そう。


「シャール……。絶対に俺を手から離すなよ!?」


 俺は小声でシャールに伝え、1体目のゴブリンに斬りかかる。

 流石のゴブリンもそこまで馬鹿ではない。持っている剣で受けてくる。


 ギャリン!!


 ガッ!!


 しかし甘い。俺はゴブリンの剣を受けてから、もう1度攻撃を繰り出す。


 ザンッ!!


 俺はゴブリンの首を跳ねる。もちろん召喚された魔物なので、魔石は落ちないし、血しぶきも上がらない。首を跳ねたと思った瞬間白い光とともに消えた。

 よし。1体目クリア。

 2体目も……。


 キィィン!!


 しかし、ここで問題が起きた。離すなよと言ったはずだが、シャールが俺を離した。ゴブリンの剣とぶつかった衝撃に耐えられなかったのか。


 カラァン カラァァン!


 俺は地面に落ちる。痛くはない。

 …………悪いことは重なるもんだ。俺が地面に落ちた瞬間、もう1人の白い服の人がもう3体、ゴブリンを召喚した。

 まずい。

 シャールとマイがゴブリンに囲まれている。


「マイ……もう覚悟決めてっ……!」

「でも……もし……」

「大丈夫。つるぎくんを信じて!」


 そんな会話が聞こえてくる。周りに正体がバレるから俺は喋れない。もうここからはシャールたちに任せるしか……。


「行って来い!」


 シャールがマイの背中をおす。

 そしてマイが走り出して、俺の方へ来る。そのまま俺を持って叫ぶ。


「…………吹き荒れる風よ。すべての力を我に与え、我が力となれ! 暴風十字路(ブラストクロス)!!」


 なるほどな。理解した。


暴風十字路(ブラストクロス)


 が、俺は魔法を放ってから、やってしまったと気づいた。


 ビュオオオオオオオオオオオオオオオオ


 とてつもなく大きな風のうねりが交差し、コブリンもろとも吹き飛ばした。

 まずい。俺の魔力のまま使ってしまった。

 防護結界が試験会場の周りに張り巡らされてあったお陰で、なんとかゴブリンを倒すだけで終わった。

 煙が晴れて、あたりが見えてきた頃、白い服の人が旗を上げた。


「試験終了!!」


 そして白い服の人は逃げるように、さっさと戻ってしまった。


 パチパチパチ……


「いやぁ、いいものを見せてもらった。なかなかやるではないか!! とりあえず今はFランク合格だ。冒険者証明書(クエスターカード)を貰え!! これで試験を終わる」


 そう言うと、また受付の人が出てきて通路に案内してくれる。

 なんとか無事に終わったな。試験。

 いや、無事ではなかったか?


「また会いたいな。今度は正体を見抜いてやる」

 

 試験会場を出るときに、そう聞こえた気がした。


 ーーーー


「はい。これが冒険者証明書(クエスターカード)ね。ギルドに用があるときは必ず見せてね。これで登録完了よ。一応今、ステータスも確認できるけど……する?」

「えっ……じゃあ、お願いします」


 ヴォン。

 シャールとマイのステータスが映し出される。


    シャール・スパークナム

 

 LEVEL   1

 職業   剣士

 体力   21

 魔力    5

 素早さ  19

 知識   28

 攻撃力  16

 防御力  19


 【使用可能魔法】

  なし


 【獲得スキル】

  なし




    マイ・ライドウィング


 LEVEL   1

 職業   回復士(ヒーラー)

 体力   19

 魔力   18

 素早さ  20

 知識   32

 攻撃力  12

 防御力  17


 【使用可能魔法】

  なし


 【獲得スキル】

  なし

 

 うーん。

 俺のを見てからだとものすごくしょぼく感じる……。

 ん? 1番上のLEVEL(レベル)って……?



 第10話に続く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ